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未来の共食「お裾分けの考察・与える側/与えられる側の想い」

こんにちは。デンソーデザイン部佐藤です。今回は「食を分けること」について、与える側が見ている食材と与えられる側から見ている食材の違いについて、食を媒介として伝わる「想い」について書きたいと思います。

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以前、「食を分ける」行為は一種の社会参加であり、あげる側には強いモチベーションが伴い、オンライン共食に活用すると良いプロセスなのでは?というnoteを書きました。

マンション・ラボさん実施のアンケートによると「同じマンションの住民の方に、おすそ分けをしたことはありますか?(N=2,918)」という問に対し、「ない」が60.4%、「ある」は39.6%という結果。また、あると答えた方の91.2%が「おすそ分けを続けたい」と考えられているようです。食を分かちあい、良い関係を築きたい、これからもぜひ続けたいと考える「支持派」がいる一方、おすそ分けをしない人が半数以上、「おすそわけをそもそも望んでいない」「あまり喜んでもらえなかった」「怪訝な顔をされた」等、もらう側の気持ちは様々なようです。(引用:おすそ分けは嬉しい?困る?マンション住人に聞いてみました。

食材をあげる/もらうの間柄でオンライン共食をすることは関係性向上効果が期待できますが、このアンケートはそれが逆効果:関係にマイナスになる可能性を示唆しています。おすそ分けの品が何にしろ、あげる側ともらう側では全く別なものとして見えているとしたら、それがどのように違って見えるのでしょうか。それを確認する実験・インタビューを実施しました。

果樹園で収穫したぶどうをおすそ分け「する」

以前記しましたが、片道1時間かけてぶどうを収穫。それを友人であるHさんに差し上げてZOOM共食を実施した件。私からみれば相当の労力が払われたぶどうなのですが、改めてHさんにインタビューしたところ私の想像(恥ずかしいエゴの部分をクローズアップして考察。)とギャップがあることがわかりました。それは・・・

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私が想像していたHさんの気持ち:「そんな遠いところまで行って、手間暇かけて採ったぶどうなんですね~。申し訳ない!」「ぶどう畑でおいしそうなぶどうを真剣に選んでくれて、嬉しいな。」

実際のHさんの気持ち:「こんな大きくておいしいぶどうは近所では買ったことが無いな~。申し訳ない!」「ぶどうってこんなに低いところになっているんだ。知らなかった~。」

という結果でした。Hさんいわく「わざわざ行ってもらったことはもちろん申し訳ないけれども、ぶどうのおいしさの衝撃が大きかった。」とのことでした。

長い時間の手間暇をかけて育てた・作った食材でも、その苦労というものは最終的に食べる方にはなかなか伝わらないものです。そう言う片道1時間かけた私でさえも、ぶどう園さんがここまで築いたぶどう畑や、今季のぶどうにかけた手間暇までは察し切れない苦労があります。

しかし、食べ物に掛けた労力や想いがどこまで伝われば良いものかというのもわかりません。重く捉えられるよりも「へ~」くらいで軽く捉えてもらったほうが私とHさんのケースではむしろ有難くもありました。また、貰って迷惑ということでなくて安心しました。

もう1つ実験をご紹介します。

南知多で釣った魚をおすそ分け「される」

同じチームのメンバーが片道1時間弱の南知多まで行って釣った魚をいただき、今度は私がもらう側として、食材である魚を介してどのような気持ちが想起するかを実験してみました。

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実際に釣ってもらったサッパ1匹目。この日の釣果は芳しいものではありませんでしたが、釣った3匹全てを頂きました。労力に加え貴重さアップです。

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慣れぬ手つきで捌き、酢漬けに。手が魚臭い・・・。途中味見をした際には味付けがイマイチ・・・!せっかく頂いた3匹を無駄にできないという焦りも感じつつ味を調えました。

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そして釣って頂いた本人とZOOM飲み会を実施して、サッパの酢漬けをつまみながらお話をしました。釣りの話での盛り上がりはそこそこに、この調理プロセスを紹介すると「そんな苦労をさせて、逆に申し訳ないことをしてしまった。」というコメントをもらいました。何という事でしょう。これではお互いに不幸です。慣れぬ調理というプロセスを挟んでしまったこと、私の至らぬ心遣いが失敗の原因だと反省しました。

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今回の実験から思う事

冒頭のアンケートや実験から、まずは共食をするお互いの関係性により、とびきりのもてなしをすることが相応しいのか、気を遣わせてはいけないのか、という、如何に食材・食事を準備するかの選択が必要だと考えました。それでも、狙い通りの想いが食を通じて伝わるとは限らない難しさを感じました。

どのような文脈で人が集い、食事をするのか。できるだけ狙いを外さないですむ、想いを正しい形で伝えるためには、○○という人間関係であればこのような食事、□□という関係ならこの食事というような、適した「型」・「組み合わせ」・「相性」等がありそうです。次回は、その一案を試した実験について記したいと思います。

今回のnoteは以上です。最後まで読んで頂きありがとうございました。

一緒に実験をしてみたい、「ウチでもこんな取り組みしていますよ」と、アドバイス頂ける方、こちらまでお声掛け頂けますと嬉しいです!