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まずは漁港に行ってみる

こんにちは、週末フリーランスの出口 @dex1t です。好きな魚はカツオ🐟です。

この記事はウーオ社が運営するマガジン向けの記事です。

普段はサービスデザインから開発まで、プロダクトに関わることを広くやっています。ウーオ社には、フリーランスとして関わっており、プロダクト責任者である土谷の壁打ち相手として、プロダクト戦略作りのお手伝いをしています。


水産業におけるプロダクト開発?

ウーオは「日本の水産業にとって、新しい流通をつくる」というミッションで、広島を拠点にしているスタートアップです。詳しくはこちらのnoteをご覧ください。

ウーオは、本格的にプロダクト開発に着手し始めたのが今年から。社内で開発チームが立ち上がったばかり、という初期フェーズです。そんなウーオに僕が関わり始めたのは、今年の3月頃でした。前職で同僚だった土谷から、相談を受けたのがきっかけです。

僕自身、SaaSからアイドルまで色々な業種のプロダクト作りに関わっていますが、水産業は縁遠い存在です。相談を受けた居酒屋で、色々とインプットしてもらったものの、正直まったくイメージがつきませんでした。

当然、プロダクトにどう落とし込んだらいいのか全然わからん 😇 というところからのスタートです。

水産業はプレイヤーが多い

なぜ理解が難しいのか、色々と要因はあるものの、その一つはプレイヤーの多さです。

漁師が魚を取り、漁港に水揚げし、産地市場 (鳥取、沼津など) でセリが行われ、それが消費地市場 (豊洲、大阪など) を経由し、小売店舗や飲食店に渡り、消費者に届く。

この流れの中には様々なプレイヤーが存在します。ウーオが現在重点を置いている産地市場だけを見ても、プレイヤーがたくさん。

1. 漁師
2. 漁協
3. 荷揚げ
 水揚げした魚を陳列する人 (市場によっては漁師が兼ねる)
4. 荷受け
 セリを開催する人 (セリ人)
5. 仲買い
 セリに参加する人 (バイヤー)
6. 運送会社
 産地市場から消費地市場に運ぶ

プレイヤーが介在する毎に、手数料や送料といったマージンが入り、魚の価格が形成されていきます。

もちろんプレイヤーの多さだけでなく、専門用語の多さ (仲買、荷受け、着値、浜値、相対取引 etc)、港による文化や慣習の違いなど、他にも理解を難しくする要因はいろいろ。

…と、ここまでツラツラ書きましたが、これはあくまで今だから書ける話。
1時間の打ち合わせじゃまったく理解できませんでした😂

まずは漁港にいってみる

そんな水産業に関わる上で、デザイナー・エンジニアとして何ができるか。はじめの一歩としては、ユーザー (プレイヤー) の理解、業界理解が欠かせません。

百聞は一見にしかずということで、初回の打ち合わせから2週間後、とりあえず東京から鳥取港に向かうことになりました✈️

なぜ鳥取港?

ウーオは前述のプレイヤーのうち「 (産地) 仲買」として既存流通に入り込んでいます。産地仲買は、消費地市場 (大阪など) の荷受けや仲卸からのオーダーに応じて、産地市場で開催されるセリに参加し魚を競り落とすのが役割です。

セリは誰でも参加できるわけではなく、「買参権」という資格が必要です。通常、取得は難しいのですが、ウーオは鳥取港の買参権を持っています。そこでまずは産地市場にあたる鳥取港 (別名: 賀露港) に行き、セリの様子を見学してみることにしました。

AM6:30 市場の朝

これまで市場といえば築地に寿司🍣を食べにいったことぐらいしかなく、市場はめちゃくちゃ朝が早いイメージでした。ただそれも市場ごとの慣習で様々。
鳥取港は8時頃にセリが始まるため、セリの準備も6~7時ごろから始まります。

AM7:00 セリの準備

7時ごろ市場を覗くと、水揚げされた魚がケース詰めされて陳列されています。鳥取港の場合は漁師が兼ねていますが、この陳列のために荷揚げというプレイヤーがいます。

この日は時化 (海が荒れること) の影響がなく、漁獲が比較的多い日でラッキーでした。天候等の影響が大きく、漁獲の予想が困難なのも水産業の難しさの一つです。

魚が詰められているケースは、規格化されており、セリは基本的にケース単位で行われます。また、ケースに何匹収まるかで大きさを区別します。鳥取港では活魚 (生きた魚) も取引されます。

