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【節税】法人化のタイミングと手続きまとめ

フリーランスにとって法人化というのは常に視野に入れている選択肢だと思いますが、田淵宏明さんの『日本一わかりやすい ひとり社長の節税』という本が本当にわかりやすかったので備忘録がてらご紹介したいと思います。

結論:所得300万円が法人化の検討ライン

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*売り上げ400万円、経費100万円、所得(利益)300万円
*法人は倒産防止共済100万円、非常勤役員給与100万円、役員報酬100万円で利益を0にした場合

書籍では個人事業主の社会保険料と記載されていましたが、5人未満の会社であれば加入義務がないので、一人社長であれば国民健康保険と同義です。

参考:初期費用 個人事業主vs株式会社vs合同会社

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法人税などは変わらないので、合同会社か株式会社か決めるのは『信用』と『コスト』を天秤にかけて決定します。

会社設立スケジュール

STEP1 事業プランや登記事項の決定
    会社名・事業目的・決算期・資本金額
STEP2 印鑑作成
    角印・実印・銀行印
STEP3 定款と登記書類作成
    freeeや やよいなどのソフトか司法書士や行政書士に依頼
STEP4 定款承認
    公証人役場でチェック
STEP5 資本金払い込み
STEP6 設立登記申請
STEP7 登記簿謄本と印鑑証明の受領

時間に余裕があれば自分で、なければ依頼するのが早いです。その際、司法書士と税理士にセットで相談するのが良いです。

決済日の決定ポイント

下記のルールに則れば、3月を除く月の2日ということになります。

1. 消費税の免税を受けるために一期を12ヶ月に限りなく近づける(5月に登記するなら4月が決済)
2. 法人住民税均等割の節税のために設立日は1日ではなく2日以降〜(5月1日ではなく5月2日。1日だとその月も均等割に含まれて+5,900円の税)
3. 節税計画を狂わせないため、繁忙期を期首にする。(期末に大型受注が入ってしまった!とならないため)
4. 納税期限(決済から2ヶ月以内)に資金残高が豊富になるように逆算
5. 会計事務所の繁忙期を避けるため3月決算は避ける

資本金の決定ポイント

結論、100万円-1,000万円未満で出せるMAX額がよいです。できれば300万円以上。(=昔の有限会社の下限)100万円以下だと信用度が低いようです。(こちらは著者の印象ベース)

1. 1,000万円以上だと2年の消費税免税がなくなってしまう
2. 資本金額と信用度が比例するので多いほど融資も受けやすくなります。

参考:4年落ちベンツは節税になるか
経費の話で良く聞きますが、結論『YES』。
初年度で見れば4年落ちの中古車は500万円が経費になるのに対して、新車は同じ500万円でも6年間の償却期間で初年度に経費として計上できるのは166.5万円です。
ただし、最終的にはどちらもトータル500万円なので、修理費などの出費を考えるとどうかという意見もあります。

節税ノウハウ

1. 役員報酬
 役員報酬(給与)は所得控除の対象になります。162.5万円以下で55万円、850万円以上で195万円。その間の控除額は概ね給与額に比例します。定期同額である(毎月同じ日に一定金額)ことと、不相当に高額でないことが要件です。また、社長の賞与は経費に含むことができません。(事前確定届出給与を活用すれば可能だが、給与日と給与額が完全一致しないとだめ。)
さて、役員報酬はどのくらいが最も節税できるかというと、下記の表のように会社利益と役員報酬が半々くらいになるのが最も節税効果が高い場合が多いです。
*社長の年収のMAXは2000万円=税負担35.3%で、法人税のMAXと同額になります。

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2.『赤字の繰越』の活用 
個人事業主3年→法人10年 になります。

3.『確定債務』の活用
 ポイントは『債務が確定している』のと『年度内にサービスの提供が完了していること』。 
 例① 例えば固定資産税の納付書が4月に届き、5,7,12,2月に4期で納付書が届き決算が10月だった場合、12,2月分は支払いしていなくても経費としては確定して良いです。
 例② クレジットカード決済をした時点でサービスの提供を受けて債務が確定しているので、この決済日に経費として計上して良いです。

4. 家族で所得分散
 a.一般の従業員として
  雇用契約を締結し、出勤簿の管理が必要となるのであまりお勧めはできません。経営に関わっていればみなし役員になるが、賞与は経費計上されないからです。
 b. 常勤役員
  社会保険の加入義務が出るのと、年収150万円以上になれば扶養に入れなくなります。
 c. 非常勤役員
  こちらが一番お勧めです。社会保険料に加入させる必要がないのがメリット。ただし、経営に関わっているという実態が必要です。

5. 決算日変更
 あくまで経営上の理由が必要だが、大規模受注があり決算日に近かった場合、当期か次期か利益算入の期を選べるということです。租税回避行為と思われないように、1回限りの必殺技と考えておきましょう。

6. 生命保険
 解約返戻率が50%以下、もしくは50%-70%で年額30万円以下の掛け金の場合、経費計上割合を100%にすることができます。返礼金は退職金に充てれば優遇措置が受けられ税負担が軽くなります。解約と退任のタイミングを合わせるのがポイント。なお、養老保険も1/2の経費計上できるが、全社員加入が必須となります。

