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分類その9「サイコ・スリラー」

このミステリとして比較的新しいジャンルは、名探偵の居場所を、暖炉の前のロッキングチェアから、厳重な鉄格子の中へと変えた。
これまでの推理小説と異なる点はいくつかあるが、大体まとめると次のような3点になる。
1.犯人がマトモじゃない。
2.そんな犯人の事がわかる探偵もマトモじゃない。
3.犯人の異常心理を分析する事で事件を解決する。

言わずもがな、このジャンルを不動のものにした作家は、トマス・ハリスだ。長編小説の第2作目である「レッド・ドラゴン」で登場したレクター博士は、新しいカタチの名探偵のあり方を示してくれた。

続く「羊たちの沈黙」は映画が大ヒットした。その後、多くのサイコ・サスペンスやサイコ・スリラーが作られ、「プロファイリング」という言葉もあまり目新しいものでなくなった。

犯人の動機が怨恨や金品や口封じなどではなく、殺人そのものなのだからたまらない。これが謎解きを主眼とするミステリになり得るのかどうか?
しかし現実の捜査では、犯人の心理を細かく分析する事で、足取りを追ったり、次のターゲットを絞れたり、コンプレックスや弱点を見つけ出す事で、犯人を追い詰めて行くという、新たな推理小説が誕生したのである。

この手の読み物がかつて存在しなかったかというと、そうでもない。
イギリスの哲学者コリン・ウィルソンはSFやミステリ小説も書いているのだが、およそウィリアム・ブレイクと殺人心理を結びつけたのは、彼が最初ではないかと考えている。

生憎、この本は絶版のようである。

とにかくこのジャンルは、トマス・ハリス以降雨後の筍のように出現しているので、挙げるとキリがない。有名なところとして「サイレント・ヴォイス」あたりを挙げておく。

もっとも、精神異常者の事は精神異常者にしかわからないという縛りは、最近ではあまり見られなくなり、レクター博士のように、檻の中から刑事に事件解決のヒントを与えるようなスタイルは、すっかり廃れてしまった。
映画やドラマでさんざん使われてしまったからだろう。


2023.3.24

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