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観戦記: 2024 J2 第3節 長崎 vs 清水


はじめに

2連勝で迎えたアウェイ長崎戦ですが、結果は1-4で惨敗でした。ハイライトはこちらです。

現地のゴール裏で見ていましたので、アウェイまで遠征してきて、4失点喰らうというのは本当に悔しかったです。去年はルヴァンで川崎に0-6で負けたことはありましたが、J2ではH群馬、H熊本戦の1-3が最大失点でした。いつまでも下を向いていても仕方ないので、何故大量失点をして負けてしまったのか、この試合のレビューと、次の試合に向けた改善ポイントを書いていきたいと思います。

長崎の狙いは何だったのか?

この試合、下平監督は、清水相手に自チームのスタイルを捨てて、対策をしっかりしてきました。この辺り、下平監督もリアリストですね。おそらくゲームプランとしては、後半の途中までは0-0でもOK。後半にフアンマやマルコスなどを投入して勝てればいい、くらいに思っていたのではないでしょうか。ここまで長崎の狙いが明確で、かつその術中に嵌ってしまうことになるとは、、、。
以下は長崎の清水戦先発です。前節から本職の飯尾選手を右SBに戻し、中盤に6番のマテウスジェズス、左WGに28番松澤選手、トップに11番のエジガルジュニオをスタメン起用しました。ある程度想定された起用でしたが、驚いたのは9番の絶対的エースであるフアンマではなく、エジガルジュニオを使った点でした。増山選手の起用含めて下記の狙いから考えれば極めて理論的な選出であることがわかります。

長崎の清水戦先発

長崎の狙い①: 清水の高いディフェンスラインの裏

試合後のコメントで下平監督や増山監督は以下のように語っています。

清水は最終ラインが高いので、背後を狙うというのがあった

長崎 下平監督

今日は全体的に、試合前から監督も背後を狙っていこうと話していたので、常に背後は狙っていました。

長崎 増山選手

はい。明らかに長崎の狙いは清水の最終ラインの裏でした。その狙いをもって2つの攻撃の形を徹底してきました。

長崎の狙い②: 清水のサイドバックの裏

本来はディフェンスラインから丁寧にビルドアップするスタイルの長崎ですが、この日は、サイドバックから外側から内側に巻いたロングパスをWGめがけて清水のサイドバックの裏に出すというプレーが多く見られました。飯尾→増山で3回ほど、後半も米田→松澤で2回ほどあったように思います。
そうすることで、中盤を省略し、ゴールに向かうボールを清水のサイドバックの裏に出すことができます。そうすると清水のサイドバックは相手選手を背にしながら、自陣に向かって走りながら対応するという難しい処理を強いられて、逆に長崎のWGは、ゴールに向かってボールを追いかけることができます。
こうして生まれたのが前半25分の1失点目のシーンでした。実はその前にも全く同じ形があり、ここは蓮川選手がうまくカバーしたのですが、2回目にしてやられました。
本人たちが一番よくわかっていると思いますが、山原選手は一発でクリアしようとせずに、しっかりと身体を入れてボールを思うように蹴らせない選択をすること権田選手は飛び出すのではなく、競り合いの状況を見て、触れないのであればシュートコースに立つことが必要でした。この両選手のミスが重なった「事故」のような失点でした。
それまでの時間は清水が主導権を握っていましたので、痛い失点になりました。

