2023年東都大学野球秋季リーグ戦 ~松山観戦記
こんばんは。アマチュア野球を追っかけて3ヶ月のアオジュンです。
今回はドラフト上位候補がひしめく東都大学野球連盟(プレミアムユニバーシティズ22)1部秋季リーグ戦松山開幕戦を愛媛県・松山坊っちゃんスタジアムに観戦に行って参りましたので、ただの松山旅行記では面白くないと思いドラフト注目の投手のデータと共に振り返りをしたいと思います。
1.下村 海翔投手(青山学院大学)
開幕戦は春季リーグ戦を制し、全日本大学選手権でも優勝した王者・青山学院大学と中央大学の一戦でした。青山学院大学の先発投手は8月28日の大学日本代表VS高校日本代表の壮行試合で大学日本代表の先発も務めた下村海翔投手(4年 九州国際大付属)。日米大学野球で大会MVPの活躍を魅せた日本のエースと呼べる下村投手が秋季リーグ戦開幕戦の地・坊っちゃんスタジアムのマウンドへ登ると、自然と風格を感じました。壮行試合では甲子園で大活躍した慶応義塾高校の丸田湊斗選手をキリキリ舞いにしたことで注目を集めましたが、リーグ戦の初戦ということでどういう投球を見せてくれるのか、非常に楽しみでした。
この日は初回に自己最速となる155キロを計測すると、初回・2回と150キロ以上のストレートを連発し、平均球速も150を超えるなどドラフト上位候補の片鱗を序盤から見せつけてくれました。4回はピンチを迎えたこともありストレートの割合が増えるも、150キロオーバーの速球を軸に出力は健在でした。しかし戦国東都は本当にレベルが高いです。下村投手の150キロを中央大学の3番皆川岳飛選手(2年 前橋育英)、5番櫻井享佑選手(3年 習志野)が弾き返すなど中央大がこの回に2点を取り、同点に追い付きます。
5回以降は平均球速が落ち、最速も150を超える球が無くなったものの、6回以降捕手の渡部海選手(1年 智弁和歌山)の組立が変わったのかストレートは制球重視、変化球としてカットボールの割合が増えたこともありカット軸の組立に変わったことで中央大打線を抑えます。
最終的に球数が100球を超え終盤はストレートよりカットボール主体の投球(最終的には投球割合30%)となり、中央大打線の反撃を退けて完投勝利。四死球も4回のピンチで出した1個だけの安定した投球内容でした。
失点した4回以降平均球速が落ちたことでスタミナ面を不安視する見方もありますが、個人的には組立が変化球主体に変わったことでストレートの出力を抑え制球重視にセーブしているような投球に見えたので、ある種剛の面と柔の面を魅せた下村投手のクレバーさ(渡部選手のリード含めて)が際立ったのかなと思いました。
これはあくまで推測の範囲内ですが、下村投手のカットボールの球速帯が140前後ということでストレートとカットボールの区別を付きにくくするためにストレートの球速帯を落として、打者に同じボール来たと錯覚させる高度な投球術を披露しているのではないか、と数字を見ながら思いました。そうだとしたらちょっと恐ろしいレベルです。
完成度という面では数居る大学生投手上位候補でもトップクラスであり、ドラフト会議では1位指名は確実なのかなと思いました。下村投手のカットボールは大学生では攻略は至難でしょうし、プロでも通用するボールだと思います。
東都大学野球秋季リーグ開幕戦からいきなりハイレベルな投球を見れて、この試合だけで松山まで来た甲斐があったと感じる投球でした。
2.武内 夏暉投手(國學院大学)
続いて第2試合は國學院大学対日本大学の試合。國學院大学の先発投手はこちらもドラフト最注目投手の1人である武内夏暉投手(4年 八幡南)。武内投手も壮行試合での登板で全てのストレートの球速が150を超え、自己最速となる153キロを計測し話題を集めました。秋のリーグ戦初登板にとても注目をしていました。
東京ドームを沸かせただけあって初回から武内投手の投球は物凄く、150キロを超えるストレートを計測しておりスターターとしても出力が高いことが証明された序盤でした。序盤から日大打線を制圧していた武内投手でしたが、3回に日大がチャンスを作るとストレート比率が高くなり、最後は球速としては自己最速の153キロを計測しましたが小濃塁選手(4年 仙台育英)に弾き返され2点を失います。
4回以降も日大打線を制圧していた武内投手とは対照的に日本大学の先発の市川祐投手(2年 関東一)は毎回ランナーを背負いながらも國學院大打線を0に抑えており、スコアと投球内容はまるで逆のような試合展開でした。
最後は力尽きストレートを多投するもピンチの場面で降板し、追加点を取られ武内投手は敗戦投手となってしまいました。しかし投球内容では武内投手が上回るようなゲーム支配力を見せてくれたと思います。
