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死を待つ蝉はいつ鳴くか

A:同性愛者の女の子。自らのことを蝉と例え、自殺してしまう。
B:Aが愛した女の子。
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A:「私、明日死んじゃうんだぁ。」

B:「え?」
B:そう言って寂し気に私を見つめ微笑む彼女の瞳から、目が離せなかった。
B:彼女の少し茶色の瞳を夕焼けが赤に染め、魅入るくらい美しい。

A:「私、明日死んじゃうんだよぉ?あなたはどう思う?」

B:「え……私は……。」
B:急な質問に私は戸惑い、言葉を詰まらせる。
B:彼女は呆れたように私を見、そして少しずつ靴を鳴らしながら近づいてきた。

A:「私、死ぬんだよ?あなた一人になっちゃうんだよ?」

B:「あ……うん……。」

A:「(溜め息をつき)うん、じゃなくてさぁ……。」

B:「ご、ごめん……。でも信じられなくて……。」

A:「死を待つ蝉はいつ鳴くか……。」

B:「……え?」

A:「(泣き出しそうになりながら)私は、今だと思ってる。」

B:「……今?」

A:「(泣きながら震えた声で)……あなたが好き。
A:……あなたを一人にしちゃうことが辛い。
A:…………結ばれなくても良い、あなたの傍にずっと居たかった……。」

B:突然の告白に私は目を丸くした。
B:「…………私のことが好き?」
B:泣きじゃくる彼女は私の問いに首をぶんぶんと音がするんじゃないかってくらい縦に振った。

A:「(泣きながら)最期に、あなたに逢えて、良かった……。
A:叶わない恋は……終わりにする……。
A:……さよなら、ずっと好き、だったよ。」

(SE:立ち去る音)

B:「ま、待って……!!あ……行っちゃった……。
B:……明日死ぬって……どういうことなんだろう……。」

【間】

B:次の日、学校に行くと校舎裏に人だかりが出来ていた。
B:不思議に思い人だかりを掻き分け、見つめる。
B:「……嘘……。」
B:そこには、私を愛した彼女が頭から血を流して死んでいた。
B:「……何で……?」
B:後で解ったことだが、彼女は同性愛者ということで陰で苛めを受けていたようだった。
B:「(少し間を空けて)……死を待つ蝉はいつ鳴くか……か……。
B:ずっと苦しんでいたんだね、あなたは。……気づけなくてごめんね……。」
B:出棺の時、最後に彼女の顔を見て、私は呟く。
B:「あなたは蝉のように懸命に生きた。そして私を愛してくれた。
B:……最後に答えられなかったこと、本当にごめん……。
B:でも、私もあなたが好きだったよ……。」
B:花を手向けながら彼女の冷たい手を握る。
B:「来世のあなたは、きっと短命な蝉ではなく美しい青い蝶……ユリシス。
B:誰もがあなたに魅了される、美しい蝶になって……また私の元へ来てね?」

A:「(タイトルコール)死を待つ蝉はいつ鳴くか。
A:死んだ私はあなたの願い通り青い蝶になり、また、一からあなたを探す。」


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