FOUJITA

 エコール・ド・パリの代表的な画家として知られる藤田嗣治(ふじたつぐはる)を描いた作品。小栗康平監督の10年振りの新作だ。映像がとても静謐で美しく、それ自体、芸術作品を見る思いがした。

 ただ、上映中、観客の一人がやたらとあくびの声を上げていて興ざめだったのだが、でも「あくびが出るのは分かるわ~……」と思った。

 この映画における藤田は、どこか達観したようなキャラクターで、怒り狂ったり泣きわめいたりしないため葛藤が見えにくい。他の登場人物たちも、とても静かで、間のあるしゃべり方をする。あまり感情の起伏がない。

 また、全編を通して、エピソードの羅列という印象があり、主人公が変化していっている感じがあまりしない。この作品は前後半で二つのパートに分かれていて、前半ではパリで寵児となった姿が、後半は日本に帰国し、戦争協力画を描いていた疎開先での五番目の妻との静かな生活が描かれるのだが、日本に帰国する描写がなく唐突にパリから日本に変わった感があり、これが分かりにくかった。何で急に日本に!?と思った。で、映画を観終わった後に、藤田嗣治のことを調べ、オフィシャルサイトの小栗監督のインタビューを読んで、ようやくそういう構成にした理由が少しだけ理解できた。

 ん~、でも……もう少し藤田の葛藤や苦しむ姿や、変化をわかりやすく描いても良いんじゃないかなぁ? ちょっとよく分からなかった。藤田嗣治のことを知らない人に対して不親切な感じがしたなぁ。

原題 FOUJITA
製作年 2015年
製作国 日本、フランス
配給 KADOKAWA
上映時間 126分

監督 小栗康平
脚本 小栗康平

キャスト
藤田嗣治 オダギリ ジョー
君代 中谷美紀
ユキ アナ・ジラルド
キキ アンジェル・ユモー
フェルナンド マリー・クレメール
寛治郎 加瀬亮
おばあ りりィ
清六 岸部一徳


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