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Panasonic 電動アシスト自転車 Piatto

香川大学のPBL(プロジェクト ベースド ラーニング)という授業では企業と一緒に課題にするのですが、私のPBLでは、Panasonic サイクルテック様とテーマにしたのは、新型電動アシスト自転車です。

国内の電動アシスト自転車市場は、パナソニック、ヤマハ、ブリヂストンの3ブランドでほぼ占められている状況でありますが、その中でもトップシェアをキープし続けているのがパナソニックです。

その強いところをさらに強化すべく力を入れています。

電動アシスト自転車は、通学で高校生が多く乗っています。また子持ちのお母さん世代も多く乗っています。つまり18歳までと20代後半の子育て以降がユーザーとしては多く、大学生だけが空白地帯になっています。

しかし、京都市立芸大(移転前の沓掛校舎)ではすごく多かったのを見ました。何故なのか?大学の近くに坂があるからです。

駅前に大学の移転が相次いでいますが、国公立大学は不便な場所にあることが多く、そこに通う女子大学生をターゲットに設定しました。

PBL参加学生はみな、電動でない自転車に乗りつつも、自転車のことをよく知らない5人のメンバーで、大阪まで工場見学に行ったり、駐輪場で自転車観察をしたりするところから始めました。

今回目指したのは、先進的・未来的なデザインではなく、10年以内のほんの少し未来に実現できそうなリアリティー。かといって、今の自転車に毛が生えた程度にならないように。という落とし所のバランスを見極めるのが指導する私の力量だと思っていました。

「スカートでもまたぎやすい」ということは決めていましたが、フレームのデザインで大きく勝負が決まると思っていました。


学生みんなでフレーム案を出し合いましたが、変な形は簡単に発想できます。

しかし、構造も同時に考えないといけません。プロが見ればこれは大体いけるとか、無理だろうというのがわかりますが、素材のことがよくわからない学生はなかなかわからないもので、暗中模索です。

学生にとっても、普通すぎない良いバランスのフレームを考えるということが非常に難しかったと思います。

最終、2案に絞りました。1つは大きな円断面で横から見ると、大きな円弧を描くフレーム、もう1つは、断面が平たいフレームで横から見ると直線的で薄いデザインというアイデアが面白いと思いました。

スタイロで原寸モデルも作って、またぎやすさ、ボリューム感なども検証しました。ほとんどプロダクトのスタディ模型を作らない香川大でこれは是が非でもやりました。

円筒のパイプから作ることが主流で、普通はやらないし発想もしないのですが、この平たい断面によってデザイン的に特徴あるものが打ち出せると思いました。

大枠は決まって、そこからディテールのブラッシュアップです。パナソニックのモーターユニットはペダルのあるクランクに付いているため、その周囲のデザイン自由度は極めて低いです。フレームとの取り付きなどはかなり難しかったです。バッテリーはフレームの下に添わせて入れることでかなりスッキリと入りました。

Piattoは、イタリア語で「平らな」という意味。


カゴもデザイン上大きな存在感があると思いました。学生がリュックや買い物袋を入れるのに十分な容量でありながら、高さを抑えて、スタイリッシュな造形にするのにやや苦労しました。


他にも、操作パネルのUIも検討し、天気やナビになるもの表示部もつけました。実際はスマホでの代用可能ですが、一体感を重視したこと、UIまでデザインすることが普通になっているからです。

商品企画部からのアドバイスも、色々社内の開発に絡むこともあってか、こうした方が良いという具体的なアドバイスより、学生自身がどう思うか?どう考えるか?なぜそう思うか?そちらを重視したアドバイスが続きました。

先方も最初、私たちに何も期待していなかったと思いますが、最後のプレゼンでは非常に驚いていただけました。

時間をおいて、社内で社長、副社長にもプレゼンされたそうですが、「こんなすごい産学連携見たことがない。商品化できないのか?」とまで言っていただきました。

10月から2月という短期間でしたが、みなさんの頑張りでこれだけの企業から絶賛される成果を出せたことは、学生にとっても私にとっても大きな誇りと自信につながりました。

今回PBLにご協力いただきました、関係者の皆様には厚くお礼申し上げます。


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