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【デザインシンキング・コンサル⑥】デザインリサーチが担う「役割」とはなんなのだろうか?

こんにちは。DONGURIでデザインシンキング・コンサルをやっています、矢口泰介(@yatomiccafe)です。

先日、design research tokyoのイベント「Design Research Tokyo: Season 1 Episode 5」に行きました。

どれも非常に刺激的かつ、とても示唆に富むプレゼンばかりで、3つのプレゼン全てを紹介したいところではあるのですが、
今回は、GoogleジャパンのUXリサーチャー・Dara Gruberさんのお話をとっかかりとして、「デザインリサーチ」の「役割」について想起したこと、考えたことをまとめました。

Daraさんのプレゼンで上げられた「3つの条件」

Dara Gruberさんは、「インパクトのある定性調査のための3つの条件」と題したプレゼンをされました。(スライドは日本語だったものの、発表は英語でしたので、100%正確に理解しているかは怪しいカモ!?)

そこで上げられていた条件が、「反復可能性」「透明性」「楽しさ」の3つです。

反復可能性
得られたインサイトが他のプロジェクト、プロダクト、チームと高い関連性を持てるよう、反復可能性を考慮した調査設計であるべき

透明性
UXリサーチに馴染みがないステークホルダーとの信頼関係を構築すべく、クリアでわかりやすい調査プロセスが提示されるべき

楽しさ

ユーザへの共感が高まり、調査結果がより強く印象付けされるべく、リサーチは関わる人すべてにとって楽しいものであるべき

この、Daraさんの上げてくれた3つの条件は、非常にわかりみが深いものでしたが、特に「透明性」と「楽しさ」という項目が、まさに「デザインリサーチ」の特徴ではないか、と思いました。

「デザインリサーチ」という言葉が生むかもしれない違和感 

「デザインリサーチ」という言葉がまだ、概念として浸透しきっておらず、そもそも「デザインリサーチ」ってなんやねん、な状況のせいなのかもしれないのですが、

「リサーチ」という言葉を、日本語としての「調査」として捉えた場合、Dara Gruberさんが上げてくれた「透明性」や「楽しさ」という言葉・内容を、デザインリサーチの必須要件とすることに、違和感を感じる方もいるかもしれません。

端的にいうと、

なぜ「調査」に「楽しさ」が必要なの!?

という類の疑問が生じるだろうな、ということです。

私も「デザインリサーチ」の必要性をうまく説明できないもどかしさを感じることがありますが、
それは「デザインリサーチには、まさに楽しさが必要だ」という自身の実感と、「なぜ調査に楽しさが必要なのか?」という疑問のあいだにブリッジがかかっていない感じに、集約されています。

「デザインリサーチ」という言葉が生む「違和感」の正体

リサーチ=調査という言葉は、非常に限定的な役割を想起させます。

おそらく、日本の(特にビジネスの)文脈においては、「調査」といえば、施策の実行の妥当性を判断する「検証的調査」を指してきた時期が非常に長かったと思われ、

そのため、「調査」は、プロジェクトにおいて、ピンポイントなタイミングで、限定的な役割のもとで行われる、というイメージが強いのではないか?と推察されます。

なので、デザイン「リサーチ」を「検証的調査」として捉えてしまうと、「透明性」や「楽しさ」といった、ある種、プロジェクト全体的に影響をおよぼす役割のイメージがつきづらく、違和感が生じてしまうのではないでしょうか。

「デザインリサーチ」の役割とは何か

対して、デザインリサーチは、「生成的調査」に分類されるといわれます。 「生成的調査」とは、調査結果からインスピレーションを得るために行われるものです。

そもそもが質的調査であるデザインリサーチは、「仮説生成的」な側面を持ってはいますが、
さらに、デザインリサーチの役割は、単に「リサーチ結果をもたらすもの」にとどまらず、プロジェクト全体を創造的にするための潤滑油のような役割が期待されていると感じます。

私も「デザインリサーチャー」という肩書を持ってはいますが、いわゆる「調査データを取得する」という限定的な活動だけを請け負うことはほぼなく、
プロジェクトの目的(=「事業開発」「組織開発」「サービスデザイン」等)にコミットした上で、プロジェクトを「創造的に」進める手段としてアクションを計画し、実施することがほとんどです。

エスノグラフィ的な調査もありますし、リサーチを共有し、さらなるアイディアを生み出してもらう手段として、ワークショップ的な機会もあります。

私にとって「デザインリサーチ」とは、いわゆるエスノグラフィ的な「調査」にとどまらず、「その場の定性情報を取得する全ての活動」を指します。つまり、デザインシンキングのプロセス自体が、デザインリサーチである、とも言えます。

デザインリサーチの面白さ

デザインリサーチの概念や必要性を伝えるのが難しいのは、まだ「生成的調査」自体が広く浸透していない、という側面もありつつ、
デザインリサーチに期待される役割が「全体性」かつ「多義的」で、何をするのかがわかりにくいということもあるように感じます。

逆に言うと、この「全体性」が、デザインリサーチ活動の懐の深さであり、目的から逆算しさえすれば、アクションの打ち手は自由に組み立てて良い、という点が、私が面白さを感じるポイントでもあります。

また、デザインリサーチの面白さでいうと、今回のプレゼンにおいて、Daraさんの発表に「楽しさ」がデザインリサーチの必須要件として掲げられていたのが、とても示唆的だと思います。

というのも、楽しさ(Playful)は、人を巻き込み、創造的になってもらうための必要条件であって、決してオプション的に生じる付加価値ではない、というメッセージがそこに込められていると感じるからです。

デザインリサーチ(デザインシンキング)においては、「楽しさ(Playful)」は「あって当然!それがなきゃ始まンないよ」というものですが、案外それが、デザインリサーチのわかりにくさの要因なのかもしれません。

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