魚をとった漁師 (漁協)や、セリを開催する荷受けにとっては、セリでいかに魚を買ってもらうかが大事になってきます。そのためセリの準備では、魚に水をかけたり、ブラシで掃除したりと、セリ映えするためのひと手間がかけられていたのが印象的でした。

一方そのころセリに参加するバイヤー (仲買)は、陳列されている魚の鮮度をチェックしたり、取引先からのオーダーを受けたりと、セリに向けた作戦を練っています。

今日はどんな魚がどれぐらい市場に出てるのか、それはどんな鮮度なのか、といった情報は基本的に当日にしか分かりません。そのため、クライアントにリアルタイムで情報を伝え、より高値でのオーダーを引き出すのがバイヤーにとって大事になってきます。

スマホを片手にセリの作戦を練るウーオ バイヤー

AM8:00 セリ開始

8時近くになると続々と各社のバイヤーが集まってきます。ちなみに帽子の色で、バイヤー (オレンジ色) と、セリ人 (セリを仕切る人 / 緑の帽子) で区別されています。

セリでは隠語が飛び交い、なにを言ってるのか初見だと全くわかりません。ウーオのバイヤー曰く、セリに参加するのに2, 3ヶ月はかかるとのこと。

セリの参加中も、バイヤーは常時クライアントと連絡を取り、セリの状況を共有します。そのため、Bluetoothインカムで電話をしながら、セリに参加する人も。コミュニケーションを豊富に取ることが、高値でのオーダーを引き出すキモだそうです。

競り落としたケースには、自社のラベルを貼りつける

"セリ"というと、なんとなくカオスでピリピリした空間で怒号が飛び交ってそう…? という勝手なイメージを持っていました。

ただ実際に間近で見てみると、市場は整然としていて、セリも笑いを交えながら和やかに進んでるのが印象的でした。この雰囲気も地方の消費地市場ならではなのかもしれません。

AM9:00 出荷

セリ終わったケースは、順次出荷作業が行われます。仲買いにもよりますが、通常は運送業者をつかって豊洲や大阪など消費地市場に運送されます。
ここでの送料やケースや氷代も、魚の値段に含まれていきます。

規模が大きい仲買い業者は、セリ参加者と発送作業者が別れており、チームプレーで効率的にケースをさばいていきます。ケース量は当日の漁獲量やセリの成績に左右されるため、人海戦術で安直に効率化し辛いのも難しいところです。

自分でもやってみる

ウーオはまだまだ小規模なので、出荷作業もバイヤー自身が行います。僕も一部の作業に参加させてもらいました。

自分でやってみると、どこに時間がかかるのかも分かってきます。例えば、ウーオではクライアントのオーダーに応じて、ケース内の魚量を変更する仕立直しという対応を行っています。魚なので丁寧な扱いが必要なのはもちろん、アンコウなど粘り気が強い魚はその扱いもさらに苦労します。

AM10:30 出荷完了

こうしてこの日は10時すぎに一連の作業が終わりました。この日は漁獲量が多く、セリ落とせたケース量も多かったのでこの時間ですが、漁獲が少ない日はもっと早く終わるそうです。

ウーオでは、バイヤーは早朝から稼働しているため、昼すぎには退勤します。同じ日本にいながら社内で時差があるのも、水産業ならではかもしれません😌

プロダクトづくりは観察から

今回は2泊3日の弾丸で鳥取に行ってきました。前提知識をほぼ持たずに現地に行ったものの、自分の目で見てみると、水産業に対する理解の解像度がかなり上がった感覚があります。

隠語だらけで外国語に聞こえたセリも、2時間じっと観察していると、会話の中身はわからなくてもプロトコルは分かってきます。

水産業は全体でみると複雑な構造ですが、「産地市場」という部分をとってみると、各プレイヤーが整然と自分の役割をこなし最適化されてることも、今回の観察を通して分かってきました。

ということで、これでようやく、どこに技術・デザインの力を使っていくのか議論できるようになりました。鳥取合宿2日目は、プロダクトにどう落とし込むかを議論していきました。その様子は次回noteでお届けします👋

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