ヨーロッパ企画第39回公演「ギョエー!旧校舎の77不思議」

■2019/9/16 18:00 大阪・ABCホール
 行ってきました、念願のヨーロッパ企画!

 作・演出の上田誠さんは、岸田國士戯曲賞も受賞している、現在の日本の演劇界では屈指の作家で、以前から観たかったのだ。3月に文楽を観に行ったときに上田さんがゲストとして来ていて、今回の公演のことを知った。だから念願かなって、満を持して、という感じで、期待値を上げるだけ上げて、観てきました。

 ──噂に違わぬレベルの高い作品だった。

 舞台となるのはとある高校。理由は忘れたが、夏休み明け、落ちこぼれの生徒を集めたクラスが一クラスだけ旧校舎に移動することになった。しかしその旧校舎がいわくつきで、壁から手は出てくるわ、人魂は浮遊してるわ、落武者や日本兵の霊が現れるわと、不思議なことが次々に起こる。そして不思議を77つ数えると何かが起きる。

 その77の不思議がとにかく秀逸だ。普通、77つもあると、内容がかぶったり強引だったりして、観客は飽きてしまいそうなものだが、少しも苦にならない。もちろんダブりや無理矢理カウントしているものもたくさんあるが、タイミングを変えたり、シチュエーションを変化させたり、表現方法を工夫したりして、ワンパターンにならない。

 一体、この作家は、どれだけの引き出しを持っているのだろう。計算し尽くされている。

 できればこの作品の台本を手に入れたい。そして77個の不思議を、一つ一つじっくり研究したい。これはタイミングで笑わせてるんだとか、これはこれの伏線になっているんだなとか、これはあえてお客さんに心の中でツッコませるために横文字を使っているなとか、分析していきたい。演劇のテクニックや笑いのパターンの勉強になると思うんだよね。

 ただ、どうして不思議の数を77にしたんだろう。おそらく限りなく多くしたかったとは思うんだ。作家としては、たくさんの不思議のアイディアを、もうこれ以上出ない、というところを超えて、さらに絞り出す、みたいなことにチャレンジしたかったとは思う。だから不思議の数はかなり多くなければならない。それはそうなんだけど、何故77なのか。ホラーなので百物語にかけて100とか、縁起の悪い数字で49とか。

 で、思い当たったのは、よく七不思議ってあるよね。なら俺はその10倍の70個考えてやる! いや、さらに追加で7個、合計77個だ! ってことかな?

 ちゃんとコメディだし、ちゃんとホラーだし(コメディ要素が強いため気づきにくいが、ちゃんと怖い)、それだけに留まらずSF要素があったり、登場人物の葛藤や変化、成長もしっかり描かれている。それでいて雑然とせず、うまくまとめられている。ラストも、とても良い。

 とまぁ、もはや絶賛の言葉しか出てこない。

 でも、かといって、僕がこの作品にスタンディングオベーション、絶大の賛辞を贈るかっていうと、そうではないんだよね。

 何故なら芸術って、上手いから高く評価されるっていうものではないんだよ。例えば絵画でも、まるで写真のような絵が必ずしも絶賛されるわけではない。技術的にはかなり劣るけど、何か惹きつけられるものがある、というような作品の方が高く評価されることがあるんだ。

 だから、かなり高度な注文になってしまうのだけど、もひとつ何か、圧倒されるようなものとか、突き抜けた何かが欲しいんだよね。

作・演出 上田誠
音楽 青木慶則

出演
石田剛太 
酒井善史 
角田貴志 
諏訪雅 
土佐和成 
中川晴樹 
永野宗典 
本多力
祷キララ 
金丸慎太郎 
亀島一徳 
日下七海 
納谷真大

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?