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ファーム体験記#3 「熱帯でパーマカルチャーを体で学ぶ」@Sahainan タイ

『ファーム体験記』について

自然に迷惑をかけ過ぎず、
自然からいただけるものを活かして、
自然に何かを還元して、
季節の匂いをかいで、
朝に子どものようなワクワクさを感じて、
遊ぶように働いて、
日が暮れたら寝る。 そんな暮らしをいつか実践したいと妄想しています。

旅をしながら、 農的暮らし/持続可能性/パーマカルチャー/半農半X の学びを深めることできます!! 世界中には、 農的暮らし/持続可能性/パーマカルチャー/半農半X を目指し、日々実践する人々がいます。 そんな人から、ボランティア(WOOFFやHelpx)を通して、 私は学んでいこうと思います。

この記事を通して、 農的な暮らしの経験やスキルなどをシェアすること 同じような目標を持っているとつながること が目標です。

【イントロ】

最近登山やハイキング記事に焦点を起き過ぎていたので、久しぶりに気分転換としてファームステイの体験記を綴っていきます。

今回紹介するファームは、Sahainanです。タイ北部にあるナーン(Nan / เทศบาลเมืองน่าน)地区にあるパーマカルチャー・ファームです。「パーマカルチャーって何?」と思った方は、下記で大枠を説明するのでご安心ください。

2019年3月から、パーマカルチャー/有機農法を学ぶためにこのSahainanというファームへ行きました。Permaculture Design Certificate (PDC) Courseという、「パーマカルチャーの理解を深めて、それを実践できる必要事項を学んだ」という資格を取得するためでした。

そこでは、自然を活かしてとれた健康的な食を食べ、自然とつながり、人と人が学び合うコミュニティーがありました。このファームでは、「知る」ではなく、「体感すること」が重要視されています。こうした環境の中で、数えきれないことが私の中に刻まれました。そして、その学びが今の私にも生きています。

みなさんは、尊い自然(=宇宙の万物?)に迷惑をかけすぎず、健康で持続可能で少し怠惰な農的暮らしに興味がありませんか?

本記事では、このSahainanファームステイのPDCコースとボランティア活動の報告とこの経験を通して何を学んだか、そして、読者さんにシェアしたいことをまとめてみました。

今回の記事を通して、
①読者さんにもファームステイに興味を持ってもらうこと
②私自身の経験の振り返り
③有益なパーマカルチャー/自然農法/有機農法、生活の知恵のシェア
ができたらいいなと思っています。

「ファームステイ」「持続可能な生活」「パーマカルチャー」「自然農法」「旅」「田舎が好き」「自然が好き」「タイ」などのキーワードに興味がある方に特におすすめな記事です。


【ファームの基本情報】

【ファームとご家族】

Sahainanで暮らし運営と管理するのは、テイさんとサンドットさん夫婦です。テイさんは台湾出身です。若い時からずっとパーマカルチャーや自然農法を活かしながら、自然と共生する道を志して、アジアを中心にファームステイをしてきました。歯に衣着せなず、率直にアドアイスをしてくれる一方で、失敗を優しく後ろから見てくれる方でした。2人の子どもを育てながら、世界中のパーマカルチャーを志す人と向き合い、技術や知恵をシェアしています。

夫のサンドットさんは、地元のタイ出身です。ゆったりして落ち着いていますが、ユーモア溢れるかわいいおじさまです。もともとエンジニアとして都市部でも働いていましたが、息が切れそうなくらい忙しい生活に嫌気がさして、田舎での生活を決めたそうです。彼の手先の器用さに驚かされるでしょう。マシェティで繊細竹細工を作ったり、正確にまっすぐ釘をハンマーで打ち下ろしたりと、積年の経験が伺えます。家の建て方や土づくり、竹細工に鳥の解体の仕方など、多彩な技術や知恵を持った方です。

そして2人の子どもがいます。長男も次男もいつも両親と一緒に畑や森を散策します。また、世界中のボランティアやPDCコース受講者と一緒にいるので、2019年時点で、両親の母語のタイ語/台湾華語だけではなく、英語/フランス語も話せるようになってきています。

