「あおに」のロゴデザインは、すみっこに位置させることがブランドのアイデンティティ。
デジタルマーケティングやクラウドファンディング支援など、コミュニケーションデザインを伴走する会社「合同会社あおに」。あおにのアイデンティティは隅に置くべきだとルールを定めました。
なぜ、封筒や名刺といったツールに、自身のアイデンティティを、すみっこに載せなければならなかったのか。今回はそんなお話を少しさせてください。
意味をデザインで接続する
「あおに」の由来は、代表の堀川さんが奈良で事業をするから奈良に関係する言葉を探している際、「あをによし」と出会ったそう。「あをによし」とは、万葉集などで奈良にかかる枕詞として使用されてる言葉。漢字で「青丹」と書き、奈良であおに(岩緑青)土が採掘されたからとか、平城京の華々しい朱色(に:丹色)に、木々の緑(あお:蒼色)が映えている様からとか…(諸説あり)。
社名の「あおに」は、奈良という意味をたくさん込めているけれど、それ以外に特に意味はありませんでした。これはもったいない。
堀川さんの掲げた「小さな夢物語を声にする」はとても素敵なビジョンで、社名やロゴ、名刺の渡し方に至るまで、すべてのCIにおいても、それらが滲み伝わらなくてはなりません。そのため、「奈良っぽい」以外の意味をデザインで接続することにしました。
それが枕詞です。
枕詞を調べました。高校の(中学校だったっけ?)古文の授業以来です。知っているつもりで意外と知らないものですね。ご存知の通り、枕詞とは和歌の必殺技なんですけど、元の役割は…
物語を整えたり、物語に情緒を添える言葉。
…なんですね。
ここで言う「物語」とは、あおにの言う「小さな夢物語」と同義です。
もう、まさに、合同会社あおには、まさにそんな枕詞のような存在になりたい。
無機質なものに命を与える
デジタルマーケティング、クラウドファンディング、コンテンツ制作、コンサルティング、コピーライティング、フォトグラフィー、プロモーション…横文字ばかりで、専門知識が必要なものが多くて、説明が難しい。きっと地方のお客さんがこの肩書きを聞くと、構えてしまいます。
あと、デジタル業界は少なからず、無機質に感じてしまいます。人の血が通っていると思いづらいことがあります。本当はデータの先には必ず「人」がいるはずなのに…。
無機質なものに命を与え、人の手の匂いが感じられるようにすること。
トメ・ハネ・ハライや、墨溜まりといった、筆字のロゴタイプを作成しました。
フォントのフォルム
「あおに」のロゴタイプのフォルムは、代表の堀川さんのフォルムに似せている。堀川さんは大きくて朗らか。法人と個人がほぼイコールなので、本人のキャラクターとかけ離れてはいけません。シュッとしたフォルムよりも、角張っていなくて少しぽてっとした愛嬌の感じられるフォルムにしました。
「お」と「を」
昭和時代に「を」の発音は「お」と統一されたのにもかかわらず、「を」が廃ることなく残っているのは「を」が助詞専用の仮名になったことによる。「ゐ」や「ゑ」がほとんど使われなくなった一方、「を」が使われ続けている事実は日本固有の文字、「仮名」の歴史を物語っている。
3つの意味を重ねたシンボルマーク
枕詞:物語を整えたり、物語に情緒を添える言葉。前置きの言葉。
→「、」(読点)
小さな夢物語を声にする。声
→「“”」(引用符)
無機物に命を与える人の手が感じられる
→勾玉(魂の形、胎児の形など)
「、」「“”」「勾玉」これら3つの要素から、シンボルを作成。墨で描かれた点のようなマークをつくりました。
黄金比
角度15°に傾けたシンボルマーク「点」は、じつは黄金比率にならって作られています。自然界からデザインの業界まで、さまざまなところで美しさの基準として用いられている比率です。
有名なところで言うと、絵画のモナリザ、AppleやTwitterのロゴマークなんかですね。
あえて隅に配置されるロゴ
ロゴマークというのは通常であれば真ん中に配置されることが通例ですが、あおにの場合はそれを「右下隅に配置する」というルールを定めました。
主人公は相手。あおには脇役であるべきだというスタンスの表れです。
それが、あおにのアイデンティティになる。
Client: aoni
Creative Agency: Office Camp llc.
Art director, Designer: Coji Katsuyama
https://aoni.jp
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