長崎の狙い③: 清水の両CBの間へのショートカウンター

清水の高い最終ライン攻略として、もう一つ狙っていたのが、ショートカウンターでの中央突破、つまり中盤の高い位置でボールを奪えたら、エジガルジュニオを狙って、清水の両CBの間にすぐにパスを出すこと。これがポストプレーが得意なフィジカルの強いフアンマではなく、裏抜けが得意なスピードのあるエジガル・ジュニオを先発起用した理由だったと思います。
この形でやられてしまったのが前半30分のシーンでした。乾、北川のパス交換で前掛かりに攻めあがったところ、強引に中央から攻めようとして北川のパスを相手DF田中がカット。それが相手の加藤に渡ってしまい、すぐに裏にパス。エジガル・ジュニオが抜けて、一度は権田がクリアしたものの、長崎の右の増山に渡ってしまう。増山がドリブルで前進し、高橋がタックルでクリアしたかに見えたものの、増山が伸ばした足に当たり、フリーになったエジガル・ジュニオにクロス、エジガル・ジュニオは無人のゴールに流すだけでした。
この失点も、①北川のパスミス、②加藤のマーク不在、③(オフサイドでなければ)両CBのラインコントロールミス、④権田のクリアミス、⑤カウンターのピンチに中村・北爪が全力で戻らないことによる増山のマーク不在、⑥高橋のクリアミス、⑦権田・中村・蓮川がクリアできると思ってボールウォッチャーになったことによるエジガル・ジュニオへのマーク不在7つの小さなミスが重なりました。それぞれの局面で「大丈夫だろう」という甘さがあったのだと思います。一つ一つは小さなミスですが、積み重なると長崎のような個の力のあるチームには確実に仕留められてしまいます。
特に⑤は、後半の長崎CKからの、清水のカウンターチャンスの際に、長崎の23番米田選手が、スピードスターの北爪を必死に追いかけて、最後身体を寄せたシーンとは対照的でした。このシーンでは、結果的に北爪のシュートコースを限定し、GKのセーブに繋がりました。こういうところだと思います。
あと1分前の前半29分にその伏線があったんです。この時は蓮川の乾への縦パスを秋野がインターセプト、加藤に転がったボールを、エジガルに繋ぎ、左の松澤にスルーパス。ペナルティエリア内まで持ち込まれフリーでシュートを打たれてしまいました。(権田が正面でキャッチをして事なきを得ました)
失点をして焦りのある清水が前掛かりになったことで、カウンターのピンチを招くということが連続で起きてしまいました。偶然ではなく、長崎が明確な狙いをもって繰り返していた結果でもありますね。

長崎の狙い④: 乾・松崎に対するハードプレス

また守備戦術にはなりますが、長崎はボールの奪いどころが明確でした。一つは中央の乾・北川のところ。特に秋野選手とマテウス・ジェズス選手の乾へのアタックは激しいものがありました。後半に乾選手も一度秋野選手に抗議にいくくらい、激しく戦っていたということですね。ただ乾選手はさすがの技術の高さで、ファール以外で奪われることは試合を通じて1・2度程度だったと思います。
もう一人は松崎選手。おそらくスカウティングから、松崎選手は清水の中でもフィジカルが強くないという情報はあったのでしょう。松崎選手に渡った瞬間に松澤選手と米田選手が挟み込むように奪いにいっていました。下記の清水のボールロスト位置で中央と右サイドが目立つのはその狙いの結果でしょう。

長崎戦の清水のボールロスト位置

ロングボールを蹴られたことで、ボールの奪いどころが曖昧になってしまった清水に対して、長崎は意思統一がなされた形でのプレスが徹底していましたし、勝負所での当たりは激しいものがありました。

長崎の狙い⑤: 清水のセットプレー時のゾーンディフェンスの隙

最後は、セットプレーについてです。清水は今季セットプレーはゾーン(マンツーマンで特定の選手につく形ではなく、スペースを埋める形)で守っていますが、この場合、特定の選手のマークが外れてしまうことがあります。
そのゾーンディフェンスの隙間を狙われて失点してしまったのが、後半33分の3失点目です。清水が1点返して押せ押せムードになっていたので、この失点は痛かったですね。増山選手が粘りに粘って獲得したCKから、ゾーンの隙をついてフリーになったエジガル選手が、ファーサイドの絶妙なコースにヘディングを流し込むという技ありのシュートでした。権田選手はノーチャンスだったと思います。
ゾーンの位置的にはカルリが近かったですが、第2節でもヘディングでゴールを決めて、この日も前半にヘディングで枠に飛ばしているエジガル選手のマークとしては、そこまでヘディングの強くないカルリ一人で守るのは厳しかったように思います。個人的にはやはり相手のヘディングの強い選手には、こちらも高橋選手のような高さのある選手をマンマークで守らせる方が良いかと思います。
実はこの失点にも伏線がありました。全く同じ増山→エジガルのホットラインです。それは前半9分とだいぶ遡るのですが。この時は清水の左サイド深い位置からのスローイン。増山選手はロングスローではなく、クイックスローにして、ボールの折り返しを受けて、クロス。うまくゾーンを外したエジガルがフリーでヘディングしました。幸い権田選手の正面で事なきを得ましたが、増山がエジガルをターゲットに精度の高いクロスを送るというのは、長崎の狙いの一つだったと思います。

まとめ

この試合、増山選手はMVP級の活躍でした。フィジカルの強さ、あきらめない気持ち、キックの精度の高さ。どれをとっても素晴らしかったです。
また清水との大きな違いとして、先発組とサブ組の力が拮抗している点です。これはルヴァンカップがあったことも関係はしていますが、この層の厚さと、先発組・サブ組を巧みに使い分ける采配は、長崎の強みですね。後はホームでの連敗は許されない、もう後がないという状況もありましたが、全員がハードワークし、身体の衝突も恐れない勇敢さがあったように思います。やはりJ1昇格争いにライバルになることは間違いないですね。

清水にとっての誤算とは?

