DesignRethinkers

Design Rethinkersは、デザインの未来を探る研究者と実践者による活動団体…

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Design Rethinkersは、デザインの未来を探る研究者と実践者による活動団体です。メンバーは、紫牟田伸子(編集家)、角めぐみ(NPO法人ハナラボ代表理事)、水内智英(京都工芸繊維大学准教授)、依田真美(相模女子大学教授)。

最近の記事

システミックデザインで重要なのは「協働」「視覚化」「推論」である

システミックデザイン(Systemic Design)という言葉が日本でも広く聞かれるようになってきた。同時に、誤解が多いのも事実である。今後の健全な発展のためにもこのタイミングで、システミックデザインとは何か?わかりやすくその基本をまとめたい。 複雑な課題にアプローチするための手法 システミックデザインは、システミック(包括的)に対象とするものごとを捉える、関係的な視点に基づいたデザインアプローチである。ではなぜ関係的で包括的な視点に立ったデザインが重要視されているのか

    • システムをシフトするためのデザインとは

      間をおかずに出されたもう一つの報告書 英国デザインカウンシルは2021年に『Beyond Zero:システミックデザインアプローチ』(こちらの記事でも紹介しています。)を発表し、システム思考とデザイン思考を融合させ、関係的視点から統合的にアプローチするための方法を示した。そして、間をおかずにもうひとつの報告書を発表した。それが今回紹介する『System-shifting design: An emerging practice exploerd(システム・シフティングデザイ

      • 複雑な時代を拓くデザイン実践へのアプローチ 〜システミックデザイン

         英国デザインカウンシルによる報告書『Beyond Net Zero: A Systemic Design Approach』に関するシンポジウム「複雑な時代を拓くデザイン実践へのアプローチ 〜システミックデザイン シンポジウム」(2023年4月25日 18:30〜20:00)の様子を報告します。  システミックデザインアプローチは、デザイナーやノンデザイナーがより包括的に社会技術的問題へ取り組むためのデザインアプローチです。報告書では、異なる専門分野の人々やコミュニティが

        • フェミニズムとデザイン【3】 from "Design Struggles"

          前の記事:フェミニズムとデザイン【2】 DESIGN JUSTICE:デザインの理論と実践のためのインターセクショナルフェミニスト・フレームワークに向けて著者のサーシャ・コスタンザ=チョック(Sasha Costanza-Chock)は、コミュニケーションの研究者、参加型デザイナー、活動家であり、マサチューセッツ工科大学の市民メディアの准教授である。本論文は、「DESIGN JUSTICE」のアプローチを発展させ、幅広い分野にわたるデザイン理論や実践の指針となりうる、より広

        システミックデザインで重要なのは「協働」「視覚化」「推論」である

          フェミニズムとデザイン【2】 from "Design Struggles"

          前の記事:フェミニズムとデザイン【1】 家父長制の中でつくられたもの:女性とデザインの研究(あるいは再研究)について著者のシェリル・バックリー(Cheryl Buckley)はデザイン史家であり、現在はブライトン大学名誉教授である。本論文は、バックリーによる1986年の論文『Made in Patriarchy:女性とデザインに関するフェミニスト的分析に向けて』[9]の議論を振り返り、当時の命題が今日でも有効であるかどうかを問うものだ。 当時の論文には4つの重要な命題があ

          フェミニズムとデザイン【2】 from "Design Struggles"

          フェミニズムとデザイン【1】 from "Design Struggles"

          はじめにデザインの中心にいるのは誰だろうか。誰がつくるものを決め、誰がそれを評価しているのだろうか。誰が排除されてきたのだろうか。現代のデザインは、主に北半球の白人・男性・シスジェンダー(性自認が生まれたときに割り当てられた性と一致している人)によってつくられてきた。パパネックによれば、デザインは「人間の活動の基礎」[1]である。実際に私たちは、人種や性別を問わずさまざまな場面でデザインしている。しかし、歴史に残るものや評価されるものには偏りがある。なぜだろうか。私たちは、規

          フェミニズムとデザイン【1】 from "Design Struggles"

          根本から変化を起こす「システミックデザインアプローチ」_03

          前回の記事では、システミックデザインフレームワークの5つのパートのうち、①オリエンテーションとビジョン設定 ②リーダーシップとストーリーテリング ③つながりと関係性 ④旅の継続について説明した。 前回の記事はこちら この記事では、中央のダブルダイヤモンドが示す、デザイン活動を紹介する。ダブルダイヤモンドは、2004年にデザインカウンシルで発表され、世界的に知られているデザイン活動のフレームワークである。新しいダブルダイヤモンドは、システミックデザインを前提として再定義されて

          根本から変化を起こす「システミックデザインアプローチ」_03

          根本から変化を起こす「システミックデザインアプローチ」_02

          前回は、英国のデザインカウンシルが提案するシステミックデザインアプローチの概要について説明した。 システミックデザインの指針となるの6つの原則や4つの役割、デザインプロセス全体に通底する4つの実践思考について述べた。 前回の記事はこちら この記事では、システミックデザインのデザインプロセスを紹介しよう(原文はこちら:Systemic design approach 2021)。 プロセスには、次の5つのパートがある。 ORIENTATION AND VISION SET

          根本から変化を起こす「システミックデザインアプローチ」_02

          根本から変化を起こす「システミックデザインアプローチ」_01

          人と自然を含めた関係性のデザイン 問題を成している背景が非常に複雑であり、これまでの単純な因果関係にもとづいて解決を見出すことができないような社会課題、たとえば地球環境問題に代表されるような「厄介な問題 / Wicked problem」に対して、デザインはどのようにアプローチすべきだろうか。そこで重要視されるのが対象と関係している社会的、技術的、経済的な各要素間の関係性であり、関係全体をシステムとして捉えることだ。さらにいえば、これまで周辺的な要素に留められてきた、自然環

          根本から変化を起こす「システミックデザインアプローチ」_01