サンドットさんと手伝う息子。

【パーマカルチャーとは何か?】

この質問、マジで難問です。私の言葉でまとめるなら、きっと「自然や人と自身とが調和するための生き方」となるでしょう。

もっとも具体的に言うと、こんなことが言えると思います。この広い宇宙の中で私は独立して生きていけません。私は自然から命をいただいて生きています。例えば、野菜を食べたり、肉を食べたり、牛の糞を燃やして暖をとったり、虫たちが受粉をしてくれたり。そして、私は、目に見える形でもそうじゃなくても、様々な人との支えられて生きています。例えば、友人が困った時に精神的に支えになってくれたり、歯医者が虫歯を治療してくれたり、顔も知らない農家さんが美味しいお米を作ってくれたり。自然(=宇宙の万物)や人がなくなったら、私は生きていけません。

だから、「自然や人と自身の関係って大事だよね?有限な自然を酷使したりしないで(Earth Care)、人を虐げたりしないで(People Care)、自身や近しい人だけの損得に囚われないで(Fair Share)、お互いを生(活)かし合う関係を築いてみない?」という理念をパーマカルチャーでは掲げています。その理念に基づいて生きていくという点から、上記のような「自然や人と自身とが調和するための生き方」と私なりに定義してみました。

だからこそ、パーマカルチャーを学んだ人のの多くは、自然を搾取せず、自然を活かし、持続可能な農的暮らしを実践しようとします(私もその一人)。Sahainanは、世界に点在するこの生活を実践し、追求し、学び合う農的なコミュニティの一つです。

パーマカルチャー・デザインコースをタイと日本で取得したとはいえ、上手に言葉にするのは難しいですね。そもそも、私の場合は言葉ではなく体験を通して「あー、こういうことね」と納得しました。だから、個人的には、パーマカルチャーという言葉にフォーカスせず、実践者と共に生活して、彼/女らの暮らしや畑や人間関係を観察し、一緒に実践した方が分かると思います。

【ファームボランティアとPDCコース】

Sahainanでは、いくつかの形態でファームボランティアを募集しています。多くの方が、ファームボランティアとして訪れます。ホームページやWOOFF、Helpxからコンタクトをとります。到着日時や動機を伝えれば、あとは、Sahainanにたどり着くだけです。行った時期によって、活動が異なりますが、どの時期に訪れても農的な暮らしを学べます。

そのほかにも、Sahainanでは様々なコースを開催しています。代表的なもぼがPermaculture Design Certificateコースです。パーマカルチャーの理念と原理を実践的に学べるコースです。主要言語は英語です。Sahainanでは机上の知識よりも実践を重んじています(座ってパーマカルチャーを学ぶ時間は少なめです)。パーマカルチャーを暮らしに落とし込んだ実践者との暮らしや畑を通して、「あ〜、こういうことね」と何かが染み込んでくるはずです。「知ること」より「経験すること/体感すること」を通してパーマカルチャーを感じてみてください!!

もしも興味があるなら、こちらのリンクから申し込みができます。PDCコースは有料です。銀行振り込みによる支払いです。

PDCコースの様子。コース参加者で畑をデザインしています。

【SahainanのPDCコースを選んだ理由】

理由① アジアだから
世界各地でPDCコースを開催するファームがあります。そんな中で、私はどうしてもアジア出身の人から学んでみたかったんです。私自身がアジアにルーツがあり、思想体系や体つき、食べ物や生きてきた環境がが似ているアジアの方に、パーマカルチャーを習いたいと思っていました。アジアが好きなんです、アジアが!!

理由② 金額
台湾、日本、北米、欧州といった様々なところで  PDCコースを受講することができます。しかし、基本的にどれも10万円から30万円が相場でした。当時お金のない私にとって、このSahainanは安価な価格でコースを提供してくれました。参考までに、2024年時点では、2週間のコースで16,600 Bahtという価格です。5年前はもう少し安かったかも?
こちらのリンクからPDCコースの申し込みができます。


【ファームステイで学べること】

①自分の手で、自然の中から手に入るもので、何かを作る

サンドットさんは、マシェティを使ってなんでも作ってしまいます。しかも、いとも簡単に。PDCでは、実際にマシェティを手にとって、竹を加工して、コンポスト集積場やスプーンを作ったりします。こうした経験を通して、買わなくても自然の中にある物で自身の手で何かを作れることを体に叩き込まれます。
また、PDCコースの開始前にしばらくSahainanでボランティアをしていたときは、家を自力で建てるプロジェクトにも参加をしました。木を切って、運んで、設置して、それに釘をうちつける。「私たちが当たり前にお金を払ってもらっていることが、仲間と協力すればできるんだ」という自信にもつながりました。
そのほかにも、EM(Effective Microorganism)、レンガといろいろな物を作りました。