長崎の話が長くなりしたが、これから清水について書きます。この試合清水にとっては、3つの誤算がありました。こちらが清水のスタメンです。

長崎戦 清水スタメン

ひとつめの誤算は、原選手の離脱です。守備・攻撃が共に高いレベルにあり、またフィジカルも足も速く、更にSBもCBもできるとう点で、原選手は清水の守備陣の要です。その原選手が直前の練習で離脱したこと。こればまず清水にとって大きな誤算でした。
そのため原選手の代わりには、北爪選手を起用します。これまでも右SBとして控えに入っていましたので順当かと思いますが、原と北爪はタイプが大きく異なるため、当然ながら全体の連携面でも異なる戦い方が求められました。
次の誤算は、長崎のトップに、絶対的エースのファンマデルガド選手ではなく、エジガルジュニオ選手が入ったことです。
秋葉監督は、高橋選手のスタメン起用について以下のように語っています。

--高橋 祐治選手をCBで起用した意図は相手の高さ対策があった?
もちろん高さ対策もありましたし、北爪(健吾)が出ることになっていましたので、よりやり慣れているペアでいきたかったというところ。あとはもちろん祐治の経験値だとか、そういったものが生きるゲームだと思っていたので、そこで北爪とペアで出したというところが意図です。

長崎戦試合後 秋葉監督

高橋選手の起用について、一つは高さ=ファンマ対策。もう一つは北爪との連携面。つまりこの2つの誤算がなければ、ジェラが先発した可能性が高い。
結果論にはなりますが、長崎が高い最終ラインの裏をエジガルで狙うということを最初からわかっていたら、よりスピードのある、ジェラをスタメンで起用していたかもしれません。
最後の誤算は、長崎が、チーム戦術で掲げる、ディフェンスラインからボトムアップを半ば放棄して、ロングボール主体できたことです。

長崎の第2節の仙台戦パスソナー
長崎の第3節清水戦のパスソナー

第2節と第3節のパスソナーを比べるとわかる通り、CBのパス数が半減し、最終ラインからの平均パス距離も伸びています
これにより清水の戦術の一つである「前線からのプレス」がかからなくなり、更にはロングボールで清水の高い最終ラインの裏を取られるという、清水にとっては嫌なサッカーに持ち込まれました

主にこの3つの誤算によって、清水のゲームプランは狂ってしまいました。
特に、長崎が丁寧に繋ぐことはやめて、ロングボールとカウンター主体で速い攻めをしてきたことで、前線からのプレスがハマらなくなりました。また清水の右サイドが原→北爪となり、北爪が高い位置をとった結果、清水得意の「左起点」ではなく、「右起点」となり、カルリの孤立や、松崎の周囲にスペースがない状態になってしまいました。愛媛戦と長崎戦のパスソナーを比べても明らかですね。

清水の第2節愛媛戦のパスソナー
清水の第3節長崎戦のパスソナー

カルリと中村のパス数が極端に減っていることがわかると思います。北爪が高い位置をとって攻撃に絡み、右からの攻めが増えたことは別に悪いことではないのですが、少し北爪と松崎のところの短いパスが多くなり、攻撃が詰まってしまいました。また、より低い位置に重心を置いて、危険察知能力が高く、時には逆サイドまでカバーできる原選手がいれば、カウンターのリスクは低くなり、前半の失点は押さえられたかもしれませんね。
愛媛戦と長崎戦の選手単位でのヒートマップの比較分析はうっでぃーさん(勝手に引用してすみませんm(__)m)が詳しいです。


清水にとって明らかになった課題は?

