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Japan TBM Summit 23 に登壇したお話 〜FinOpsとTechnology Business Management 〜

はじめに

ワンキャリアでコーポレートエンジニア兼SREを担当している野田( @Hotaka_Noda)です。 普段は、コーポレートITチームとSREチームに所属し、社内のシステム改善やセキュリティ、クラウド利用の最適化活動 (FinOps) を担当しています。

SREチームについてはこちらの記事をご覧ください。



自己紹介

はじめに、私の経歴をご紹介します。
陸上自衛隊退官後、インフラ・プリセールスエンジニアを経て、2019年より人材広告業界にて、CCoE立ち上げやFinOpsに従事。2022年よりクラウドインテグレーターにて、お客様のAWS、Google Cloud のカスタマーサクセスとして、お客様のCCoE立ち上げのご支援を行いました。2023年よりワンキャリアへ入社、コーポレートエンジニア兼SREとして、インフラ環境整備、クラウド費用可視化、社内IT戦略立案・実行に従事しています。

■登壇歴
「半年で30%のAWSコスト削減目標を3ヶ月で達成。単月50%削減も半年で実現しました」

「最新事例から見るAWS運用最適化サービスでコスト削減〜半年でAWS利用料50%削減したお客様にお話を伺います!〜」ウェビナーを開催します

『カスタマーサクセスが解説!AWSのよくある課題と解決策!』ウェビナーを開催します


きっかけ

私はGoogle Cloud 公式ユーザー会 Jagu'e'r (https://jaguer.jp/) に所属し、Google Cloud ユーザーやパートナー企業様の相互交流を深めそれぞれの企業が持つ経験やノウハウを共有し合う活動を行っています。
Jagu'e'rでは、クラウド利用のコスト最適化の方法論である「FinOps」や「Technology Business Management(TBM)」の啓発活動を行い、過去の職務や現職でも実践しています。

このたび、Apptio株式会社主催のJapan TBM Summit 23 のイベントでパネルディスカッションに登壇しました。

なお、今回のセッションはJapan TBM Summit 23のサイトでオンデマンド配信が行われる予定です。よろしければ、ご登録のうえセッションをご視聴ください。
(2023/9/19-2023/10/20の期間で配信予定です。)

FinOpsやTechnology Business Management に馴染みが無い方も多いと思います。今回の記事では、そのような方々にもセッションを楽しんでいただけるように、前段となる知識について説明します。


FinOps とは

「財務(Finance)」と DevOps(「開発(Development)」と「運用(Operations)」を組み合わせた造語) による造語で、クラウドの支出に関わる関係者が協力するための規律や文化に関する概念です。 
2020年8月にLinux Foundationのプロジェクトとして「FinOps Foundation 」が立ち上がり、メンバーの経験を通じて磨かれてきたベストプラクティスが FinOps Framework として公開されています。

図1:FinOps Framework
出典:What is FinOps(https://www.finops.org/introduction/what-is-finops/  )

FinOps Framework の要素は複数あり、そのうちのprinciple(原則)には以下の6つが示されています。

・チーム間でコラボレーションする
・全員がクラウドの利用に対してオーナーシップを持つ
・集権的なチームが FinOps を先導する
・タイムリーにレポートにアクセス可能である
・クラウドのもたらすビジネス価値によって意思決定をおこなう
・クラウドの変動コストモデルの利点を利用する

What is FinOps

注目したいのは、2つ目の原則である「全員がクラウドの利用に対してオーナーシップを持つこと」です
この原則は「クラウドのコストは事業部門や財務部門だけで説明するだけでなく、エンジニアや運用担当者にまで、全ての関係者が責任を負うべきだ」という前提のもとに存在します。エンジニアの視点では「お金の管理はマネージャーや専門家に任せたい」と思う気持ちが出てくるかもしれませんが、特にパブリッククラウドの場合は、アーキテクチャや使用状況がコストに直結するため、エンジニアだからと言って無関心ではいられません。むしろコストについて、事業部門や財務部門と共通認識を持ち、綿密なコミュニケーションを取ることが重要となります。


主要パブリッククラウドでのFinOps 手法について

主要パブリッククラウド( AWS、 Google Cloud、 Azure )でもFinOpsはドキュメントとして紹介されています。
なお、AWSではFinOpsという言葉は登場しないものの、「コスト最適化」は AWS Well-architected Framework の6本ある柱の一つとして、従来より重要な設計原則として位置づけられてきました。AWS Well-architected Framework は、AWS とその利用者の長年の経験にもとづいてシステム設計・運用の大局的な考え方とベストプラクティスがまとめられたフレームワークです。