②パーマカルチャーの理念と原理

もちろん座学の時間もありました。サンドットさんやフランスで有機農業をしていた方2人で、パーマカルチャーの理念(「パーマカルチャーとは何か?」で紹介済み)と原理を教えていただきました。

③命の重み

これは完全にオプショナルです。お願いすれば鳥を殺して、解体して、肉にするまでの行程を教えてくれます。スーパーで私達が買うお肉の裏で、血や糞尿に塗れた厳しい命のやりとりがあります。お肉を食べる人なら、一度は経験しておいた方がいいのかなと思います。

④ミニマリストな生活

Sahainanでは、驚くほど物が少ないです。ボランティアやコース受講者の家もシンプルです。それでも、Sahainanのご家族、コミュニティ、ボランティアが集まって、ずっと楽しい日々でした。畑や森でも毎日発見があり、飽きることのない生活でした。物って実はそんなに必要ないということにも改めて気付かされました。

私がか借りていた家。

⑤自然からいただける物

豆の収穫をしている時に指を切ってしまいました。出血がなかなか止まりませんでした。そんな時、サンドットがバナナから生える花の部分を切り、そこから出る蜜を傷に塗ってくれました。出血が驚くほどとまりました。「絆創膏なんてなくたって、血はとまる」と笑顔でそこを去っていきました。

サンドットさんは、自身が住む畑と森のことをよく知っています。便秘の時には、このハーブがいいと、一発で見分けて持ってきてくれます。自然からいただける物が実はいっぱいあることに気づかされます。

バナナの花。

⑥観察すること

知識欲に駆られて質問攻めをする私にテイさんが一喝してくれました。「もっと観察したら?」と。自身の五感で観察して得られたことはずっと忘れないのだと。脱帽です。


【実際の活動内容】

【ボランティアの1日の流れ】

ボランティアの活動時間に決まりはありませんでした。その季節に求められる仕事に従事します。以下は、ある日の例です。また、個人に任される仕事もあります。例えば、朝食の調理、水やり、ボランティアのピックアップ、夕食の調理などです。私は、カシューナッツ担当でした。

6:00:起床
6:20:水やり(きゅーりやレタスなどの葉野菜)
7:00:朝食
7:30:建築の手伝い
12:00:昼食+昼寝
14:00:カシューナッツをひたすら炒る
17:00:焚き木採取
18:00:夕食+談話
21:00:就寝

同じ日に、測量する人、古い家を壊す人、馬糞を運ぶ人もいました。仕事は多彩です。

私の仕事は、ひたすらカシューナッツを収穫し、炒る仕事。

【PDCコースの1日の流れ】

PDCコース(Permaculture Design Certificate Course)とは、「パーマカルチャーの理解を深めて、それを実践できる必要事項を学んだ」という資格をもらうためのコースです。ボランティアとは異なり、パーマカルチャーを学ぶための座学の時間、パーマカルチャーを活かした家や畑の見学、そして、実践など、目白押しです。

6:00:起床(たまにボランティアと仕事を手伝うことも)
7:00:朝食
8:00:コース開始
12:00:昼食+昼寝
14:00:コース開始
18:00:夕食+談話
21:00:就寝

レンガ作り。

【PDCコースのカリキュラム】

私はPDCコース受講時に下記の内容が組み込まれていました。参考にどうぞ。

・パーマカルチャーの基礎(理念と原理とそれを体現する畑や暮らしの見学)
・有機農法基礎
・竹細工
・ボカシ作り
・地元のハーブを学ぶ
・竹炭作り
・リーフガーデン作り
・川から水を引っ張り方を学ぶ
・ヴェジタリアン/ヴィーガン料理作り
・バナナの植え替え
・建築の手伝い
・ディスカッション
・サバイバル
・山火事の対処法
・その他農作業(水田の準備/豆の収穫/マルチの収穫)


【心に響いたこと/実践に移したいこと】

【Food Is Medicine】

Sahainanの最初の食事で言われたことは、"Food Is Medicine(食べ物は薬)"でした。自身の体調に合わせて、食べ物を通して毎日自身に処方すること。太古の昔から、人は自身が必要とする栄養を自然からいただき、摂取してきました。自身の身の回りに生えている草ですら、ある一定の効用をもたりします。
こうした食生活を実践するには、観察が必要になってきます。「私の周りにはどんな植物があるか?」、「それを摂取すると私はどう反応するか?」といったことを深く観察することで、健康的な食生活を築くことができます。
私が定住したら、自身の畑や近くの森から収穫できる食べ物と私自身の関係を見つめなおしたいと思いました。