全投球割合の内60%がストレートと基本的にストレートを軸とした投球スタイルの武内投手ですが、特に後半に見られる球速帯の異なるストレートを織り交ぜていることから、恐らく145キロ超えはフォーシーム、140前半の球速帯はツーシームを投げ分けているのではないかと思いました。ネット裏からはそれを確認出来る確固たるものは掴めませんでしたし、速報サイトでもその辺の区別はされていなかったので真意は分かりませんが、武内投手はツーシームも投げるという情報を聞いたことがあるので、もし上記のように投げ分けているとしたら武内投手もかなりハイレベルな投手だと思います。
投球割合の中でパーセンテージは低いものの、チェンジアップを投げることに私は興味を示しており、これだけ強いストレートにツーシームを織り交ぜることが出来る武内投手がウィニングショットにチェンジアップをマスターしたらプロ相手でもそう簡単には打てない気がします。武内投手もドラフト1位で指名されると思います、そんな投球でした。
3.草加 勝投手(亜細亜大学)
第3試合は東洋大学対亜細亜大学の試合。始まる前から東洋大学・細野晴希投手(4年 東亜学園)と亜細亜大学の草加勝投手(4年 創志学園)のハイレベルな投手戦が期待されましたが、試合前にショッキングな情報が入ってきました。それは細野投手がインフルエンザA型に感染して登板を回避したことでした。こればかりは仕方ないことですが、東洋大学は大黒柱の細野投手を欠いて戦う非常に苦しい戦いが予想されました。
草加投手は初回から自己最速153キロを計測するなどトップギア全開の投球を見せますが、東洋大の4番花田旭選手(2年 大阪桐蔭)のタイムリースリーベースヒットと亜大のまずい守備もあって2点を失ってしまいます。
その後はランナーを出しながらも亜大ツーシームを混ぜながら凡打の山を築くなど流石の投球を見せてくれました。特に勝負所ではツーシームでゴロを打たせ併殺打を取るなど、抜群の制球力でゲームメイクする姿が印象的でした。
投球割合としてはストレートとツーシームで投球の60%を超えるなどストレート系統を軸とした組立の投球スタイルで、与四死球0の抜群の制球力もあり球数少なくゲームメイク出来るのが草加投手の特徴かと思われます。特に試合後半はストレートの割合が少なくなり、ツーシームもカウント球で使えていたので、プロに行ってからも先発としてしっかりとローテーションを守れる投手になれると思います。
試合は草加投手が8回2失点に抑えるも、東洋大投手陣のリレーの前に亜大打線が1点しか取れず草加投手は敗戦投手となってしまいました。2戦目の武内投手同様内容では草加投手が勝っていただけに、非常に悔やまれる敗戦となりました。
下村投手や武内投手のような派手さはないものの平均球速は148.5キロを記録するなどかなりの出力があり、与四死球0の抜群の制球力で曲がり球とツーシームで内外を投げ分ける能力はかなりハイレベルだと思います。
各媒体でドラフト1位候補の名前で草加投手が挙がることはなかなか無いですが、個人的には1位と呼ぶに相応しい投球だったと思います。少なく見積もっても2位の前半には名前が呼ばれると想定されます。将来的には亜大の先輩・九里亜蓮投手のような先発ローテーションを守れるタフな投手になれると思っており、即戦力という観点で言えば下村投手と双璧をなす投手なのかなとこの日の投球を見て思いました。
4.西舘 勇陽投手(中央大学)
初日3試合を観戦後は松山市内に宿泊して松山の街をゆっくり過ごしました。とにかく宇和島鯛めしは最高でしたね。
話を東都大学野球に戻します。2日目の初戦も青山学院大学と中央大学の一戦から始まりました。この試合の先発は青山学院大学が大学選手権MVPの常廣羽也斗投手(4年 大分舞鶴)、中央大学はエースの西舘勇陽投手(4年 花巻東)のドラフト1位候補の投げ合いとなりました。リーグ戦2戦目でもドラフト候補同士の投げ合いが見れるのも今年の東都大学野球1部の特徴なのかなと思いました。始まる前から非常に楽しみにしていました。
春のリーグ戦では本調子と程遠く、大学日本代表の候補合宿でもアピール出来ず代表入りを逃していた西舘投手でしたが、この日の投球は素晴らしいの一言でした。初回からストレートの出力が高くこの日のMAX153キロを計測しており、春の不振期からは脱したような立ち上がりでした。
西舘投手の特徴としてはストレート軸にならず序盤から持ち球をフルに活用した投球スタイルをしていたように思えます。それだけ青学打線を脅威に感じていたのかと思われます。
4回までは相手先発の常廣投手の好投もあり、それに触発されるように西舘投手も快投を見せていました。しかし5回に青学の4番・西川史礁選手(3年 龍谷大平安)に特大のソロホームランを浴びてしまいます。打たれた球は前の打席で空振りを取った147キロのストレートでした。2度同じ過ちはしないという好打者の証でもある西川選手の特大弾を見て、来年のドラフト1位を確信しました。青学は西川選手に加え前日にホームランを放っている佐々木泰選手(3年 県岐阜商)など下級生がスタメンに名を連ねるなど、戦国東都を勝ち抜く圧倒的な戦力を保有しているなという印象を改めて感じました。