この試合は、結果も1-4の惨敗でしたし、課題も多く見つかった試合になりました。特に大きな課題だなと感じた点について解説をしていきたいと思います。

清水の課題①: ディフェンス時の当たりの弱さ

この試合、全体を通じて、清水の選手たちの、当たりの弱さが非常に気になりました。身体接触を避けているようなプレーが散見され、ほんの一瞬の隙ではありますが、相手をフリーにしてシュートを打たれたり、クロスを上げられたりしたシーンが多くありました。
典型的なのは、3失点目と4失点目。3失点目はCKからのクロスに対して、誰もエジガル選手に身体を寄せられていませんでしたし、4失点目は、宮本・山原・矢島とPAの右サイドに3人いたにもかかわらず、少しお見合いのような形になり、長崎の笠柳選手に簡単に抜かれてクロスを上げられてしまいました。吉田選手には珍しく、マルコス選手のマークも外れていましたね。
怪我やファールを恐れる気持ちはわかりますが、守備の時にはがっつり当たりにいかないといけません。それがピッチ上で最もできていたのは、乾と中村だったように思います。特に、あれだけ攻撃面でもチャンスをボールを受けて捌いていた最年長の乾選手がやっていることを、他の選手がやれていないのは問題だと思います。
セットプレーの守備に関しても、個人的には、守備の責任が明確になるため、ゾーンではなくてマンマークにする方が良いと思っています。

中村選手の守備の個人スタッツ - 7回のタックルはチーム最多

清水の課題②: 最終ラインのケアとリスク管理

次に前半の2失点に関わる最終ラインのケアとカウンターに対するリスク管理の課題。これについては、熊本も愛媛もロングボールを多用するスタイルではなかったため、顕在化しませんでしたが、去年もこのロングボール(背の低い山原にハイボールを当てるパターンと、ディフェンスラインの裏に入れられるパターン)に苦しめられてきただけに、ここでの対策は必須ですね。
ひとつは、攻撃時の前線への人数のかけ方。長崎戦で目立ったのは北爪選手の位置の高さ。山原選手も上がるため、両SBが上がってしまい、ボランチも重心が前にかかり、2人のCBしか残っていないというケースもありました。この辺りはチームの約束事として、SBは1枚上がったら1枚は下がる2枚上がる場合にはボランチが最終ラインをケアして、もう一人のボランチが中央でスペースを埋めるなどが必要かと思います。
もう一つは、ディフェンスのハイラインの裏にボールを出されたときの対応。ハイライン自体は今季の清水の戦術の要になるため、継続すべきと思いますが、今回の長崎の「成功」を見て、他チームも狙ってくると思います。必ずSBとCBが2枚でカバーするようにすること、GKは触れるタイミング以外では前に飛び出すのを控えること、中盤の選手もセカンドボールを拾いに下がることなどが約束事として必要かなと思います。
最後は、清水のプレスは、ミドルラインによるサイド圧縮が基本で、乾選手がそのスイッチ役をやります。これ自体は熊本戦・愛媛戦も機能していたので継続で良いと思います。一方で、最終ラインからロングボールを蹴ってくる相手に対しては、ある程度最終ラインにプレッシャーをかけに行くという判断もあるかもしれません。この辺りも意思統一が必要ですね。

清水の課題③: セットプレー・クロスの精度

次に攻撃面の課題ですが、愛媛戦に松崎選手のクロスから北川選手のヘディングでのゴールはあったものの、昨年同様、セットプレー及びクロスからの得点がなかなか生まれていない点は気になります。もちろんこれには、クロスのキックの精度、クロスを上げる位置、クロスに合わせる選手のポジショニング、クロスに合わせる選手のシュート技術がありますが、特にクロスを上げる位置、クロスに合わせる選手のポジショニングについてはチーム戦術の部分なので短期間での改善が期待できます。
確か乾選手が「相手GKと2 vs 1を作る」という発言をしていたので、クロスに対して必ず2枚が入るという約束事はあるのだと思います。ここについての解像度アップが大事ですね。(当然考えていると思いますが)
クロスの成功率については、少し古いですがこちらの記事が非常に興味深いです。

