制約のあるデザインの要求に上手く答えられません〈#デザイナーのお悩み相談〉No.008
こんにちはこんばんは、スズキアユミです。
今回お手紙をくださったのは、10年ほどDTPデザインをされているというグラフィックデザイナーさんです。クライアントから支給される素材のクオリティが低く、その扱いに悩んでおり、何か良い対策はありませんか?とのことでした。
デザイナーのみなさんなら「あるある〜!」と頷く内容ですね・・!
さっそく私ならどうしてるかなとお話しする前に、相談者さんから頂いたお手紙の冒頭で「デザイナーと自称できるほどの仕事ができてないと日々感じています」と書いてありまして、そこはスルーできませんよ〜!
「そんなことないですよ!自信を持って!」と私が言うのはとても簡単なことですが、ぜひご自分のためにデザイナーをしっかり自称してみて欲しいのです。よく言霊といいますが、じつは自分への影響が大きいんですよね。
こんな名言があります。
思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。
言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。
行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。
習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。
性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから。
Be careful of your thoughts, for your thoughts become your words;
Be careful of your words, for your words become your deeds;
Be careful of your deeds, for your deeds become your habits;
Be careful of your habits; for your habits become your character;
Be careful of your character, for your character becomes your destiny.
有名なものなので耳にしたことがあるかもしれません。
自分の言葉って行動に無意識にもつながってしまうのですよね。
今回のご相談にもつながる話だと思うので、そのまま続けてしまうのですが、仕事ができるデザイナーってどんなデザイナーなんだろう?というのを考えてみたいなと思いました。
『どんな要求にも100%答えられて、素晴らしいアウトプットを出せる』
おそらく、相談者さんの”できるデザイナー”像はこんな感じなのかなと勝手ながら想像します。理想像は人それぞれなので、スズキはこんな違った理想だよなんて話は今回しません!私は相談者さんの視野が広がる、ちょっとしたお手伝いができればと思ってます。
要求を100%引き出して、本当の100%に導く
クライアントからの要求を100%叶えるには、逆を言うと、ちゃんとクライアントの100%を引き出して、かつ導く必要があります。
なぜなら、クライアントはデザインについては、あなたより遥かに素人なのです。どういう工程で、どのぐらい大変かなんて、実際に手を動かして作業したことがある人にしかわかりません。
目も肥えていません。今回の相談者さんの例でいえば、自分で支給した写真のクオリティが低いのすらわからないのです。(わかりやすいように極端に言ってますが、相手のデザインリテラシーを見極めるのも結構大事だったりします。)
ここで面白い風刺画をご紹介します。
顧客が本当に必要だったものとは (コキャクガホントウニヒツヨウダッタモノとは) [単語記事] - ニコニコ大百科 より
元ネタは海外のもので、現在の最新版はこちらになります。
いわゆる、クライアント(顧客)が最初に求めたものから、いろんな過程を経たり誰かが想定したりするのですが、最終的には本当に必要だったものは違かったという画です。
クライアントだけでは「本当に必要だったもの」の100%に近づけないからこそ、我々デザイナーに依頼がくるのです。
だからこそ、「え〜こんな写真使えないよ〜」と文句を言って終わりではなく、クライアントが理解しやすいように、写真などの素材のクオリティが低いことを伝えることもデザイナーとしてとても大事なことではないかと私は思うのです。
デザイナーだからこそ、作って見せられる強み
素材がそれしか使えないという制約は結構発生しがちです。だからといって、口頭だけで「クオリティが低いから上手くデザインできません」では相手も納得しないでしょう。
そして、自分自身も納得できないでしょう。自分の腕が足りないだけかもしれない、もっとできるデザイナーはこれぐらいのこと上手くこなして素晴らしいデザインを作っているはずだ、と。
だからこそ、手を動かします。なんてったって、作れるのがデザイナーの強みです。活かさないなんて勿体ない!
