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さよならオーナメント、さよならあなた #2022クリスマスアドベントカレンダーをつくろう

この日に決めていました。
仕事を終えて、電車で彼の住む街へ。
今日はクリスマスイブ。
クリスマスまで駅前公園の大きなモミの木を電飾しているとニュースで聞いたのです。

私は彼のことが好きでした。
彼には地元に長い付き合いの彼女がいたようだけど、転勤先で出会った私と時々デートをしてくれました。
叶うはずのない恋はそれでも日々の彩りとなりました。
映画と読書が好きな彼は物静かな優しい人でした。
嫉妬はちょっぴりあったけど、あきらめみたいなものも感じながら、ゆるくてだるくて薄くて大人の関係。

「子供の頃からクリスマスシーズンの雰囲気が大好きなの。」と伝えたら、彼は最初のクリスマスに小さなツリーとブリキ製のサンタのオーナメントをプレゼントしてくれました。
次の年はニット製の手袋オーナメント、そしてその次の年には小さなベアのオーナメント。
ツリーに飾る増えていく小さなオーナメントたちは彼との思い出。
胸の高まりと同時にどうにもならないあきらめの気持ちが交差するクリスマスシーズン。
会えることもなく毎年静かに聖夜が過ぎていきます。

とうとう春に彼が地元へ転勤になり、彼が私の前からいなくなりました。
訪ねることも手紙を書くこともしませんでした。
決して彼のシーンに現れてはいけないのです。
ぼんやりと募る思いとふと思い出す寂しさと、わずかな喪失感。
そして12月、ホリデーシーズン。
私なりのさよならをしようと決めました。
オーナメントを彼の住む街の公園のモミの木に飾ろうと考えたのです。
そして最後にもう1度だけ会いたい。
「今夜はもみの木の下でお待ちしています。」
手紙は届いたでしょうか。
遅い時間を知らせておきました。
彼女とのデートの後にきっと来てくれると信じていたから。

ツンとした冷たい空気の公園にモミの木がキラキラしています。
オーナメントボックスを抱えて木を見上げました。
箱からそっと思い出を取り出し、枝に引っ掛けていきました。
1つ1つ取り出す度に彼の優しかった言葉や表情が鮮やかに浮かんできます。
私にとっては本物の恋だったのかも知れません。
最後の1つを掛け終えた時、彼が横に立っていました。

⭐︎⭐︎⭐︎

「久しぶりだね。」

「お待ちしていました。このオーナメント覚えていますか?」

「クリスマスに僕が贈ったものと君の喜こんでくれた顔は覚えているよ。」

「今夜全部さよならします。」

「君といた時間は宝物だよ。ありがとう。そして僕は結婚するよ。」

⭐︎⭐︎⭐︎

イルミネーションが涙で滲んだ聖夜。
そっと手を重ねて、そしてお別れ。
さよならオーナメント、さよならあなた。


優しい言葉もつらい気持ちも懐かしい思い出も彼の存在も

運命の風が吹いていっただけ
そうただそれだけ
Remember me もうすぐ
あなたはあの娘と結婚するけれど
ときには思い出して
夢の中のわき役でいいから


遠い昔の懐かしい恋の想い出です。
胸の引き出しからそっと取り出して書き記してみました。
あの時繰り返し聞いていたユーミンの「わき役でいいから」を添えて。


百瀬七海さんのクリスマスカウントダウンのこちらの企画に参加いたしました。
ありがとうございました🤎

皆さまの素敵なクリスマスを祈ります🎄

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