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教育ビジネスとコンテンツの変遷(教育コンテンツ開発)

大学院で学ぶ「学習のデザイン」。記事とは関係ない内容ですが、6/3(金)に学習イベントで話します。行動経済学に関する内容ですので、ご興味ある方はぜひ。

さて、今日は、戦後から日本の教育ビジネスがどう移り変わり、コンテンツの進化について、まとめてみます。


1960年代:悪かろう高かろう

日本が高度経済成長に突入して、多くの団塊世代が高校や大学に通うようになった時代です。40-50人が10クラスもある学校など、人数に施設が追いついていない状況でした。

またこの時代は学生運動がさかんでもありました。

その中で日大紛争というのを知っていますか?実は僕もこの授業を受けるまでは、学生運動というと東大の安田講堂占拠しかイメージを持っていませんでした。この日大紛争が、当時の問題を大きく反映しています。

日大は日本で一番大きなマンモス大学です。1965年でなんと37,000人もの学生がいて、地方から上京してきた人も多く集まっていました。

1つの教室に生徒が1,000人以上いる授業もあったそうです。教授はマイクを使うけどほとんど聞こえない、プロジェクタなんかないから話以外はよくわからない、という状態です。環境要因によって低い品質の教育コンテンツを提供していました。(授業の内容も怠慢さがあったそうですが)

そんな状況でも、大学は授業料の値上げをしていました。しかしある時、大学側の不正による、裏口入学を斡旋して謝礼金を着服が報道で明らかになりました。学生にとっても、地方から送り出した両親にとっても、これは怒って当然です。ここから紛争に発展していきました

品質とお金が見合わないと問題が起こることを象徴した例です。(ここでは教育コンテンツにとどめての紹介ですが、日大紛争はほんとにひどい話で、興味ある人は調べてみてください)60年代はそんな時代でした。

1970年代:学校以外の教育

そんな問題がありながらも、人口は増えて景気も上がっています。大学の進学率の上昇にともない、予備校といわれる学習塾が増加しました。

これまでは学校にしか使っていなかった教育費を学校以外にも支払うながれがうまれ、受験に向けたわかりやすいコンテンツが増えていきます。この動きが教育産業が伸びるながれに発展します。

1980年代:テクノロジーの活用

予備校の全盛期はこの年代です。僕は地方で過ごし、かつ大学受験をしたことがないのであまりよくわかってないのですが、それまで大手であった駿台・河合塾・代ゼミに加えて、東進ハイスクールが登場します。

東進ハイスクールが画期的だったのは、映像授業を先駆けて導入したことでした。衛生通信を使うなどで、トップ講師の授業を全国の生徒が受けられるようになります。また大型スクリーンなどの機材も発達し、より多くの人が一度に受けられるようになります。コンテンツ配信ビジネスの先駆けです。

これにより1講師30人といったような、人数の壁を越える収益性の高い教育ビジネスが行えるようになりました。

1990年代:量から質へ

少子化の傾向が顕著にあらわれ始めたのが90年代です。

この影響を受けて、個別指導の塾が増えたり、塾ごとに特色が異なるなど多様化が見られるようになりました。バブルがはじけたとはいえ所得は現在よりも強いので、子ども一人にかける教育費は上昇していきます。

中学校受験をする家庭が増えたのも、この時代です。

大学では入学者を確保するために、新しい学科などを設立するなど、時代にあった教育コンテンツを提供するよう試行錯誤しはじめます。

2000年代以降:DXと学び方の変化

2000年以降はデジタルテクノロジーの進化がめまぐるしいのは、みんなご存知の通りです。そんな中、やはり学習塾が先駆けて、通信教育やオンライン配信、データを活用した受験対策、AIを活用した効率的な学習支援などが進められるようになりました。

スタディサプリのような、塾とは違うコンテンツ配信型の教育ビジネスも広まっています。教育系Youtuberが産業として成り立つかは難しいところですが、教育のデジタルコンテンツはまだまだ広がります。

対して学校は、現在でも授業で用いられるコンテンツ自体はほとんど変化せずでした。一方で、学習スタイルは変わり始めています。アクティブラーニングやSTEM教育など探究学習のように、教師が一方的に教えるスタイルから、自ら主体的学ぶことへと移行しているのが、いま起こっている状況です。

2030年ごろになると、2020年は教育コンテンツに大きな変化があったと思えるようになるかもしれません。

学んだこと

教えるという行為は、時代を問わず普遍的なものだと思っていましたが、こうやって時代を振り返ってみると、いろんな要因に影響を受けて教育産業が発展していることがわかりました。

時代の流れをマクロ的に捉えるフレームワークに、PEST分析という手法があります。(Ecologyを加えたSTEEPを用いる場合もあります)

  • Politics:入試制度の変更、学校設立の見直しなど

  • Economy:所得や教育費の使い方、経営効率、差別化

  • Society:人口動態の変化、浪人、時代に適した教育ニーズ

  • Technology:提供するコンテンツの質・量の劇的な変化

教育だからと特別に考えずに、他の産業と同じようにビジネスとして分析する視点を持つことによって、今後なにが求められるかをコンテクストのなかで考察できるようになるので、よい気づきを得ました。

今日はここまでです。

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