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【イベントレポート】デザイナーが活躍できる環境づくりとは?-前編-

今回は、「Uzabase DESIGN WAVE」の一環として、株式会社グッドパッチが運営するデザイナー特化のキャリア支援サービス「ReDesigner」とともに2021年11月に開催されたトークイベント「SaaS事業3部門集結。ユーザベースが取り組むデザイナーが活躍できる環境づくりとは?」をレポートします。

イベントでは、現在約500社のデザイナー採用を支援する「ReDesigner」の石原仁美さんをファシリテーターに迎え、B2B SaaS事業 執行役員 CDOの平野友規、SaaS Design Divisionの茂木孝純、進藤かさね、廣田奈緒美ら各プロダクトに所属するデザイナーが登壇。

CDOがいる環境でのデザイン組織の魅力やチームづくり施策など、さまざまなバックグランドを持つデザイナーたちが活躍できる環境をどのようにつくっているか、現場のリアルを語り合いました。イベントの内容を前後編の2回に分けてお届けいたします。

第1部:CDO平野によるライトニングトーク

ユーザベースが取り組むデザイナーが活躍する環境づくり

平野: ユーザベースのデザイナーはこれまで、SPEEDA、FORCAS、INITIALといった各SaaS事業で別々に存在していましたが、2020年4月に統合してSaaS Design Divisionとなりました。

その後、2021年にはDESIGN BASEとしてさまざまな発信を開始したのですが、コロナ禍も相まって、そこに至るまでにさまざまな課題がありました。

抱えていた課題は大きく4つです。1つ目が「デザイン組織の組織責任者(平野)がポンコツだったこと」、2つ目が「デザイン組織の認知度が社内外に対して低かったこと」、3つ目が「デザイン組織の評価制度にフェアネスが感じられなかったこと」、4つ目が「デザイン組織の働き方に不安がいっぱいだったこと」です。

組織課題に向けた取り組みは「自分自身を受け入れる」ことから

2020年4月の組織統合以降、メンバーから私へのフィードバックとして、「話し方が偉そう」「話を聞いてくれない」「1人ひとりに向き合っていない」といったことを言われました。こうした問題を、デザイン組織を任されて初めて自己認識したのです。

この課題を解決するには外部の手を借りるしかないと思い、自腹でコーチング型マネジメントを学びました。当初はコーチングによってメンバーの行動を変えていこうと考えていたのですが、一番の学びだったのは自分自身を変えなければ相手との関係が変わらず、行動変容を促せないということです。

自分が変わると、相手との関係が変わる。相手との関係が変わると、相手の行動や態度が変わってきます。相手の行動や態度が変わることで、組織が変わっていく。自分たちで理想とする環境をつくることができるのです。

また、デザイナーの中にもいろんな価値観を持った人がいることを学びました。私自身は情熱駆動型デザイナーで、やる気のあるなしですべてを測っていました。コーチングを学んだことで、共感型支援デザイナーや論理分析型デザイナーなど多様な価値観や関わり合いをするデザイナーがいることを知りましたね。

こうした取り組みは現在も引き続き行っており、徐々にメンバーからも「平野が変わった」という声をいただくようになりました。組織課題の一番の問題は、私自身のよいところ、悪いところをすべて受け入れるところからのスタートだったと思っています。

情報発信と構造化面接で社内外の認知度を上げ、採用の精度を上げる

組織としての打ち手の話ともつながるのが、社内外におけるデザイン組織の認知度の低さの問題です。

具体的には、たとえば全社資料の中でデザイン組織だけが触れられていなかったり、NewsPicksは知っているけど、ユーザベースが何をしている会社かわからないと言われたり、採用で他社のミドルベンチャーやデザイン会社に負けてしまったり。採用におけるミスマッチの問題もありました。

解決策として、ユーザベースは事業体が複雑なので、イメージ戦略上デザインチームを切り離してDESIGN BASEという固有名称をつけました。DESIGN BASEの公式サイトを開設して、毎週noteで情報を発信しています。

上図はDESIGN BASEの理想の姿です。DESIGN BASEをイケてるデザイン組織にする。クオリティの高い成果物を発信することで、反響や信頼を得る。それを求人応募につなげていく。そんなサイクルが生み出せたらと思っています。

メンバー全員でコンピテンシーマップを作成、納得感を持って評価できる仕組みに

「デザイン組織の評価制度にフェアネスを感じない」というのは、具体的には、平野からの一方的な評価に納得感が湧きづらい、平野が担当してない案件をどう評価してよいかわからない、UIデザイナーである平野がBXデザイナーを評価してよいのかといった問題が挙げられます。

