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恩田陸「puzzle」感想

「六番目の小夜子」以降、恩田陸さんの小説はいくつか読んでいるが、共通して言えるのは、お膳立てがとてもワクワクするという点である。
このpuzzleにしてもそうだ。無関係に見える5つのメモ。どれも新聞や雑誌などから抜粋された文章のようだ。書かれた年代も話題もバラバラ。それらが廃墟となった孤島に集結する。孤島には死体が3つ。体育館での餓死、映画館での感電死、屋上での墜落死。各章は3つのP。piece(断片)、play(謎解き)、picture(真相)に分かれている。

ミステリーはロマンである。謎に包まれた唯一の真相に思いを馳せる。その正体はスッキリとした美しくすらあるものであって欲しいものだ。単純な証明式のように、シンプルかつ明解でなくては納得できない。

ところがどうだろう?この人の作品にはいつもボヤッとした結末が待っている。このpuzzleに至っては「辻褄を合わせただけ」という印象すらある。どうなんだろう?これは最初に存在したpicture(一枚の絵)をジグソーで分割して行ったものなのだろうか?
それにしては最後に現れた絵が歪だ。各pieceの凹凸が隣のpieceの凹凸ともしっくり収まっていない感じがする。間をパテ埋めしているようだ。

私には最初のお膳立て部分が、「謎」という美しい一枚の絵に見える。


2023.4.21

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