7. 小規模企業共済&iDeco(企業型401K)
 小規模企業共済は政府系の独立行政法人「中小企業基盤整備機構」が運営しているため安全性が高いです。MAX7万円/月 の掛け金分が全額控除されるので節税メリットが大きく、解約時も退職金扱いとなり課税が少なくなります。(解約時に15年以上の利用、65歳以上である、一括受け取りが条件となります。)役員報酬と組み合わせることで法人税と個人の税金両方を節税することができます。なお、掛け金の減額は比較的容易であるようです。
 個人型はiDeco、法人型は401Kと呼びます。個人事業主であればMAX6.8万円掛けられ、法人だと5.5万円になります。会社としては一度加入するとやめられないですし、個人としては60歳までは引き出し不可であるので、キャッシュフローを考える必要があります。
 例えば1200万円の給与の一人社長が5.5万円の掛金でiDecoと401Kをそれぞれ運用した場合、下記になり、企業型の方がメリットが大きいことがわかります。

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なお、小規模企業共済と401Kは併用できます。キャッシュフローが潤沢であれば、MAXで個人として7万円+2.3万円(年額111.6万円、2.3万円は401Kの時の個人のiDeco最大額)、法人として5.5万円(年額66万円)が控除できることになります。

8. 出張旅費日当
 
出張に対する特別手当を支給でき、かつその支給金額は個人の課税対象とならないものです。つまり、法人から個人に非課税でお金を移転できるということです。条件として
①出張旅費規定を備えて日当金額を明記すること
②不当に高額ではないこと
が必要です。他社の規定等を見て、距離で決めるなどさまざまなようですが、目安としては5,000円程度です。

9. 自宅・賃貸の社宅化
 
会社名義で自宅を購入・もしくは賃貸契約を結ぶことです。例えば10万円の家賃であれば、会社負担5万円、個人負担5万円とします。(家事按分の具合に。)個人、法人両方で節税ができるので個人でよりも節税メリットが大きいですが、住宅ローンを利用できないのが問題です。事業用融資を受ければ大丈夫ですが、個人よりは若干ハードルが高いです。

10. 倒産防止共済
 月額5,000円~20万円まで自由に掛け金を設定でき、40ヶ月継続すればその後100%返戻されます。そして取引先が倒産した際に、掛金総額の10倍の額の融資を無利子で受けられます。(最大8,000万円。ただし、10%が控除されるので実際は8,000万円借りると800万円が持っていかれます。。)また、前納制度で一括納付ができ経費算入が可能です。
 解約時の返戻金は雑所得にカウントされてしまうので、簿外資産としてプールしておき、赤字決算期に解約するのがポイントです。
 注意点としては、設立2年目からしか加入できない点と、法人税申告書の別表10(6)を添付しないと経費にカウントできない点です。

11. 会社規模拡大は『業務委託=正社員の外注化』で
下記4つのメリットがあります。

① 労働基準法等の雇用リスクの回避
② 社会保険料会社負担分の削減
③ 消費税の節税
④ 源泉徴収税額の計算がシンプルに

③について、給与は課税対象外ですが、業務委託なら課税仕入であるということです。ただし、業務委託であるという実質性を保障するためには、「会社への専属性」「勤務場所の指定」「勤務時間の拘束」などがなく「報酬の算定根拠が案件ごとである」といった形態が必要です。

社長の退職金を節税しながらMAXに貯めるには

加入優先度順に下記となります。

生命保険
小規模企業共済
倒産防止共済
iDeco&401K
その他投資

それぞれの特徴をまとめておくと

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401KとiDecoは解約できなかったり60歳以上でないと解約できない点で、キャッシュフローの柔軟性に欠けるのが優先度が低い理由でしょう。
生命保険、小規模企業共済、倒産防止共済はいつでも解約できますが、生命保険は目的が「保険」なので積み立てをしながら保険としての機能も備えている点が優秀です。

とはいえ、積み立てを重ねても退職金として不相応に高額であれば認められず雑所得になってしまいます。相応な退職金の金額は下記です。

最終役員報酬月額 × 在籍年数 × 功績倍率

*功績倍率はおおよそ代表取締役=3倍、専務2.4倍、常務2.2倍...と相場が決まっているが、業種や過去の会社実績なども鑑みなければいけない。

この退職金にかかる税金の計算は下記。

(退職金額ー退職所得控除額)× 1/2 × 税率(15-55%)

*退職所得控除額は勤続年数1年あたり40万円で、20年越えの場合は年70万円となる
*他の所得と合算の必要がないため税率が低くなりやすい

これを年金で受け取ろうとすると。

(年金収入ー公的年金控除額)× 税率(15-55%)

*控除額は65歳以上で年所得330万円以下で120万円

一概にどちらが高くなるかはいえません。計算してみてよりお得な方を選択するのが良いです。とにかく退職金は通常の給与と比べて税金の待遇が非常に良いのがポイント。下記の表を見ると明らかです。

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最後に、筆者は「過度の節税は破滅の元」という金言を残しています。利益が出過ぎた=相殺しなきゃ! と無駄な経費を使う経営者は多いということでした。しかし、それでは本末転倒。強い会社はキャッシュが潤沢であることが求められます。

そう考えると、積み立て可能な上記の節税対策をまずは徹底し、利益が出たら税金をしっかり払って社会に貢献する、という心算で経営するのが健全ですね。

以上、節税関連の備忘録でした。著書におすすめの生命保険は記載されておりませんでしたので、色々と探してみることにします。

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