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暑くても咲く

    連日暑い日差しが照りつける中、北九州市中央公園の花たちは相変わらず元気に咲いている。
「心頭滅却 火もまた涼し」
とでも言いたげに、どの花もすまし顔である。

子供の頃、昭和30年代の夏に咲く花と言えばヒマワリ、タチアオイ、そしてカンナといったやや大ぶりの花が多かったと記憶している。その後、様々な品種が家庭や公園の花壇に咲くようになって、特にカンナは隅に押しやられるように徐々に数を減らし、最近ではあまり見かけることが少なくなった気もする。
カンナはその立ち姿がどことなく無骨で、色も単純な赤、橙、黄。
花が咲き終わった後も枯れた花びらが、いつまでも未練がましく残っていたりする。全体的に特に美しいという訳でもなく、どうも好きにはなれない花だった。

ところが広島に原爆が落とされた翌月、廃墟と化した街中で真っ先に咲いた花が赤いカンナだった、ということを後に知った。その記録写真が原爆資料館に展示されていたのだ。
カンナに対する見方が一変した。
爆心地の表面温度は3,000~4,000度に達したと言われている。
その高温に耐えた宿根が瓦礫の下から葉を伸ばし、一カ月後には花を咲かせた。
その生命力は、多くの人々に生きる希望を与えたに違いない。
存在の奥にある驚異の生命力は、目で見たり手で触れることはできないが、その天真爛漫な開花の様子を覗き込み、そして生命力はいったいどこにあるのかと問い尋ねてみる。カンナの花はしかし答えることなく、ただ涼し気な笑みを返してくるだけである。
カンナは南米原産で江戸時代に日本に持ち込まれた。
水分や養分の乏しい荒涼とした土地でも育つ。
だから広島でも、そして隅に押しやられながらも生き延びてきたのだろう。
逞しい花である。


故松本栄一氏撮影
Full Frame: Hiroshima - 70 Years After The Atomic Bomb (daisetsuzan.blogspot.com) より引用




中央公園花の丘 7月上旬の花






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