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【デザインシンキング・コンサル④】「共感」とは何を指すのか?

こんにちは。DONGURIでデザインシンキング・コンサルをやっています、矢口泰介(@yatomiccafe)です。

デザインシンキングをステップとして表現する場合、そのスタートには「共感」(empathize)が置かれています。

画像引用元:http://web.stanford.edu/group/cilab/cgi-bin/redesigningtheater/the-design-thinking-process/

この「共感」というプロセスについて考えたいと思っていたので、この機会に考えてみました。

というのも、デザインシンキングが、「イノベーションを生み出す思考法である」とか、「新たな発想を生み出す」など、ある種の神秘性(?)を持って語られるのは、この「共感」というステップが置かれていることに、少なからず因るのではないかと、思っていたからです。

「共感」について調べてもよくわからない

では、この「共感」とは何か?について理解しようとすると、よくわからない、という人が多いのではないでしょうか。

というのも、調べると実に多くの説明や定義が出てくるからです。

この「よくわからなさ」は、高度情報化社会において信じられないほどの混乱錯綜ぶりであるといえ、情報迷子を生み出す、誠に「どないなっとんねん」な事態であるわけですが、

いずれにしても「共感」プロセスの説明において共通しているのは、出発地点がいわゆる「ユーザー」に置かれており、ユーザーから何かの情報を引き出すプロセスである(とされている)点、とは言えそうです。

が、肝心の「共感とはなにか?」についての疑問は残ります。

果たして「共感」はいわゆる「共感」なのか?

「empathize」は、英英辞典の定義でいうと

the ability to understand other people’s feelings and problems

とされています。他の人の感じ方や問題を理解する能力、といったところでしょうか。

日本語で「共感」というと、「感情的な共鳴」を指すように思いますが、デザインシンキングにおける「共感」は、「感情的な共鳴」を指すのでしょうか?

文献によっては「Empathy」と「Sympathy」の違いなどに行き当たりますが、「デザインシンキングでいう共感とは、感情的共感か否か?」という議論はあまり無意味と思います。

「共感」プロセスの定義について調べると、様々な文献で行き当たるように、「共感」プロセスでやることには

・ユーザーの思考プロセスの理解
・ユーザーを取り巻く環境や文化の理解

なども含まれています。

私があるプロジェクトに関わったときには、「共感」に当たるプロセスにおいて、プロダクトを届けたいユーザーに対して、「一日の行動」をマッピングするインタビューを行いました。

これはユーザーの生活導線上にプロダクトとの接点を見出すための手法ですが、ここには「ユーザー理解」はあれど、「感情的共感」はいっさいありません。

感情的な共感はあってもいいし、なくてもいいんじゃないの。必要な情報が得られるならば」というのが私の私見です。

「共感」プロセスに求められる機能性

「共感とはなにか」について、世の中にたくさんの定義があるなか、さらに「私ならではの定義」を世の中にドロップしていくのは避け、ここでは、私の「スタンス」を記述しようと思います。

前に書いたように、デザインシンキングを「思考や認知の運動」/「わからない」→「わかる」を繰り返す運動である、と考えると、

その出発地点である「共感」は、不確実性を低減するために一次情報を取得することを指す、と言えるかもしれません。

デザインシンキングのステップで言うと、共感プロセスの次に来るのが「define」(課題定義)です。
このステップ名称からは、デザインシンキングは「課題」という、理想状態とのマイナス差分をとっかかりとして思考運動を進めていくもの、と読み取れますが、

この「理想状態からのマイナス差分」がどのように生じているのか?の気づきや考察を得るための一次情報を得ることが、「共感」プロセスに求められること、と考えると、

極論を言うならば、「課題定義」に進めるために必要な情報であれば、何をどのように取得してもよいのでは?というのが私のスタンスです。

そう捉えると、「共感」プロセスにおいて、「ユーザーを理解する」は必要条件ではなく、単に「そのほうがたくさん情報が得られるから」という便宜的なものである、とも言える、と乱暴に言ってしまうこともできます。みなみらんぼうに過ぎるでしょうか。

とはいえ定性情報は一次情報として最高

とはいえ、デザインシンキングの特長である、「定性情報」をもとに進める思考運動、という側面がいちばん発揮されるのも「共感」プロセスがあってこそといえます。

「気づき」や「腹落ち」というポイントをつないでいくデザインシンキングのプロセスにあって、質の良い「気づき」を得つづけるためには、質の良い一次情報があってこそと言え、その意味での「共感」のプロセスは、非常に重要でしょう。

最後にIndi Young先生の著作「Practical Empathy」からの抜粋を記載します。

Empathy doesn’t directly help you lay out the steps of how a person uses your solution. Empathy is knowledge that lines the inside of your skull, awaiting the random creative inspiration. When the inspiration happens, your collected knowledge serves as a foundation to support, hone, or disprove the idea.

Practical Empathy: For Collaboration and Creativity in Your Work(Young, Indi. )
(意訳)
共感は、「あなたのソリューションをどうすれば人が使ってくれるか」を直接教えてくれるものではありません。共感は、創造的なインスピレーションを生むためのものであり、生まれたインスピレーションに対して、そのアイディアを支持したり、磨き上げたり、あるいは反論するための「基盤となる知識」を集めるためのものです。


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デザインコンサルティングファーム・DONGURIで、デザインリサーチャーをしています。主に事業コンセプト開発、組織開発のプロジェクトを担当。定性調査をベースに、イシュー課題の発見と解決策提案、メンバー巻き込みなど、プロジェクト伴走をしています。内向型です。
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