しかしここで崩れないのが西舘投手の魅力でしょうか。終わってみると失点は西川選手のホームランのみの7回1失点の好投。被安打2与四死球0奪三振10は最強打線の青学打線相手に素晴らしい内容だったと思います。ストレートの平均球速も最後まで落ちることなくアベレージで148キロを計測しているのは流石です。
そして奪三振10個のうちフォークボールで6個奪ってるのを見るとこの日はフォークの精度がとても良かったですね。他にもカットボールやスライダーでも三振が取れているので、ウイニングショットが多い好投手だなという印象を持ちました。
個人的には西舘投手もドラフト1位で呼ばれる投手なのかなと思います。初回の入札で指名があるかどうかは分かりませんが、外れ1位では指名があってもおかしくはないのかなと思います。改めて東都のレベルの高さを感じました。
5.常廣羽也斗投手(青山学院大学)
最後に紹介するのは大学選手権決勝で明治大学を完封し青山学院大学を18年ぶりの優勝に導いた常廣投手です。恐らく数多く居る大学生投手の中で1番人気になるのではないかと期待されている投手です。
この日の常廣投手は初回からエンジン全開で2回までストレートの球速が150キロを下回らない驚異的・暴力的な制圧力で中央大打線を手玉に取っていました。出力だけ取っても近年の指名投手の中でNo.1なんじゃないかなと思いました。
ただ不思議なもので、この常廣投手のストレートをアジャストしてくる中央大打線も凄かったですね。それを見て常廣投手もそこから変化球を混ぜて三振を奪っていくのも流石すぎて、本当にレベルの高い戦いを見せられておりこの試合が永遠に続いて欲しいなと思うレベルでした。
常廣投手は5回まで被安打1とほぼ完璧な投球を見せていましたが、5回にストレートを多投している中で中央大打線が常廣投手の球を見切っているように見えており、後半戦中央大打線がどう崩していくか非常に楽しみでした。
そしてグラウンド整備後の6回表、2者連続打ちとって2番山本聖選手(3年 鹿屋中央)を迎えます。常廣投手は初回に山本選手にヒットを打たれてから山本選手に投げにくくなったのか、第2打席は四球を与えており、第3打席では1球もストライクが入ること無くストレートの四球を与えてしまいます。
ここからリズムを崩した常廣投手は続く3番皆川選手にヒットを許すと、4番櫻井選手にファーストの内野安打を許します。当たりは微妙な当たりで、常廣投手のベースカバーが若干遅かったのかセーフになってしまいました。アウトだと確信していたのか常廣投手はセーフになった後2塁ランナーが本塁に突入しているのに気付くのが遅れてしまい、その分送球が間に合わず1点を失ってしまいました。
これで気持ちが切れてしまったのかここから流れるように連打を浴びてしまったので、あの時のファーストへの打球がアウトなら・・・と思ってしまってもおかしくありません。
四球を与えてからはストレートの割合も増えましたが、その分球速も上がっていたのが印象的でした。ピンチでギアを上げるという部分は見せてくれましたが、その150キロオーバーのストレートを打ち返す中央大打線が凄かったですね。特に同点タイムリーを放った髙橋隆慶選手(4年 明秀日立)は常廣投手本日最速の156キロのストレートを打ち返しているので、これはさすがの常廣投手も仕方ないです。打者が1枚上手でしたね。
好投手と呼ばれる投手でもこういう日は必ずあると思います。常廣投手としては失点した場面しっかり踏ん張って最少失点に出来たら良かったと思いますが、実際それだけ東都のレベルが高かったということなので仕方ないです。
実際平均球速は東都1部の先発投手唯一の平均球速150オーバーなので、その部分は確実に評価出来ると思います。絶対ドラフト1位の投手なのは間違いありません。
6.細野 晴希投手(東洋大学)
今回の松山開催にはインフルエンザA型発症により登板出来なかった細野投手ですが、高校日本代表との壮行試合では登板し東京ドームがどよめいたので、番外編として紹介します。
いや、改めてすごい数字が並んでます・・笑
1イニングに限定した登板とはいえ左腕投手がここまで高出力で投げれるのは過去のドラフト候補で居たんですかね?ちょっと思いつかないくらい凄いです。この数字はある意味番外編で扱ってよかったかもですね。
7.まとめ
改めて今年の東都の投手陣はドラフト候補と呼ばれる投手の宝庫でしたね。本当にハイレベルで見ててとても楽しかったです。
ただの松山旅行を兼ねたプレミアムユニバーシティズ観戦記にお付き合いくださり、ありがとうございました。
データの採取については、個人的に球場スピードガンを確認して記録したりネット裏から目視して記録したものとなりますが、曖昧な部分に関しては下記を参照にしました。
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