【五感を使って観察すること】

上段でも触れたように、Sahainanでは観察の重要性に気付かされました。五感を使って動物、植物、気候、人、私を観察します。そして、何年か過ぎて、「あ〜こういうことね」と言葉にはできないけど「納得」することができれば、それは「知る」よりも価値があるとSahainanの人が言っていました。

【Do Not Lock Your Fence】

サンドットさんがSahainanファームを作ったばかりの時の話です。当時は、近所の人が作物を盗んだり、悪い評判を流したりしていたそうです。これに対して、彼はどのように対処したのか?
フェンスをとっぱらって、近くに来た人を招き入れたそうです。”Do Not Lock Your Fence(フェンスに鍵をかけるな)”。多くの人に、Sahainanの趣旨を知ってもらい、近所の方を巻き込むことができたそうです。それから、盗みがなくなったそうです。むしろ馬糞(コンポストや有機農法に必要)などをシェアしてくれるようになったそうです。近所の方もパーマカルチャーや無農薬農法に興味を持って訪れるようになったそうです。加えて、最近は、いろいろな方を招いて音楽活動をしているとか。
「閉ざす」から「開く」を意識することによって、ポジティブな関係が広がっていきます。自身の畑を持ったら、通りかかりの人に挨拶をしてみようと思います。まずはそこからです。

コミュニティと協力して道路作り。

【コンポストの作り方】

菌の活動を活性化させ、土中環境を豊かにするために用いられるコンポスト。田上前の土づくりの準備として、それを学ぶことができました。

炭素を含む物(枯葉、枝、紙、藁など)と窒素を含む物(鳥/牛/馬の糞、草、生ゴミなど)をミルフィーユ状にすることで菌が活発に分解を始めます。やがて、半年から1年でこのミルフィーユがふかふかな土のようになります。それを土と混ぜることによって、菌と栄養が豊富な畑ができます。

今回は藁(炭素)、乾燥した牛糞(窒素)、水、手作りEM(Efficient Microorganism)でコンポストを作りました。藁を敷いて、そこに疎らに牛糞を撒く。そこに大量に水をそそぐ。そして、さらに同じ層を作り、同じ量の水をまく。たまに、スプーン一杯のEMを水と一緒にまく。そうしてできた積層が1Mくらい積み重なれば完成です。2時間後に戻るってみると、なんと驚き、煙が出てきました。手を差し込むと50°まで熱くなっていました。菌が活発に動いている証拠だそうです。あとは、たまに立ち寄って、フォークで掻き混ぜれば、大丈夫とのことです。

将来は家から出た生ゴミ処理として使ってみたいテクニックです。

【No Waste】

Sahainanのキッチンのシンクとトイレに思い入れがあります。無駄なく自然の中に戻すことができるデザインされていたからです。

キッチンのシンクから流れ出る先には、いつも鶏がいました。鶏は人間が食べきれなかった細かい食べかすを食べ切ってくれます。そして、鶏が散策時に畑にする糞が分解されて、土の栄養に戻っていきます。また、シンクから流れ出る先には、眼が出ていました。調理の時に出たパプリカやアボカドの種が目を出しているのです。ある程度育ったら、適当な場所にそれを植え替えます。食べかすや捨てられた種が全て活かされていました。というか、自然の一部にしっかり戻されていました。

トイレも非常に興味深い設計でした。トイレの排水の先にはバナナの木が植えてあります。バナナの木の地層の下に穴が掘られていて、排泄物がゆっくりと肥料に変わるというシステムです。たしかに、トイレの近くのバナナの木は、他のくらべて大きく成長しています。

このように、工夫を凝らせば、どんどん無駄が減る(=自然に還元できるものが増える)のだなと思いました。私の将来の生活にも取り入れたい!!

キッチンシンクの先で育った植物たち。

【まとめ】

以上が私のSahainanの記録です。Sahainan自身もホームページとインスタグラムを持っています。こちらのリンクから飛ぶことができます。

上記以外にも語り尽くせない発見や裏ストーリーがありましたが、それを語るの別の機会にしておきます。今後も、ファームステイの記事を書いていきますね!!

なんか、そろそろ定住したいな〜。



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旅する百姓 detourkz @世界を歩く
今後も山/農/旅の記事をもっと書いていくことを約束します。本当に励みになります。頂いたチップで、色々な場所へ行き、取材して参ります!!