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映画『余命10年』は半年分の涙を私から奪っていった

今回は先日見てきた映画の話をしようと思う。名前は『余命10年』。主演は私の好きな小松菜奈さんと坂口健太郎さんだ。

3月4日に公開された映画で、今日(4月24日)となっては多くの方がこの映画を観ていると思う。ここではネタバレガンガンありきで、本編の魅力とかを語れたらなと思う。あとは原作との違いとか。



すんげえ良かった

 まず結論から言うと、すんごい面白かった。絶対に泣くだろうからハンカチを持って行ったんだけど、一枚だけじゃ足りないくらい泣いたし、映画館にいる他の人の鼻をすする音がめちゃくちゃ聞こえたくらいには泣けた。

音楽面

 まずは音楽から。今作は『君の名は。』などが知られるRADWIMPSさんが全面的に音楽を担当している。主題歌に加えて劇中で使われる音楽も、多分彼らが制作したであろうと思われる。
 主題歌の『うるうびと』は王道の中の王道・どバラードみたいな感じなんだけど、これが結果としてよかった。最初に聞いた時は、「いやこれはありきたりすぎじゃない?」って思ったんだけど、この映画にハマるのはこういう曲以外ありえないなと、映画を観終わった後にそう感じたのを覚えている。
特に、

今や人類はこの地球を飛び出し火星を目指す
なのに僕は20センチ先の君の方が遠い

RADWIMPS『うるうびと』より

今や人類はこの地球を飛び出し火星を目指す
だけど僕は20センチ先の君だけを目指す


この二つの対比がめちゃくちゃに好き。これがまんま和人(坂口健太郎)の想いを表していたように感じた。

 劇中のBGMも無音では寂しい、かといって激しいと映画の雰囲気を壊してしまう。その中で主にピアノで作られた旋律は、とても透明だった。ここまで音で透明さを表せるのは本当にすごい。

applemusicに加入している人は『余命10年』のサントラを聞けるので、興味がある人は是非聞いてみてね。




泣きのオンパレード

これを書くにあたって、自分が何回泣いたんだろうと思い返していたんだけど、普通に10回くらいは泣いていたんじゃないかと思う。なんなら結末を知っているから、開始10分くらいから既に怪しかった。

この映画の凄い所、というか賢明なところとして、
「ここで泣いてくださいね!!」
みたいな所がないところだと思う。主人公の茉莉(小松菜奈)が余命10年ということを宣告されてからの人生がいい意味で淡々と描写されていくんだけど、この淡々さがかえって涙を誘う。
和人と出会う同窓会の場面から始まり、ピクニックに行ったり海に出かけたり紅葉を見たり。

全部泣き所だけど、特に茉莉が母親に素直な感情を吐露する場面はすごくよかった。あそこで茉莉は改めて自分の気持ちに向き合うことが出来たし、また一歩前に進むことが出来たんだよね。
陳腐な表現にはなってしまうけれど、人間は一人で生きているわけじゃないっていうのをまざまざと見た気がする。


原作と違う所

ここでは主に原作と変わったところを書いていく。原作はまあまあ読み込んだけど映画に関しては1回のみなので、間違っていたらごめんなさい。

・和人が親と絶縁しており、家を継ぐという設定自体が存在していない
 これは今作の中でかなり大きい所だと思う。原作では和人はけっこう歴史があり由緒ある家柄の人だったから、自由な上で品性も持ち合わせている、そんな和人に茉莉が惹かれたっていうのもあった。
ただ映画での和人は親と絶縁状態にあり、自殺未遂までするというものだった。自分の命をないがしろにするという所で茉莉の怒りを買い、生きることの意味を見出してくれた彼女に和人は惚れていくことになる。彼は飲酒店のアルバイトをはじめ、最終的には「茉莉」という名前の自分の店を経営するまでに成長する。
 映画を観終えた時は原作の方が好みかなと思っていたけれど、映画の和人の方がよりリアルさを感じることが出来たから、個人的には映画版和人もありかなーとは思う。ただ一つだけうーんと感じたのは、和人の成長シーンがイマイチだったことかなあ。彼がアルバイトを始めるにあたって恩師とのシーンが度々ある。茉莉と和人の絡みが見たい私としては、和人のアルバイトシーンはどうしてもこの映画のテーマにそぐわないのではないかと思ってしまった。

・オタク要素は全てカット、茉莉は漫画家から小説家へ
 原作では茉莉と早苗は共通の趣味を持つ友人であり、茉莉の病気の事を知る数少ない人物の一人だった。そんな早苗はとある出版社の編集者という設定で、茉莉が病魔に苦しんでいく中で執筆した『余命10年』を世に出すことに使命を全うしていた。
 コスプレなどの趣味に口を出すあれはないんだけど、大衆向けの映画としてはやっぱり映画のような設定の方がいいのかなあと思いはした。その方が小説を書くっていう動機付けもしやすいし。オタク要素が市民権を得るのはまだ先の話なのかもしれない。

・茉莉が小説を出す
 ここは変更点と言われると微妙かもしれない。というのも著者である小坂さんも実際に物語を書き、小説家になったからだ。しかし原作では小説家としての彼女はあくまで語られない。
 映画では彼女が小説を書き、本になるところまでが描かれる。これが原作では描かれなかった部分であるため、見ている側としては印象が結構変わった。原作はあくまで著者の主観でストーリーが展開されていくのに対して、余命10年は茉莉や和人、そのほか大勢の人の視点で物語を楽しむことが出来る。特に原作では描写が薄かった両親の演技ががこれまた涙を誘う。これは映画版ならではのいいところだと思った。

・学校のシーンはなし、代わりに四季を感じる描写へ
 けっこう印象的だった学校でのシーンがなかったので、それに関しては少し残念だった。学校に侵入したのがきっかけとなって和人が茉莉の病気を知るシーンは秋を感じさせる紅葉のシーンへ、エピローグのシーンは映画冒頭に出てきた夜桜を感じさせる花見のシーンへと変わっている。
 ただ、原作のエピローグも一興なんだけど映画の終わり方もいいんよねえ…(オタク感)
和人が自殺未遂をして、茉莉に「もう死ぬなんて言わないで」と言われるシーンでは、和人の気持ち的には結構しんどい場面だったはず。親からも見放され、会社もクビになり、生きる目的を見失っていた。その上で茉莉含めた同級生は皆生きる目的を持っていた。そんな彼を気にかけてくれた茉莉の存在の大きさたるや。そしてそこから年月は経ち、和人は店を経営して自分の道を歩めるまでに成長。そこの隣に茉莉はいないけれど、桜が吹雪いている天気は快晴。伏線回収も込めた、和人の心をそのまま表しているかのような演出がはちゃめちゃに良かった。


という感じで、余命10年がよかったよという話でした。今は色々とやることがあって中々時間が取れないけど、機会があったらもう一度映画館に足を運びたくなるような、そんな映画でした。
では、今回はこの辺で。良い一日を。

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