記事にある通り、一番確率が高いのは下記の図でいうところのZone 4。俗にいうポケットあるいはニアゾーンで、この位置にボールが渡れば、シュートの選択肢もあることから、クロスの場合の確率も跳ね上がります。ボールを出す位置が、ペナルティエリアスポット(PKを蹴る位置)より自陣側で3.6%(特にニア)、ゴール側では7.2%(特にファー)と非常に高い確率になります。最近の清水では、原選手や山原選手がインナーラップでこのスペースを狙ったり、白崎選手なんかが得意なプレーですが、ボランチがオーバーラップしてここを狙ったりしているのはそのためです。この際には、1人がマイナスかつニアの位置、もう1人がファーに走り込めると確率が高まるということになります。
さらに面白いのが、Zone 1/2/3の中では、Zone 1からのゴール側に向かうクロスの確率が高い(3%)という事実です。まさに愛媛戦の松崎のクロスがこの位置からです。山原なら左サイドから右足で、松崎なら右サイドから左足で、ゴールを巻くような、ゴールに向かうクロスを上げて、それをゴール前ですらすようなイメージですね。ここでも2~3名がファー側から斜めに入り込めるとチャンスになると思います。
このZone 4とZone 1の攻略が、クロスからの得点を増やす鍵になると思います。セットプレーについては別の機会で語ろうと思います。

クロスを出す位置

清水の課題④: 攻撃システムのオプション

清水ですが過去3戦共に、4-2-3-1のシステムで大きく戦い方は変えていません。一方で長崎戦に関しては、北爪が早いタイミングから前目のポジションをとったせいか、いつもは左寄りでプレーする乾が右サイドにいることが多く、結果カルリはいつもよりも中に入っていましたが、若干孤立し、ボールタッチが少なくなっていました。

上記の戦術noteでも書きましたが、カルリや松崎の特徴を考えると、本来は「左起点」でゲームを組み立て、右サイドは「意図的に」スペースを空けて、松崎に渡す際に、スペースを与えられるような形が良いかと思います。また「偽9番&偽10番」をベースに、乾とカルリを意図的にポジションチェンジして、乾が左サイドで、カルリが北川と2トップになるような形ももっと試合の中でやってもいいように思います。北爪選手起用の影響もあると思いますが、4-2-3-1のシステムの中でも右に偏りすぎないようバランス調整が必要と感じました。
さらには、どうしても点が欲しい時に、システム自体を攻撃的に変更するオプションがあると更に良いですね。長崎戦、試合自体は既に決まりかけていましたが、終盤では、下記のような4-4-2を試していました。

長崎戦 清水の終盤のシステム

このシステムは面白いと感じました。中盤が乾と白崎の2人になりますので、中央の守備の強度は下がりますが、長崎が中盤を省略してロングボールを蹴ってきていましたので、リスクをとって攻めに比重を置くという意味でも良いシステムのように思います。
この日清水は後半19分に松崎→ブラガ、後半25分にカルリ→西原、中村→白崎の交代を行いました。(その後後半35分に北爪→吉田、宮本→矢島を交代して上記システムに変更)後半25分の交代の際に「カルリは下げちゃだめだ」とつぶやいたのですが、交代後はむしろ攻撃が停滞してしまい、ダメ押しとなる4点目を決められてしまいました。
それならば、後半19分の最初の交代の際に上記のシステムで以下のような配置にしたら面白かったと思います。

清水の攻撃オプションの案

ブラガの本職はサイドなので、昨季のコロリ選手と同様、FWで使うのは厳しいかなと思います。なので、控えにできれば郡司など純粋なFWの選手を入れて、カルリあるいは北川に代えるというのも良いかと思います。(タンキ選手が正式契約すればそうなるかもしれませんが)

清水の課題⑤: 前半からのギアアップ

この試合のゴール期待値の推移を見てみましょう。

長崎 vs 清水のゴール期待値の推移

清水の前半のゴール期待値は0.2を下回っています。実は開幕戦の熊本戦も同じような展開でした。試合後の秋葉監督もこのように語っていますね。

見てのとおり、前半に相手のテンポに合わせてゆっくりとキレイにやろうとした結果です。もっと必死になって泥臭く死にもの狂いで戦うとか、勝ちを目指すとか、そういうことをしなければこういうゲームが続くと思います。

長崎戦後 秋葉監督

逆に後半はゴール期待値が一気に上がり、実際に、後半10分に乾選手の得点が生まれています。前後でも多くチャンスを作っており、3失点目がなければ、追いついて、逆転するという雰囲気・流れがありました。それだけに前半の2失点と、3失点目は痛かったですが、、、。乾選手もそこについて触れていますね。

--後半の立ち上がりは良いリズムで1点取れた。どういった修正をしたのか。
もう前から行くしかなかったので、割り切ってしっかり前から。みんな気持ちも入れ直して、もう1回やり直しました。その辺はすごく良かったと思いますけど、3失点目をした時点でまたキツくなりましたね。

長崎戦後 乾選手

このギアアップを前半の頭からやるというのが、次節大分戦での大きなテーマになると思います。

清水にとってポジティブな収穫とは?