評価における「7つのステップ」

こうした背景から、上図のように評価における「7つのステップ」を取り入れました。

まず、3ヶ月に一度必ずポートフォリオを制作します。デザイナー全員が何をして、何を学んで、どんな成長が得られたかを発表します。

また、コンピテンシー評価も大事にしています。コンピテンシー評価は、縦軸がデザインコミュニケーション力などの評価項目、横軸がレベルになっています。ドラクエの回復系呪文で例えると、ビギナーは1人のHPをちょっと回復、ジュニアは1人のHPをまあまあ回復、ミドルは1人のHPをすべて回復、というようにレベル分けをしています。これを項目ごとに非常に細かく書き出して、何をどう評価しているかを明確にしました。

お互いの評価は通信簿で見られるようになっています。ほかの人がどこを評価してくれたかは数字で表しています。1人が評価してくれた場合はその項目に「1」が、3人が評価してくれた場合は「3」がつきます。通信簿を見ることで、自己認識と他者からの認識のずれが可視化されます。

このように、平野からの一方通行だった評価をシニアデザイナーによる複眼での評価に切り替えました。また、自分たちでコンピテンシーマップをつくってもらい、納得感を持って評価できる仕組みを整えました。そして、通信簿による自己評価と他者評価を可視化することで自己認識を高めることに取り組んでいます。

「協働的目標」を定めて働き方への不安を払拭

「デザイン組織の働き方に不安がいっぱい」というのは、コロナ禍におけるリモートワークで一体感がなく、お互いに何をやっているのかわからなかったり、デザイン組織のキャリアパスを描けていなかったり、そもそも働きすぎであるといった点です。

組織とは、特定の目標のために集まっている人の集まりと定義されます。目的がなければ組織ではない、つまり、バラバラなものを何らかの目的でつなげることがポイントなのです。

組織について、1961年に社会心理学者のM.シェリフが「泥棒洞窟実験」という実験をした結果、人はグループにわけると対立してしまうことがわかっています。だからこそ、協働的目標をつくって対立を避けなければならないのです。

朝会やレクリエーション、飲み会は、それだけでは組織を一体化させるためには弱く、やはり協働的目標をつくって組織で推進していくことが大切です。まず協働プロジェクトをつくって組織で取り組む。朝会やレクリエーションはあくまで援護射撃です。

振り返ってみると、2020年4月にデザイン組織を任された当時は目的がなく、デザイナー個々がバラバラな状態でした。この問題を解決するために、デザイン組織のビジョンを考えるワークショップをしました。ワークショップを通じて『DESIGN FORWARD』というビジョンを策定しましたが、そこからデザイン組織の空気が変わりましたね。

ただ、ビジョンは一度掲げて神棚に上げてしまうとモメンタムが下がってしまうという問題があります。モメンタムを下げないために、目的を常に意識するための工夫をしています。3ヶ月に1回ポートフォリオのプレゼンをする中で、DESIGN FORWARDとは何か、自分の言葉で発表してもらうのです。ビジョンについて、メンバーがお互いにどう解釈しているのかを通じて、次のクオーターに向かっていくことを大切にしています。

協働的目標はオンライン・オフラインで一緒にやらなければ達成できないプロジェクトを何本もつくってきました。レクリエーションの観点からは、毎月1回DBDay(DESIGN BASE Day)を設けて、ユーザベースが大切にしている価値観を交換し、バリューを高めて学び合う時間をつくっています。

上図は共同的目標の実施例です。これらは会社として掲げるOKRの中に組み込み、正式な仕事として取り組んでいます。

デザイン組織は上図の6段階を経てデザインしました。

まずはビジョンをつくる。ビジョンの実現に必要なデザイナーの力をコンピテンシーマップで分解する。コンピテンシーマップで分解されたデザインの力に対して、日々の目標設定をする。目標設定がされているからこそ、フィードバックサイクルがうまく回り始める。フィードバックサイクルが回り始めると、自己認識力が高まっていく。自己認識力を高め合うことでお互いを理解し、心理的安全性が働き始める。

そうすると、みんなが伸び伸びと働ける環境ができあがります。

ユーザベースが取り組むデザイナーが活躍する環境づくりは、私自身が変わること、相手との関係を変えてメンバーの行動変容を促し、組織が変わっていく。そして行動目標のために横断型プロジェクトを正式な仕事としてやっていくことで共同体になっていくことだったのではないかと思います。

自分たちの理想の環境は、自分たちで自由につくっていく。それがSaaS Design Division ‘DESIGN BASE“だと思っています。

前編はここまでです!
後編のトークセッションでは、DESIGN BASEメンバーのリアルな声や
取り組みをご紹介します。

株式会社グッドパッチが運営するデザイナー特化のキャリア支援サービス「ReDesigner」さんはこちらです。


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