今回相談者さんから頂いたものを例にすると、
(A)クオリティの低い写真を、大きく使った場合のデザイン
(B)クオリティの低い写真を、小さく使った場合のデザイン
(C)別のクオリティが高い写真を使った場合のデザイン
と、3パターンを実際に作ります。
この目的はクライアントと会話を発生させ、クライアントに知識をつけてもらうことです。
この写真を大きく使うと、ほら全体的にクオリティが低くなっちゃうでしょ?(A)
でも、ちゃんとクオリティの高いもの(C)を使うとこんな見た目になるんだよ。
写真が小さい(B)と、いまいちこういう理由で魅力を伝えられないと思うんです。どうでしょう?
などなど。
対話が生まれることで、別の素材を用意する可能性が生まれたり、別の方向性が生まれたりします。ここで作ったものはボツになるかもしれません。でも、それだけの価値はあると思いませんか?どうでしょう?
あと、手を動かしてるとアイデアが生まれて、D案やF案が出てくることも結構あります。実際に作ってみることで、自分でも細かな問題が見えてくるんですね。
(3案も作ってる時間がない?でも、クライアントのデザインリテラシーを最初から把握して、スケジュールを引いて置くこともできるはず。スケジュールを引くのが自分じゃないなら、ちゃんと相談します。そして、クライアントのリテラシーが低いなら、私はその分のお金もちゃんともらうようにしてます。リテラシーが低いことは悪いことじゃないです!知らないだけだから、教えてあげる。覚えてもらう。そうすると次からの依頼はさらにお互いにスムーズに。と好循環も生まれます!)
協力を前提としたデザイン工程
もしかしたらクライアントと直接やりとりする立場にいないこともあるかもしれません。それでも、自分の代わりに誰かがクライアントと会話をするので、それを見据えて、間に入っている人ともやりとりをします。
プロジェクトにいる誰しもが「本当に必要だったもの」に辿り着きたいはず。だからこそ、みんなに協力をお願いする姿勢はとても大事だと私は思っています。協力をお願いの仕方もデザイナー目線のままではダメだったりします。上の風刺画の途中の段階と同じですね。なので、意外と自分でもたまにはデザイナーさんに依頼してるのも結構良いですよ!
あと、協力をお願いしたのに周りが協力してくれなかったら、「クオリティが低いままのデザインは自分のせいだけじゃない。今回はここまでだった」と割り切ることもできますしね。
他のところでも私がよくお話ししているかもしれませんが、『デザインは自分一人だけの作品ではない。一人では完成できない』ことを、よく肝に銘じておくと最初は受け入れがたいかもしれませんが、段々と気持ち的にも楽になると思いますし、取り組む姿勢も変わってくると思います。
最後に、失敗してもいいんだよ
全然「こんなに写真のクオリティが低いことも何故わからないんだ?」って思っちゃってもいいんです。事実ですし(笑)
でもだからこそ、その上で、本当にクオリティの高い写真を使えば自分は良いデザインが作れるのか?わからない・自信がないなら作る。写真のせいじゃなかったらそれを受け止めて、へこたれず別の問題を探ってみる。試す試す試す。これやったら、やっぱり写真のクオリティ関係あったわ。試す試す試す。
デザインはそんな試行錯誤の繰り返しだと私は思うのです。
きっと、そんな実験のような過程を楽しむには、「へへ、私間違っちゃった〜!」という、自分も完璧でないことを受け入れて、間違えた自分を許してあげる、そんな素直さと身軽さが、相談者さんの気持ちも楽にしてくれるような気がします。いろいろ試すなら失敗はどうしても付き物です。
デザイナーとして失敗したくない。プロとしてしっかり要求に答えたいという、あなたの素晴らしい心持ちが、裏目に出てしまっているのかもしれませんね。
相談者さん、相談者さんと同じような悩みを持つ方も、デザインをもっと楽しめるようになりますように!楽しもう!
Special thanks:
今回お手紙を下さった m様
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