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新規事業で軽視されがちなデザイン。デザイナーの基本姿勢を考える。

新規事業で軽視されがちなデザイン

デザイン事務所にいて、声の大きなアートディレクターやクリエイティブディレクターの元、社内ほとんどがデザイナーである環境で仕事をしていると感じないことかもしれない。(のちに話すような役割を周りのメンバーが担ってくれていることが多いから)

でも新規事業開発においては、「このプロジェクト、デザインを全然大事にしてくれていない」と感じることが多々ある。もちろん、最近は教養として経営陣もデザインリテラシーが身についていたり、過去にデザイナーと働いた経験で培われた価値観によってデザインを重視している方々もいるので、例外もある。

が、特に新規事業開発において、重要視されるポジションはエンジニアであり、エンジニアは10人もいるのに、デザイナーは1人、良くても2人程度しかおらず、デザイナーが「ヒーヒー」言っている職場は多いように思う。

最近お手伝いしているプロジェクトでも、自分が数時間かけて作ったUIは、ほんの1,2分の共有で終了し、テストアップされてきたかと思うと、フォントファミリーも反映されていなければ、デザイン上使用していないカラーまで登場!!(…どなた?👀といった出来事があった。

調査・考察の上、制作したアウトプットが全然違うものになって上がってくる状況が続くのでは、デザイナーにとって自分の存在意義を感じることは難しいだろう。

なぜエンジニアは重宝され、デザイナーは軽視されるのか?

起業家は何かアイデアを持っており、それをクリエイターの手によって形にしてほしいと思っていることが多い。

そして、その状況の中で、ユーザビリティや見た目の美しさなどを無視すれば、デザイナーに依頼するという行為を無くして、いきなりエンジニアに依頼することが可能だろう。スピードのみ重視するような場合である。

そうすればひとまずはプロダクト自体は完成し、いったん世の中や投資家にアピールできる材料は揃う、といったところだ。

残念ながら、そのような起業家たちにとって、デザイナーは単なる「化粧屋さん」。実際に今関わっているプロジェクトでもまんま、そのように言われ、私はそれを横で黙って聞いていた。「でも、そんなはずはない。」

実際に、デザイナーは体験の全体をみている。
なぜそこに角丸をつけて、ここにはつけないのか。全部設計した体験から意図してやっていることだ。単なる化粧ではない。デザイナーのアウトプットに違和感があるならチーム全体で話すべきだし、そのプロセスを踏んで初めて、偉大なプロダクトが生まれる。

それを無視して、自分たち上層部だけの都合の良い解釈だけで進んでいくことは、私たちデザイナーをはじめとする、プロダクトを選ぶ際に"デザイン・広義に体験を重視する人間たち"をターゲットから切り捨てていることになる。

きっとデザインチームとしての運びも間違っている

だからと言って、相手にだけ非があるとは思っていない。こんなにも相手にデザインの重要性を理解してもらえていないのだから、こちらの運びに間違いがあるはずである。

実際に、こちら(デザインチーム)側が「今はデザインはそんなに重要でない」という類の発言に対して、「そうですね」で終わらせてしまっていることに流れを変える術がないと認識している。

それならば、自分がフロントに立っているリーダーに対して「いやいやこのように説明するべきでは」と根拠をもってお伝えさせていただくべきではあるのだが、きっとそれには十分な時間と、根気と、相手との確実な信頼関係が必要なので、全てのピースを揃えるのはなかなかに難しい。

自分が発言権をもってこのプロジェクトをドライブしていくことができれば話しは早いのだが…

この状況は、デザイナーが最上流から関わることで突破する

この類の話はもう、デザイン経営という言葉が世の中に浸透し始めて久しいので、聞き飽きたかもしれない。

でも、デザイナーがきちんと経営層と話をするための共通言語を持って、新規開発の発足時から議論に参加できるようになり、経営者に直接デザインの重要性を伝えることができれば、最終的な意匠表現にもきちんと耳を傾けてもらえるかもしれない。

一橋大学 大学院経営管理研究科 教授の鷲田祐一(わしだ ゆういち)氏によると、米国ではマサチューセッツ工科大学のG.L. アーバン教授が、すでに80年代にこうした図を示して商品・サービス開発のプロセスを説いていたらしい。

以降、鷲田氏のコメント

注目すべきは、プロセスの最上流工程に「デザイン過程」というものが置かれている点だ。これは、デザイナーが経営トップや他の経営陣と話し合い、最初に「顧客の視点からみたら、こういう製品を作るべきではないか」と提案していることを表している。

つまり、新商品開発の最上流では「どんな技術があるか」「どれぐらいで売れるか」といった経営寄りの話よりも先に、利用者の視点に立ったデザインの話から始まるのだということである。

そして上流から下流へプロセスが進むと、図の中段あたりにもう1つ、「デザイン」という記述が出てくる。

これが日本語でいうところの「意匠設計」だ。日本企業でも一般に行われている「商品の色や形を工夫し、決める行為」である。

日本ではデザインという言葉の定義が狭く、この2つめのプロセスだけを指すことが多い。だから、実際にデザイナーがかかわる範囲も、この途中工程に限られてしまうのだ。

https://jhclub.jmam.co.jp/acv/magazine/content?content_id=16030#

デザインを軽視すれば最終的には選んでもらえない

言わずもがな、米国5つの巨人と言われているような企業たちはデザインを重要視している。

Apple製品は美しく、私たちクリエイターとの相性が良いだけでなく、機能的にはどちらでもいいけど「見た目がいいから断然Apple!」と選ぶユーザーは少なくない(特に日本人はApple製品が大好き)

ものが溢れている時代だからこそ、他の製品との差別化が必要で、だからこそ今ブランディングやデザインが重視されている。

一過性の見た目の美しさだけでなく、そのブランドをビジュアル的に支え、ユーザーにストーリーを伝えることができるだけの、そんなデザインができるデザイナーが求められている。

まとめ

デザイナーが自分たちの立場を理想的なものにしていくために必要な要素は多くあるけど、まずは経営陣とデザイン文脈で話しができることを目指し、事業発足時からどんどん首を突っ込んで、ビジョナリーに提案できることができれば、今までのような苦しい場面は減っていくかもしれない。

もちろんどこまで行っても理解してもらえないパートナーもいるかもしれないけど、最善を尽くしても分かり合えないお客さんからは手を引いて、もっとデザインの力を信じている人たちとの時間に全力を尽くしていきたい。

そのための、武器を増やし、頭を使って、思想を固めていきたい。
そんな決意を固めた今日この頃、自分のための宣言文としてここに記させてもらった。

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