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キリスト教ゴリゴリ連載小説【ロゴス】

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ロゴス #34

ロゴス #34

第34話『安息日論争』

旧約聖書 出エジプト記 20章 8節〜11節「安息日を覚えて、これを聖なる日とせよ。六日間、働いて、あなたのすべての仕事をしなければならない。しかし七日目は、あなたの神、主の安息である。あなたはどんな仕事もしてはならない。あなたも、あなたの息子、娘、それにあなたの男奴隷や女奴隷、家畜、また、あなたの町囲みの中にいる在留異国人も。それは主が六日のうちに、天と地と海、またそれ

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ロゴス #33

ロゴス #33

第33話『断食論争』

マタイの家での宴会は続いている。そんな中で、次の質問がイエスに投げかけられた。

「ヨハネの弟子達は、よく断食しており、祈りもしています。もちろん、私達も同じです。なのに、どうしてあなたの弟子達は食べたり飲んだりしているんですか?」

この宴会は断食の日に行われていた。イエスの時代になると、パリサイ派は週二回(月曜日と木曜日)に断食をしていた。

しかし、旧約聖書の定められ

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ロゴス #32

ロゴス #32

第32話『罪人を招く人』

ある時、イエスが道を歩いていると、収税所に座っているマタイという取税人に目が止まった。当時の取税人というのは、裕福ではあったが、民衆からは罪人と同列に考えられ、忌み嫌われていた。

取税人というのは、公の職務につく、いわゆる公務員であるが、当時の取税人は、自分の私腹を肥やすために、決められているよりも余分のお金を民衆から巻き上げていたので、ひどく憎まれていた(ローマ帝国

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ロゴス #31

ロゴス #31

第31話『自らの床を担ぐ病人』

ある日のこと、イエスがペテロの家で話を始めると、多くの人がその教えを聞こうと集まってきたのだが、その顔ぶれがいつもとは大きく違っていた。そこにはパリサイ派の律法学者などもいて、重苦しい雰囲気に包まれている。

ツァラアト患者を癒した出来事は、国中に瞬く間に広がったが、この出来事は、それまでのイエスが行なっていた奇跡とは性質が違っていた。

ユダヤ人の考える奇跡は大

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ロゴス #30

ロゴス #30

第30話『絶望的な皮膚病』

旧約聖書 レビ記 13章より「ある人のからだの皮膚にはれもの、あるいはかさぶた、あるいは光る斑点ができ、からだの皮膚でらい病の患部のようになったときは、その人を、祭司アロンか、祭司である彼の子らのひとりのところに連れて来る。祭司はそのからだの皮膚の患部を調べる。その患部の毛が白く変わり、その患部がそのからだの皮膚よりも深く見えているなら、それはツァラアトの患部である。

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ロゴス #29

ロゴス #29

第29話『人間を捕る漁師』

あなたたちを人間を捕る漁師にしようイエスは湖畔に立つと、弟子シモンの船に乗り、陸から少し漕ぎだすように頼んだ。

少ししたところで、イエスは座り、集まる群衆に向かって、船から教えを説き始めた。

この時、イエスの元には国境を超えて各地から多くの群衆が押し寄せ、イエスの教えを聞こうと群がっていた。普通に湖畔に座って話をしても、人に埋もれて奥の人まで声が届かないし、何より

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ロゴス #28

ロゴス #28

第28話『多くの癒し』

悪霊の騒ぎが落ち着くつくと、イエスはすぐに弟子シモンの家に向かった。カペナウムの会堂とシモンの家は目と鼻の先であるので、礼拝後の食事に招待されていたのだ。

イエスの奇跡を目の当たりにした民衆の多くはイエスらについて行って、シモンの家へ殺到した。

会堂での礼拝は安息日(土曜日)に行われるが、ユダヤ社会では安息日の午後の食事を一週間で一番重要なものと考え、豪華な食事をする

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ロゴス #27

ロゴス #27

第27『恐る悪霊』

ナザレでの拒否を受けて、弟子達は動揺していた。どの地でも受け入れられるものと思っていたからである。まさか、イエスの郷里で拒否されるとは…

イエスは

「偽善者達は、自分の目の中でメシアを見つけようとする」とだけ弟子に語って、それ以外は何も言わなかった。残念そうではあったが、驚いた様子はなかった。



ナザレを去ったイエスたちは、病人を癒した町、カペナウムを訪れた。ゼブル

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ロゴス #26

ロゴス #26

第26話『郷里での拒否』

カナでの伝道の次にイエス達が訪れたのは、イエスの育った町ナザレであった。

いつものように安息日(土曜日)に会堂に入って、トーラー(旧約聖書のモーセ5書)を朗読しようとして立たれた。

イエスはこの頃にはガリラヤでは有名人になっていて、行く先々で朗読の依頼を受けて立っていた。今回のナザレでの朗読も会堂からの依頼を受けて朗読している

トーラーの朗読が終わると、会堂の管理

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ロゴス #25

ロゴス #25

第25話『ガリラヤ伝道』

サマリヤを通過したイエス達は、無事にガリラヤ地方にたどり着いた。

ガリラヤでのほとんどの町で、イエスは大歓迎された。
ガリラヤの多くの人たちが、過越の祭りに出向いていたので、イエスの行なった数々の事を見て、言い伝えていたからである。

ガリラヤは田舎なので、同郷出身のイエスの活躍を誇らしく感じていた。皆イエスの言葉を聞きたがった。イエスはそれぞれの町の会堂を渡り歩いて

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ロゴス #24

ロゴス #24

第24話『異邦人への宣教』

「あなたと話している私がキリストです」と、イエスが断言した時、丁度弟子達が帰ってきて、イエスが女の人と話しているのに気が付き、驚いた。

サマリア人の、しかも公の場でラビが女と会話しているというのは、当時の社会的慣習からは逸脱し過ぎている。

弟子達は不思議に思ったが、そのことに異見することもなく、また「どういう目的で彼女と話しておられるのですか?」と質問することもな

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ロゴス #23

ロゴス #23

第23話『サマリヤの女』

イエスと弟子達がサマリヤ地方のスカルという町を歩いていた頃、疲れを感じ始めた時に、井戸を見つけたので、そこで休もうと腰を下ろした。
日も落ち始めたので、弟子達は食料などを調達するために、それぞれに歩いていった。

イエスだけ井戸に残り、休んでいると、一人の女が井戸から水を汲もうと現れた。女はイエスがまるでそこにいないかのような様子で、水を汲もうとしている。

イエスを見

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ロゴス #22

ロゴス #22

第22話『私は衰えなければならない』

〜過越の祭りを終えてのそれぞれの活動〜

イエスとその弟子達はエルサレムを離れて、田舎の荒野で人々にバプテスマを授けていた。正確にはイエスの弟子達がである。行なっていたのはバプテスマのヨハネと同様の水によるバプテスマである。これは、イエスがヨハネのバプテスマを讃えていたことが伺える。

一方その頃、バプテスマのヨハネも別の場所で弟子達と共に活動をしていた。場

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ロゴス #21

ロゴス #21

第21話『小さな光』

「すいません…少しお話が」

夜、人目を避けながら現れたその男の名前は『ニコデモ』という男

パリサイ派(特にイエスと対立することになる宗派)の最高法院の議員で、ユダヤ教の指導者でもあったが、彼の目にはイエスに対する敬意があった。ニコデモは言った。

「”ラビ(師)”…私たちは、あなたが神のもとから来られた教師であることを知っています。そうでなければ、昼間のようなことはとて

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