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ホン雑記 Vol.783「とはいえ不自然に頑張ることが悪って話じゃないよ」

ドリアン助川氏の書いたバカボンのパパと読む老子、みたいな本を読んでいる。と、前も書いた。
またいい箇所があった。


「道」と書いて「TAO(タオ)」と読ませる教えというか概念があるんだけど、超単純に言ってしまえば森羅万象とか、自然の摂理みたいなところだ。
で、そのTAOの持つ力はあくまで柔弱にゅうじゃくであると、ゆえに最強であるという。

ドリアン氏はそれを「弱く絶え間ない力」だという。
たとえばアスファルトを破って出てくる植物の力がこれにあたるらしい。強くてはいけないのだ。柔らかい芽と硬いアスファルト。破壊しようとして超高速でぶつけても負けるのは芽のほう。
が、自分(芽)が壊れない程度の圧力で、彼らにとっては気の遠くなるような時間、力を掛け続けると、頑強な組織でも徐々に削り取られていく。専門用語で静荷重というらしい。重さなどもこれにあたる(ニューヨークシティはビル群の重みで年間1~2ミリ沈下しているという)。

ドリアン氏は49歳の時に意を決してフランス語を学ぶことを決めるんだけど、スクールに入ってみると若い女子しかいなくて汗が噴き出してきたという。「マズいところにきてしまった」と。
そのうえ、人称と時制によって変わる活用の数も、彼がある程度話せる英語の比ではないと知り、実際にめまいがしたらしい。これは一筋縄ではいかないと思った彼は、ふたつのことを決めた。

・毎日少しずつでも、必ずやる
・結果はどうでもいい

そうしてフランス語をまったくわからない状態からはじめて2年後、フランス語検定の準2級を取るまでになって、なぜだか『星の王子様』(原作はもちろんフランス語)の翻訳の仕事も入ってきたという。
そのフランス語スクール、すぐに結果を出さなきゃいけないとか、気合いの入った人たちがいたんだけど、みんな途中で消えていったらしい。で、あんまり結果を気にしない、とりあえず毎日やろうよ、っていうスタンスの人たちだけが残ったというんだな。

これってなんだかすごい話で、そしてなんとも落ち着く話じゃないか。特に昨今においては。功を急く人には「そんなに待てねーよ」って思われるかもだけど、そんな人だって「落ち着きたい」ことには変わりないはずだ。人と比べるとか、変わらなきゃっていうような、本来はなかったはずの焦燥に囚われてなきゃそんなことは思わないと思うんだよね。
外界があることも知らず、無人島にひとりだけ生きてたら、頑張んなきゃなんて思わないだろう。


現代の、正解を望んだり、結果だけを求めたり、効率を最大限にまで持っていきたいという願望、というか渇きは、どう考えてもTAOのスピードからはかけ離れてる動荷重だ。もちろん宇宙の法則から人間だけが逸脱することもできない。

ラクとトクを追いかけすぎたその時差の分だけ、人間のほうが壊れていってるのかもなぁ。

ま、それも摂理の中のできごとか。




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【今日の過去曲】

1年以上前になるのか。もうこの曲も。この歳にして初めて作ったお友達のお歌だった。

どーでもいいけど、承認欲求や商業ベースの締め切りに追われていない作曲ってTAOに近いところにあるのかもしれないなぁ。

言いかたを悪くすれば、創造は脱糞に近い。




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