見出し画像

未来の共食 「ZOOMで同じものを食べる・一緒に作る・ふるまう実験」

こんにちは。デンソーデザイン部の佐藤です。「人は誰かと食事をすることで幸せになれる。技術はそれを助ける。」という仮説のもと、実験・考察を行っています。

前回まで「オンライン共食」「配食」について、「採集や調理時に同調するような行動をとる」「食物を分配する」という、食を介して人と繋がる手段について書きましたが、今回はそれら手段をクイックに試してみたいと思います。

※本投稿は株式会社デンソーデザイン部の自主研究活動であり、
弊社の開発案件や事業をご紹介するものではありません

今回の実験の目的

同じものを食べる・同調・分配の手段で、より良く「食を介して人と繋がることができる」仮説を確かめます。

実験の内容

二家族間での効果を行動観察し、定性的に考察します。試した状況は以下の3つです。

① "共食(異献立)"まずは互いに献立を用意し、Zoomでの食事会を実施。
② ”同調”: 同じ食材を一緒に調理(手巻き寿司)、同食事会。
③ "分配": 食材を収穫(ブドウ狩り)、ブドウを半分分配、同食事会。

私と同じ市内に住み、7年ほど家族ぐるみで親しくさせてもらっている知人Hさんと私の家族に協力をしてもらいました。

実験

以下に実験で観察されたポイントを記します。

00149.00_02_32_27.静止画001

①共食(異献立)の実験:Hさん宅は吉野家の牛丼での夕食、我が家は餃子・ごぼうの揚げ物・サラダ。「吉野家」を起点として息子も「この前お店の前を通って。今度食べようねって話していた。」など会話が生まれました。この種の会話は献立が違うことでのアドバンテージといえます。楽しい食事会であったものの、2家庭の場のつながりとしては、まだまだ別々といった感覚でした。

②同調の実験:「シャリ玉で作るスシロー手巻きセット」を両家とも準備。お互いに好みのネタを選びながら、いま何を作ったとか、寿司ネタは何が好き~等の会話が生まれました。

00149.00_30_10_00.静止画003

また、確かに手巻きの作業がこちらでもあちらでも行われていることは「同調作業」として、少なくともネガな効果はなく、場の一体感を生むことに寄与していたと感じます。そもそも視覚的に同じ献立が並んでいるだけでも画面を挟んでも連続感が生まれました。この一体感や連続感はオンライン・画面越しの会話ゆえの不安感を緩和してくれる、つまりマイナスをゼロにしてくれる作用のものかもしれません。

あとは・・・お寿司、おいしかったです。笑

③分配の実験:我々が長野でブドウ狩りを行い、帰宅後にHさんに分配。Zoom食事会の前に、まず収穫の様子を動画で見てもらいました。

我々が訪れた西原農園さんでのブドウ狩りは既に終わっており、少々無理を聞いて頂いて残り少ないブドウ:「ふじみのり」を収穫させてもらったエピソードや、実を切った瞬間に、想像以上の重量が手に伝わり思わず「重い!」という言葉が出たことなどを紹介しました。(下は収穫時の動画キャプチャー)現地では直販も行われていて、実はお昼ご飯代わりにおいしいブドウを家族全員でお腹いっぱいに頂きました。粒が大きく、とても濃厚ですがブドウ大好きの我が家は大興奮でした。

00148.00_02_49_17.静止画006

さて、オンラインに話を戻します。両家のテーブルにブドウ、画面越しに同じ食材が映っているのは②と同様なのですが、自分たちが収穫したものが向こうにもあるという感覚は嬉しいような不思議な感覚でした。画面からでも粒が大きいのがわかりますね!(左:Hさん宅、右:我が家、Zoomキャプチャ)

200924ぶどう

また、Hさんからは収穫に対するねぎらいの言葉をもらったり、我が家からも「おいしい?」「傷んだ部分があるかもしれないから気を付けて」等、相手を気遣う言葉が①②の実験よりも多く聞かれました。ただ、我が家が「収穫し、分け与える」という側である強いバイアスにより、客観的にHさんの喜び度合いを測るのは困難です。ただ、控えめに言っても、採ったものをおいしく食べてもらえる嬉しさというものは良くも悪くも強力で、良い方向に働けば社会参加への強いモチベーションになり、悪く働けば善意の押し付けという形になりそうなポテンシャルを感じました。

今回の結論

共食、同調、分配 が会話内容や相互尊重の意識に十分影響することが確認できました。

・個人差が大きいこと、客観視が難しいことが否定できませんが、収穫したものを与えるという形は社会参加への強力なモチベーションになりうると考えられます。

次に向けて

・次回はHさんと共に、今回の実験の振り返りについて記します。「そんな風に感じていたんですね・・・!」という、意外なコメントもあり、ぜひ楽しみにしていてください。

今回は以上です。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

ご協力頂いたHさん一家、私の家族に感謝の気持ちを込めて。

※「産地と食卓をつなぐオンライン食事会」「オンラインお見合い」「オンライン○○」などリモートで食事の場を繋げる実験に協力頂ける方を探しています。もしご興味のある方がいましたら、クリエイターへの問い合わせまたはコメントをお願いします!