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受け身ではない学びのための自己調整学習(認知学習論)

大学院で学ぶ「学習のデザイン」今回は、学びたいという気持ちをどのように認知するか?ということについてまとめてみます。


自分で学習状況を管理すること

自己調整学習とは、学習者自身が自分の学習状況を俯瞰的に観察して、もっとよいやり方があれば修正していく取り組みです。ざっくり仕事的にいえばPDCAのことです。主にこんな4ステップです。

  1. 目標設定と方略計画

  2. 方略実行とモニタリング

  3. 方略結果のモニタリング

  4. 自己評価とモニタリング(1に戻る)

ただPDCAとは違って会社や上司に言われるのではなく、自己調整学習は主に自分で自分を管理することが求められます。

予期することと調整すること

前に紹介したパンデューラの社会的認知理論では、2つの予期知能があるということを述べています。

1つは、人→行動の間にある効力予期。例えば「自分ならこのくらい勉強すれば大丈夫そうか」とか「どうせ自分は実力が足りないから勉強しても無駄だ」と思ってしまうことです。

もう1つは、行動→結果の間にある結果予期。「今日はこれだけ宿題をしたから明日は褒められるだろう」とか「テストの点数やばいかも」とい思ってしまうことです。

学習者は次の3つを認知して意識や行動を変えることが求められます。

  • 自己観察:自身の学習行動を客観視すること

  • 自己判断:目標と実態を比較して調整すること

  • 自己反応:結果への反応を調整すること(過剰に悲観的にならない、何かのせいにしない、因果関係で正しく結果を直視する、など)

行動を起こす前に、やればできるという効力予期を感じられることを自己効力感といいます。なので自己調整のためには、この自己効力感を高められることが重要です。

では次にどう行動するか、3つの側面を紹介します。

メタ認知を使うこと

1つめはメタ認知です。これまでもたびたび登場しているメタ認知ですが、ここでは活動と知識について分けます。活動では、自分の考えの矛盾に気づいたり、特性を把握してからどうするかを決めるような認知の仕方。知識は、一度にたくさんは覚えられない、具体例を交えよう、などどうすれば学習効果が高まるかを考える認知の仕方です。

メタ認知をしていても自発的に使うのは難しいものです。スキルを柔軟に応用することができなかったり、いつ活用すればよいのかわからない、余裕がなく新しいスキルを使えないといった状況はよくみられます。

メタ認知を促すために例えば、Learning by Teachingという考え方があります。教えることで学習度を知る、言い換えると教えられないとまだ十分に理解できてないことに気づかせるという方法です。

他には文脈があります。何か具体的な事例と結びつけて考えさせたり(文脈化)、逆に限定的な事象だけでなく本質的な構造を見抜かせる(脱文脈化)という学習を繰り返すことで、メタ認知が促進されます。

こういったことは、なかなか1人ではできないので、誰かと一緒に学ぶことは、自己調整効果を高めるために効果的な学習方法です。

動機づけを自覚すること

動機づけで有名なのはマズローの5段階欲求(6とも言われる)です。まず学習者が不安を感じずに学習できる環境を整えることが大事なので、クラスが寒いとか雰囲気が悪いとかは先に対策すべきことです。

そのうえで、内発性と外発性の動機を分析します。行動経済学でもアンダーマイニング効果でこの点はまとめたことがあるので見てみてください。

今回あたらに学んだのは内発性と外発性は二項対立ではなく、グラデーションになっているということです。『教育心理学の最前線』によると、このような分類化がされています。

  • 外的(お母さんに叱られるからやらないと)

  • 取り入れ的(学校で馬鹿にされたくないからやらないと)

  • 同一化的(自分の将来に必要だからやらないと)

  • 総合的(自分の価値観と一致しているからやろう)

  • 内発的(おもしろいからやろう)

この中で明確に分ける軸があるとすると、内発性は自分の意思でやめることができるという点です。自己決定理論によると内発性動機付けは、有用性欲求(できるようになりたい)関係性欲求(認められたい)自律性欲求(自分の意思で決めたい)の3つで構成されます。

100%内発性だけで学習することは希少だけど、どうすれば内発性側に寄せられるかが、教える側も学ぶ側にも大事な視点です。

行動と認知をセットにする

最後に行動することですが、漫然とするのではなく行動に仕組みを取り入れることがポイントです。

例えば、To Doリストをつくって自分の期待どおりの行動ができていたかを可視化すると、自身を客観的に評価して目標とのズレや改善につなげることができるので、自己調整学習のサイクルをまわすことができます。

学んだこと

2020年ごろから文科省や教育機関より、学び方を変えていかなければという提言や施策が出てきています。

これまでは「何を学ぶか?」に焦点が当たっていたけど、これからは「学んだことを活用して何ができるか?」を重視する考え方です。その中で探求学習だったりSTEM教育や創造性のようなキーワードが出てきますが、そのためには学習者自身の自己調整が重要になります。

なぜか。これからの学びは正解が用意されているわけではないし、テストの点数だけで測れるものはなくなります。そうすると、自分に対する評価は学校などのシステムからもらうものでなく、学習者自身で自分を評価することが求められるからです。

そういった意味で自己調整学習は創造性学習と深いつながりがある、ということを学べたのが今回の収穫です。

今日はここまでです。


デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。