シェア
現役探偵の調査ものがたり:小説
2020年12月14日 07:00
『現役探偵の調査ファイル 七人の奇妙な依頼人』 福田政史:著【第七話】盗聴(みみ)9 回数が多ければ多いほどいいと聞いた依頼人が「費用のほうは心配しないでください」と言うので、それから数回、マルヒの尾行調査を行った。マルヒは相変わらず週二、三回、笹木のマンションを訪れていた。私たちはその都度、出入りの写真を撮るのだが、何となく虚しい作業に思えてきた。 私はついにある決心をした。「二人のあい
2020年12月13日 07:00
『現役探偵の調査ファイル 七人の奇妙な依頼人』 福田政史:著【第七話】盗聴(みみ)8 依頼人を伴って弁護士事務所を訪問したのは、そんなやりとりがあって三、四日したころだった。 奥さんであるマルヒが十数回も不倫相手のマンションに行き、そこでいつも数時間過ごしていること、そして不倫相手の身元調査も話した。弁護士に渡した調査報告書には、二人のデートの様子やマンションに出入りする写真も添付していた
2020年12月12日 07:00
『現役探偵の調査ファイル 七人の奇妙な依頼人』 福田政史:著【第七話】盗聴(みみ)7 この日の調査で、マルヒが不倫をしていることは、さらに明確となった。 ただし、昨今の法律事情や離婚裁判の判例では、ラブホテルで密会した場合は肉体関係があったとされるが、このケースのように一般住居における密会は、当人たちが肉体関係を否定すると裁判に負けてしまうケースもままある。「ええ、確かに彼の家に行きました
2020年12月11日 12:52
『現役探偵の調査ファイル 七人の奇妙な依頼人』 福田政史:著【第七話】盗聴(みみ)6 翌日、依頼人が事務所を訪れたので、私は正直に昨夜、尾行調査に失敗したことを告げた。「地下駐車場か大きなビルの陰に車を停めたことなどが考えられるのですが、現在、なぜ追尾装置からの電波が受信できなくなったか、調査中です」 私がこう説明すると、依頼人は非難めいたことをまったく口にせず、「まあ、そんなこともあ
2020年12月10日 07:00
『現役探偵の調査ファイル 七人の奇妙な依頼人』 福田政史:著【第七話】盗聴(みみ)5(後半) 調査三日目は、三日後の月曜日。土、日は依頼人が在宅していたからだ。 前回の調査でマルヒが十時過ぎに家を出たため、念のため早めに行くことにした。調査員三名が九時半ごろ車で本人宅に向かっていたところ、追尾装置を付けたマルヒの車が移動していることを事務所から知らされる。「マルヒの車は井の頭通りの代田橋あ
2020年12月9日 11:15
『現役探偵の調査ファイル 七人の奇妙な依頼人』 福田政史:著【第七話】盗聴(みみ)5(前半) 被調査人、明子の素行調査は依頼の翌々日から開始した。 マルヒが浮気をするとすれば、夫が会社に行っている間だろうと考え、依頼人とも打ち合わせのうえで、午前十時から自宅前で張り込むことにした。 不倫相手から呼び出されたら、たぶん車で出掛けるだろう。こう予想して、車の所有者である依頼人に頼み、奥さんが
2020年12月8日 14:30
『現役探偵の調査ファイル 七人の奇妙な依頼人』 福田政史:著【第七話】盗聴(みみ)4 依頼者の妻に対する疑問をひととおり聞いた私は、浮気調査を引き受け、マルヒ(妻・明子)の普通のパターンを尋ねた。 それによると、奥さんは、帰国後、アメリカで夫から教えられたゴルフにのめり込み、週何回か杉並区の自宅近くにあるHゴルフ練習場に通い、その練習場のゴルフ教室にも入会しているという。「このゴルフ関係
2020年12月7日 11:24
『現役探偵の調査ファイル 七人の奇妙な依頼人』 福田政史:著【第七話】盗聴(みみ)3 依頼人、吉村武雄氏は妻の浮気調査を依頼するに至った敬意を話しはじめました。「かれこれ十年ほどでしょうか。私は北米エリアの支社長としてアメリカに赴任していました。最初は、妻の明子(四十五歳で夫より十歳年下)も一緒に行ってくれたのですが、言葉も不自由で食事も合わない。そのうえ友達もいないから退屈だと言いはじめ
2020年12月5日 23:21
『現役探偵の調査ファイル 七人の奇妙な依頼人』 福田政史:著【第七話】盗聴(みみ)2 平成十五年五月、うちの事務所のホームページを見たという男性から調査依頼の電話があった。言葉遣いは丁寧で、会う時間の打ち合わせなどもテキパキしている。私はあえて調査の内容など聞かず、約束の日、事務所で待っていた。 ちなみに、ホームページを作るように勧めたのは事務所で働いている娘である。かつて探偵業界の唯一と
2020年12月4日 07:00
『現役探偵の調査ファイル 七人の奇妙な依頼人』 福田政史:著【第七話】盗聴(みみ)1 探偵として働き始め、神田駅前で事務所を持ったころ、不倫調査はほぼ百パーセント、妻からの依頼だった。依頼する妻の年齢は四十歳過ぎで、五十歳代、なかには六十歳ということもあった。 妻からの依頼が圧倒的に多かったのは、妻のほうが、夫や家庭に対する執着が強かったからなのだろう。昭和三十年〜四十年ぐらいまで、既婚女