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実践知ってなんだ?(実践と理論の融合)

大学院で学ぶ「学習のデザイン」。今回は実践と理論の関係のなかで、実践知にフォーカスして考察します。


実践知とは?

実践とは、実際にやってみることです。あたりまえですが。

もう少し踏み込んで言葉にすると、自身がもっている理論や知識を実際の状況で行動してみることです。なので実践には知識がともないます。だから実践知という言葉が成立します。

いや、知識なんか使わずに実践してることだったあるよ、という反論があるかもしれません。直感とか感覚的にとか本能とか。

でも、これも知識なんです。昨年受けた「知の理論」につながる内容で、知識とは理屈で物事を知ることだけではなく、好き嫌いを感じることも知ることだし、痛いと知覚することも知ることです。

なので「感覚的に実践している」という状況も、感覚的に身についているその人の理論を用いて実践知を発揮している、となります。

実践知と暗黙知は何が違う?

理論だけで実践していない人には実践知がありません。実践知を持っている人は、経験を繰り返すことによって、その領域で高いパフォーマンスが発揮できるための知識を備えています。

こういった人を熟達者といい、その過程を熟達化といいます。

熟達者が持っている実践知は、かなり個人的な知識です。前回の説明で、暗黙知は粘着性があって引き剥がしにくいことをお伝えしましたが、熟達者が持つ実践知も、暗黙知化されているものが多いです。

暗黙知と実践知の違いはなんでしょうか。

暗黙知とは、自分の中で完結していて、言語化ができない知識です。100人の顔を瞬時に見分けている暗黙知は相手に説明できません。

対して実践知とは、経験を重ねることで身についた知識なので、言語化できない暗黙知もあれば、言語化できる形式知もあります。例えば「外国人と会話するときには、こういうことを気をつけよう」という実践で得た知識は、他の人に共有できる知識です。

なので、暗黙知は実践知の一部に含まれますが、実践知=暗黙知、というわけではありません。

実践知は理論知と何が違う?


熟達者が持っている実践知は3つの特徴があります。

1つは土着性です。その地域ならでは活かされる知識です。雪国の人であれば、冬道で滑らない歩き方ができる実践知を持っています。この実践知は雪が積もらない地域では使えません。

2つめは伝統とのつながりです。自然災害に対する知識や、その土地の風習や宗教観などは、昔から受け継がれています。実践知は時間をかけて集積されることで、伝統や文化といった深みのある知識が醸成されます。

3つめは共有されることです。その地域のなかで有効な知識は他者にも伝わり活用されていきます。

現代の例で考えてみましょう。

日本のマンガは興味深い実践知の1つです。他国とは違う日本独自のマンガの表現や読み方などの土着性があります。先人たちの技法や作品を通じて、日本のマンガは進化・発展を遂げました。そしてマンガをつくる知識は受け継がれ共有され、日本以外にも広まって文化を形成してきました。

理論だけで積み上げたものであれば、こんなに深く複雑な知識にはなりません。実践知は理論だけではできない知識だということがよくわかります。

なんのために知識を実践しているのか?

実践知には「よりよいことを再生産する」という目的が含まれます。

マンガでいえば、漫画家の人が「こんな表現をしてみよう」と試みて、実践知を蓄積していきます。そこでわかったことがあれば、以降の制作過程でも活用していくことでその人のスタイルが形成されたり、他の漫画家が刺激を受けて参考にしたり、別の表現方法を試みたりします。

また、実践には理想像がともないます。

実践はどんな小さなことでも、「こうすればよくなるはず」とか「もっとこうした方がよい」といった動機で行動して、理想に近づけるための仮説と検証を繰り返しています。

というように、実践知は「よりよいことを再生産」しています。

学んだこと

実践について多角的に考えることで、位置付け・特徴・目的などの輪郭がおぼろげながら見えてきたと思います。

学校の勉強は理論を学ぶことに主眼が置かれがちですが、マンガの例でわかるように、実践を通じて得た知識は、深くて魅力があり楽しく学べるものではないかと思います。実践知を取り入れることが、学習のモチベーション向上にもつながるのではないかと考えました。

ただ授業はここまでで50%以下で、より踏み込んだ内容がもう半分くらいありました。そこは自分がまだ理解できていない(つまり形式知として共有できていない)ので、僕はまだ言語化ができない状態です。そのうち授業を受け続けていると、いつかわかってくるかもしれないので、今はまだあたためておきます。

今日はここまでです。

デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。