詳しくは、以下のドキュメントもご参照ください。

AWS
AWS によるコスト最適化

Google Cloud
Cloud FinOps とは

Azure
Azure Learn : FinOps


Technology Business Management とは

Technology Business Management(以下、TBM)は、IT投資によりビジネス価値を創出する一貫した方法を提供することで、ビジネス成果の向上を目指すベストプラクティスのことで、2007年にApptio,Inc創業者であるSunny Guptaにより提唱されました。
データドリブンアプローチにより、IT投資の管理、計画、最適化を実施するために設計されています。しかし、テクノロジーモデルの進化に伴い、TBMの手法も変化し続けています。テクノロジー投資を、個々のアプリケーションやITサービスの総所有コスト(TCO)だけでなく、ビジネス戦略とプロダクトのTCOと結びつける必要があります。


FinOps と TBM の違い

FinOps とTBMは測定する対象が異なります。
FinOps は主に、クラウドサービスかつ変動支出モデルにフォーカスしたアプローチで、TBMはIT投資に対するアプローチとなります。IT投資が大きく、クラウドサービスかつ変動支出モデルの割合が大きな組織であれば、TBM とFinOps の両方を活用した方が効果が高くなります。

詳しくは、以下のBlogもご参照ください。

Apptioブログ「TBMとFinOpsの連携」


FinOps と TBM の動向

まず最初に参考までにGoogle Trendsで「すべての国」を対象に、2023年8月までの過去5年間で「FinOps」と「Technology Business Management」検索した結果が以下となります(図2)。
2022年以降に検索結果における動向の変化が見られました。
全世界では「FinOps」のトレンドが上昇傾向にあることがわかります。一方で、TBMでは、長期的に上昇トレンドではあるものの、「FinOps」ほどの上昇幅ではありません。

図2: 過去5年間における「FinOps」と「Technology Business Management」Google Trends(すべての国) 調査日:2023年8月21日

次に、日本における検索結果がこちら(図3)になります。
対象を日本に絞ると動向の変化はほぼなく、日本ではまだあまり注目されていないように見えます。一方で、近年の企業によるパブリッククラウド利用状況を見ると、AWSやGoogle Cloud のようなパブリッククラウドを利用する企業が増えています。また、世界のパブリッククラウドサービス市場規模(売上高)の推移及び予測(図4)からもあるとおり、今後もパブリッククラウドサービス市場規模は伸びていくことが予想されます。

図3: 過去5年間における「FinOps」と「Technology Business Management」Google Trends(日本) 調査日:2023年8月21日


図4: 出典:令和4年 情報通信に関する現状報告の概要(図表3-6-8-1 世界のパブリッククラウドサービス市場規模(売上高)の推移及び予測)


参考までにGoogle Trendsで、国ごとに「FinOps」と「Technology Business Management」を検索した割合で色別で区分けしたのが以下の図となります。

アジア圏、EU圏では、FinOpsの検索割合が高く、欧米では「Technology Business Management」の検索割合が高くなります。

あくまでも個人的な解釈となりますが、欧米では比較的早期にIT投資全体に対する分析アプローチが確立されたため、TBMを利用することが多く、アジア圏やEU圏では、パブリッククラウドの利用拡大において、コストコントロールやコスト最適化をよりフォーカスした、FinOps を利用することが多いと解釈しています。


図5: 国ごとの「FinOps」と「Technology Business Management」のトレンド


登壇で話したこと・感じたこと

パブリッククラウドは従量課金であるがゆえに予算・実績管理が難しく、企業がクラウドのコスト最適化を行うとなると難易度は相当高くなるのが実情です。
そのため、企業にとって、パブリッククラウドのコストコントロールは重要課題であると考えています。

今回の登壇では、FinOps のうちコスト最適化を組織的に行うことの難しさや、過去の私が経験した失敗例をもとに、どのように進めていけば組織に浸透しやすいかをお話させていただきました。
詳細は、ぜひオンデマンド配信をご確認ください!

また、ディスカッションを通じて今まで私が手探りで行ってきた、AWSやGoogle Cloud のコスト可視化・最適化が、Frameworkとして体系的に既に構築されていることに驚きました。FinOps の手法に関して自分の認識をあらためて整理できました。

ご一緒に登壇した、株式会社unerryのChief Data ScientistのMario 様( @vloom_mario )と事例について詳しくお話することもできました。


左より
グーグル・クラウド・ジャパン 合同会社 黒須 義一様
株式会社unerry Mario 様
株式会社ワンキャリア 野田 穂高



終わりに

いかがでしたか?AWSやGoogle Cloudなどのパブリッククラウドでコスト最適化を実施している方の参考になれば嬉しいです。
ちなみにワンキャリアでは、エンジニアを絶賛募集中です!
ご興味のある方はぜひカジュアルにお話しをしましょう!


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