課題ばかりを並べてしまったので、最後は少しポジティブな話をしたいなと思います。

清水の収穫①: ボランチの攻撃参加

後半10分、清水の得点のシーン。宮本が持ち上がり、サイドを駆け抜けた北爪にパス、北爪もワントラップして持ち上がり、ハーフレーンにいた松崎にパス。松崎は足を滑らせるも粘って宮本にバックパス、宮本は北爪とのワンツーで右サイドを抜け出し、グラウンダーでバイタルにいた乾に横パス。同時に3番目の動きで中村がニアゾーンに入り込む。それに引き付けられた長崎の加藤選手が下がったため、わずかではあるが乾の前にスペースが。乾は左足に持ち替えて、高い技術でシュートを左隅に決めました。
ボランチ2名が絡んでの分厚い攻撃で、ある程度引いて守る長崎にからゴールをこじ開けられたことは、昨季よりもボランチが攻撃に絡み、ニアゾーンに走り込むという清水の狙い通りのゴールになりました。
中村選手は、この試合だけでチーム最多の4本のシュートを放っており、攻撃面でも存在感を放ちました。

清水の収穫②: サブ組のコンディション向上

この試合、初先発となった高橋選手・北爪選手共に、個人としてのパフォーマンスは良かったと思います。高橋選手は、2失点目のクリアを増山選手にブロックされたシーンが悪目立ちしてしまいましたが、実際はチーム一のパス数、高いパス成功率(95%)とビルドアップに貢献し、また守備でも2失点目以外は堅実なプレーを90分通してできていました。

長崎戦 高橋選手の個人スタッツ(攻撃)

相手のFWのタイプやコンディションによって蓮川・ジェラ・高橋の3選手を使い分ける形になると思いますが、ここで高橋選手が戻ってきたのは大きいです。
また初戦からキレのある動きを見せている西原に加えて、交代出場のブラガや矢島も、前の試合よりはコンディションが上がっているように見えました。

清水の収穫③: 課題が一気に出たこと

無理矢理のポジティブ思考かもしれませんが、本当に最も収穫だと思うことは、この試合で、自分たちのミスや甘さによる4失点を中心に課題が一度に出たことです。正直このようなミスが1試合に4回よりも、1試合に1回ずつ出てしまう方がたちが悪いです。その方が勝ち点をより失うことになりますし、修正にも時間がかかります。
そういう意味で、1-4でも0-1でも勝ち点3を失うことは同じなので、まだ3節というタイミングで、かつ強豪相手のアウェイでこの課題が明らかになったことは、ポジティブに捉えたいと思います。

次節に向けて

改めて、J2の戦いは決して容易ではないことを痛感する試合になりました。1試合1試合に一喜一憂することもサポーターの楽しみではありますが、38試合というシーズンの中で、すべて思い通りに勝てるわけではありません。ただ優勝するチーム・強いチームとは、「連敗はしない」「引き分けに相応しい試合を勝つ」「負けに等しい試合を引き分ける」というチームだと思います。優勝には1試合平均勝ち点2以上、つまり2勝1敗以上のペースが必要です。そういう意味では、現在3試合で勝ち点6と、まだまだ優勝に向けてon trackです。今回の負けをいかにバネにしてリバウンドメンタリティを発揮できるかが大事になりますね。

ここで連敗を止められるのか、それともズルズル連敗するのかどうか、非常に真価が問われところになりますから、もう一度全員で矢印を自分たちに向けながら、必死になって戦うというところ、ゲームに入るところをもう一度見直しながらやりたいと思っています。

長崎戦後 秋葉監督コメント

監督や選手たちも、自分に矢印を向けて、悔しさを胸に大分戦に向けて気持ちを高めていると思います。我々サポーターも自分たちに矢印を向けて、次のホームでは、愛媛戦を上回るような大声援で選手たちを後押ししたいですね。ONE FAMILYでJ2の厳しい戦いを共に乗り越えましょう。

長崎戦のゴール裏より

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