2015年タイインディーズシーン総括
こちらも、前記事と同じく、dessin the worldのFacebookページではすでに公開しているのですが、2015年年末にまとめた「2015年タイインディーズシーン総括」を掲載します。
2015年は、このレーベルを始めた以降で、一段と日本とタイのインディーズシーンの繋がりが強くなった年となりました。
Ginn
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自分がいるシーン周辺の情報だけなので、偏ってはいますが、2015年のタイインディーズシーンを簡単に。
今年は日本のインディーズシーンとの繋がりが強くなった年。日本のライブハウス「FEVER」の店長 西村さん、日本の音楽レーベル「Parabolica Records」のオーナー 西さん、ボクの3人で、数年前から温めてきたあれこれが、やっと、少しずつだけど、実現し始めた。
タイのバンドでいうと、Stoondioがparabolica recordsより日本でアルバムをリリースし、その勢いのまま日本ツアー。他にもYellow fang、Two Million Thanks、popdubが日本ツアーに。DCNXTRもScapeRec,Tokyoより日本でアルバムがリリースされた。
日本からはthe band apart、deepsea drive machine、2090が、タイの尖ったラジオ局「Cat Radio」主催のタイ最大規模の音楽野外フェス「CAT EXPO」に出演。前夜祭としてPLAY YARD by Studio Barにておこなわれたイベントには、the band apartの来タイライブを心待ちにしていたタイのファン、そして、もはやタイでも固定ファンがついているdeepsea drive machineや、二度目のタイツアーとなる2090の再来タイライブを待っていたファンたちでごった返し、その場にいた誰もがその一瞬一瞬を大切に記憶に刻むような、特別な空気感が漂う一夜となった。このイベントでは、大きなステージでの演奏となるCAT EXPOとは真逆のシチュエーションにしようと思い、まさに目の前で演奏を体験できるほどの距離で演奏してもらった。the band apartを見に日本からもファンの方々がいらっしゃっていたのだが、口々に「すごい、この距離で見れちゃうんだ!!」と喜んでもらえていた模様。
How to count one to ten、Sawagi、DENIMSは、タイ超自然派野外音楽フェス「Stone Free Music Festival」に出演。のはずだったが、開催3日前に突然の延期が決定。あまりにも難だったので、同時期に開催していた、同じくタイ野外音楽フェス「Grass Tone Sound Music Festival」にお願いし、フェスに飛び入りさせてもらうことに。急遽の出演となったため十分なプロモが行き届かなかったものの、バンドの吸引力が非常に強く、演奏が始まったとたん、見る見るうちに人が吸い付けられていって、いつしか多くのタイ人オーディエンスが大盛り上がりしていた。
タイの音楽通の間では話題となっていたROTH BART BARONも、こちらもタイ最大規模の音楽野外フェス「Big Mountain Music Festival」への出演を果たした。今回、バンコク市内での演奏機会がなかったので、次回は是非、バンコクにいるファンにもライブを見せて欲しい。
ROVOの勝井 祐二さんも、3年ぶり2度目のタイツアーを決行した。連日連夜、多くのタイインディーズシーンのバンドと共演したり、タイのジャムバンドpopdubとセッションしたり、Grass Tone Sound Music Festivalでaireの客演としてセッションしたり、同じく日本からタイツアーに来ていたアーティストと共演したり、と、タイの音楽シーンにさらに深く爪跡を残した。
日・タイのインディーズバンドを集めてフリーダウンロードで配信するというプロジェクト「a plan named overlap」の第4弾をリリース。リリース日にDL制限に達するほどDLいただき、一ヶ月後の制限解除日に再度制限に達するほど反響をいただいた。
https://dessintheworld.bandcamp.com/album/a-plan-named-overlap-4
その他、タイインディーズシーンでの動きでいうと、リリース関連で目立ったのはInspirative、Stoondio、Part Time Musicians、Solitude Is Bliss、Moving and Cut、Wednesdayあたりか。
Stoondioのレコ発は、手作り感あふれる温かいイベントとなった。Inspirativeのレコ発はチケットがSold Outとなるほどの盛況ぶりで、演奏も2時間におよぶ超ロングセットでおこなわれた。
ハコ関連でいくと、相変わらずインディーズが演奏できる場所は少ない。日本と比べてしまうと、とても少ない。Fatty's Bar & Diner、Immortal Barは、イベント開催ができなかった時期があったものの、現在はイベントできるようになってきた模様。騒音問題が日本よりだいぶゆるいとはいえ、深夜までガンガン大音量で演奏したり、近隣に迷惑かけたり、そういうのでイベント開催できなかったみたいなので(そのまま閉店せざるを得ない、ってパターンももちろんあるかと)、企画者も出演者もお客さんも、一体となってシーンを守らないとな、と改めて思った。
他には、チャオプラヤー川の向こう側にThe Jam Factoryというオシャレ複合スペース(図書館、カフェ、アートギャラリー、レストランなどを併設したスペース)の中庭でライブイベントがちょいちょい開催されるようになった。Stoondioのレコ発もこちらでおこなわれた。
市内だと、SilomのWhiteline(キャパ100~150)、On NutのBrownstone(スタジオライブ、キャパ20~30)あたりで、盛んにイベントが開催されるようになった。 LIVE HOUSE BKK、 Happening Live House RCAといった、中~大規模のライブハウスも設立された。
フェス関連でいくと、場所が見つからなくてなかなか開催できなかったStone Free Music Festivalの第4回目が12月に開催されることになった。。。はずだったが突然の延期となり、来年1月に持ち越しに。
Grass Tone Sound Music Festivalも第4回目を迎え、もはや冬野外フェスの定番に仲間入りの感が。
CAT EXPOは第2回目ながらも、前身のFat Festivalからのノウハウもあり、より充実した内容に。このフェスは、なにより客層が素晴らしい。当たり前に聞こえるかもしれないけど、皆、音楽を真剣に楽しみに来ている。パーティー気分を味わうためにきている客は見当たらない(そういう楽しみ方を否定するわけじゃないけど)。この日に新作をリリースするアーティストが多数いることを見越しこの日のために貯金をするキッズたち、そのキッズたちを支援するためにチケット代をなるべく安く抑えるイベント主催者、と、会場の雰囲気も終始温かく素晴らしいフェス。
新しいフェスも乱立した年で、多分、一回限りのフェスもたくさんありそうな予感。
他には、タイインディーズ音源のストリーミングサイトを運営する「Fungjai(ฟังใจ)」のライブ部門が大きなうねりを作った。ライブイベント「Hed Sod」は、第一回目、第二回目ともに、かつて人気があったが解散・活動休止していたバンドを復活させ目玉バンドとして携え、かつ、次世代を担うインディーズバンドをブッキングし、話題的にも集客的にも大成功を収めた。タイインディーズ若手バンドは、CAT EXPO、Stone Free Music Festival、そしてこのHed Sodあたりを目標にしているバンドも多いのではないか。
また、インディーズも取り扱ってくれるCDショップ「Nong taprachan」は、去年にも増して定期的にインストアライブを企画。来年2月には10バンド以上集めた大規模なイベントを、店の隣のタマサート大学講堂内でおこなう。
来年については、人気のあのバンドの単独音源リリースが予定されていたり、いくつかのタイのバンドの日本でのリリースが(もしかしたら日本ツアーも)決まっていたり、引き続きタイの音楽フェスへの日本バンドの招聘が水面下でおこなわれるなど、タイインディーズシーン および 日・タイの交流がさらに賑わっていきそう。その流れを、どの位置でどう支援していくか、改めて考えてみなくちゃな。