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訪問歯科症例1 義歯紛失履歴のある方の義歯作成の注意点

(事前情報)
・ 患者 女性 80代 1割負担 介護度3 意思疎通可能
・ 主訴 入れ歯を無くしたので作成して欲しい。
・ 既往歴 認知症 
・ キーパーソン ご主人 
・ 口腔内 上下MT 


通常時の治療計画は、入れ歯作成と完成、調整、義歯メンテナンスになると思うが、義歯を紛失したことがある方に関しては、患者背景の中で注意点がいくつかある。

まず、義歯を紛失された方は再度、紛失してしまう可能性がある為、紛失を予防する方法の提案をしなければならない。しかし認知症や介助者の高齢化の為徹底した管理が行き通らないことはよくある。それ故全て任せるのではなく、生活の流れに沿った管理方法を提案できることがベストだ。


管理方法例をいくつか紹介する前に、訪問前のこの事前情報では、少し足りないので、確認事項を整理して効率的に情報収集をしていく必要がある。効率的な情報収集がなぜ必要かは追って説明する。

まず現場での確認事項だが、


追加情報収集項目)
1 いつ失くしたか
2 いつ頃作成した入れ歯か
3 無くした時のシュチュエーション(どこで何をしていて最後の記憶)
4 過去にもあったか今回初めての紛失か
5 食事の状況 入れ歯の作成から完成までの期間
6 古い義歯は持っているか 一時期的な代用の可能性の検討


効率的な情報収集の必要性についてだが、訪問歯科対象者は、既往や慣れない状況もあり不安な気持ちでいる方が多い。不安な状態の方に質問を多くしてしまうとより不安になってしまったり、治療に後ろ向きな気持ちになることもある。また一気に支持されても覚えられない。

治療をするメリットとデメリットについてはしっかり説明しなくてはいけないと思うが、説明すぎると「もういい」となってしまうことも多い。

その対処方法としては、まず大枠で全体を説明し、人間関係を作って性格や生活のスタイルを把握し、治療を進めながら詳しくその都度追加説明をしていくことが重要かと思う。

今回の義歯紛失の方の義歯管理方法としては、初めに色々聞いたり、支持するのではなく、ヒアリングを重ねつつ完成までに入れ歯の管理方法を考えれば良い。


まず紛失した場所について列挙する。


紛失場所の例)
1 義歯を外して置く場所が毎回バラバラでどこに置いたか不明
2 ティッシュやチラシの上におき丸めてゴミに捨てた(本人や家族)
3 物が散乱している机や床に直置き見当たらなくなった
4 冷蔵庫に入れてしまった
5 トイレに流してしまった
6 犬がおもちゃにしていた
7 電子レンジで温めてしまった
8 口の中にあった
9 デイサービスや病院や施設で間違って持っていかれた
10  義歯修理の為、歯科が預かっていた
11  義歯ではなく取れた被せ物を義歯と勘違いし紛失していた
12  布団の下、枕元から出てきた
13  入れ歯が合わなく痛くてゴミ箱に捨ててしまった
14  洗った後食器棚にしまっていた 食器棚のコップの中にしまった
15  カバンの中に入っていた
16  病院の検査の際外して置いてきた
17  歯を磨いた後、洗面所の下のバケツに入れていた

レアなケースもあるが、管理方法をまとめると下記のようになる。


義歯管理方法)
1 置き場所を決める(枕元、洗面所、台所など)
2 保管するケースを決める(お皿やコップではなく専用のケース)
3 整理整頓 部屋と保管場所
4 保管ケースに名前を入れる
5 義歯に名前を入れてもらう 歯医者に依頼する
6 ティッシュやチラシに包まない
7 犬が届く場所に入れ歯を置かない
8 治療中の場合は歯医者に相談する
9 ないと思ったらすぐに周りに確認する(ゴミ箱や生活動作を確認する)

保管場所のオススメは、枕元。義歯は体の一部なので常に近くに置いておく、震災時義歯を忘れて避難し、非常食が食べられなく苦労した声を多く聞く。

一番誰もがやってしまうのがティッシュに包む。本人が一定期間覚えていても、丸まったティッシュが机においてあったら、中身を確認しないでそのまま捨ててしまうのが人間の習慣だ。ティッシュで包むのはゴミなので包まないように。もし一時期的にどうしても包まなければならないのならハンカチやタオルであれば、捨ててしまわないので検討する。

決まった場所に置いてある入れ歯ケースに水を入れて保管する事が理想だ。

また、入れ歯が完成し、管理方法が決まり伝え理解を得られたとしても習慣として定着するまで義歯状況と合わせて管理状況もチェックする事が求められる。


訪問歯科は、患者の主訴だけ解決すれば良いわけではない。口腔内の改善はもちろん、その主訴の原因を突き止め、治療改善後は良い状態を維持する為に状態確認をし、指示指導を患者や家族に寄り添いながら予防できる環境をつくることも求められるのではないかと思う。

口腔内環境維持の為の予防環境の提案まで意識するには、歯科医師の労力は大きすぎる。これからもできるだけ前例をnoteにて記載していきたい。


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