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地元の人はなぜ地元のお店を利用しないのか

伝所鳩でお取り扱いしている製品の多くは、日高町でも、豊岡市でも、但馬地域でも、山陰地方でも、扱っているお店はとても少ないです。全国的にお取り扱いのある知名度の高い商品もあれば、ごくわずかなお店でしか扱っていない商品までさまざまですが、どちらの商品もこの地域で扱っているお店はほとんどありません。

どれも自分たちが自信を持っておすすめするものばかり。それなのに扱っているところが少ないのはなぜなのでしょう。

良いものは価格が高いから?

まず理由の一つは、価格や商品ラインアップがあります。田舎でもそれなりに商品を扱っている量販店などは、客層にあった価格帯の商品を揃えるため、同じ商品なら価格の高いものよりも、安いものを多く扱うことが多いかもしれません。実際、地元の生産者さんが作った商品が、価格の問題で地元のスーパーにすら並んでいないといったことがあります。

また、小さな生産者さんの商品を1種類だけ扱うよりも、サイズ展開があるとか、カラーバリエーションがあるなど、それなりにラインナップの揃っており、安定して供給ができるメーカーさんの商品が選ばれやすいのも現実としてあります。

良いものが少ないのはお店が少ないから?

そして別の観点からの理由として、単純にお店が少ないということがあります。飲食店ですら少ないエリアでは、雑貨や日用品、衣類を扱うお店はさらに少ないです。お店が少なければ、必然的にこの地域にやってくる商品は少ないことになります。

では、そもそもなぜお店は少ないのでしょう。

自分でお店を始める人は、都会でも田舎でもそう多くありません。都会は人口が多いので、ごくわずかな人がお店を始めてもそれなりの数になりますが、人口の少ない田舎においてお店を始めたいと考える人はごくごくわずかです。

それでは、なぜお店を始めたいと考える人が少ないのでしょう。

お店を安定した状態まで成功させるには、とても大変なことです。都会は人通りが多い一方で競合も多いので、そこで成功するのは至難の業。逆に田舎は、競合は少ない分人通りもほとんどないので、こちらも別の意味で難しいです。

ただ、田舎で暮らすようになってみて、お店を始めようと思う人が少ない理由はそれだけでないのかもしれない、と思うようになりました。

地元の人が地元のお店を利用しないのはなぜ?

田舎は都会に比べて圧倒的に不便です。しかしながら、スーパーやコンビニもあるし、ネットもあります。田舎に住んでいても手に入らないものは少なくなりました。便利になることはいいことですが、逆に地元のお店が利用される機会はどんどん減ってきています。だから、お店を始める人が少ないのは、自分自身が地元のお店を利用していないからなのかもしれません。

例えば、どうしても手に入らないものならともかく、近所の酒屋さんで売っているお酒やジュースをネットで買うようになった人は多いと思います。重たい飲み物を買って帰るより断然楽ですし、ネットの方が値段は安いかもしれません。本も同様ですし、家電も同じです。町の電気屋さんで家電だけを買う人は若い人にはほとんどいないでしょう。せいぜい工事や修理のついでという形くらいではないでしょうか。だって、町の電気屋さんで買うよりも、量販店やネットの方が種類も多く、値段も安い。そしてポイントまで付いてきます。

ただ、ネットで何でも手に入る時代になったとは言え、自分が知らなかった本当に良いものを自力で探し出すことはできるでしょうか。ネットで検索をし、価格や人気でソートされた中からレビューを見て選ぶ。それで気に入ったものと出会えることもあるかもしれません。しかし、世の中には知らないものがもっとたくさんあったり、自分に合ったものはレビューでは分からないこともたくさんあります。

田舎のお店の品揃えがあまり良くないのは、お店の規模の問題もありますが、ネットや量販店にお客さんを奪われていったことで、十分な仕入れができなくなってきています。お客さんが少なくなれば、専門知識を持ったお店の方が良い商品を選んで仕入れることができなかったり、地域の人たちの要望や地域性に合う商品を思うように仕入れることができず、この地域に良いものが入ってくる機会はどんどん少なくなっていきます。

もちろん、ネットなどをうまく活用して売り上げを上げていたり、観光地のように県外からお客さんを呼び込んで成功しているお店もありますが、それは地域向けのお店ではないかもしれません。だから、自分たちが良いものと接したいなら、良いものを提供するお店を地元の人が支えていく必要があります。

お店は、利用してくれる人がいなければ良いものを提供し続けることは難しいですし、お店が良いものを提供できなくなれば、その地域に良いものが流れてくる機会は減っていきます。顔の見える身近にあるお店を利用せず、誰から買っているのか分からないネットで済ませてしまうと結果として地域は衰退し、自分たちも良いものと身近に触れる機会が減ってしまう負のループに陥ります。

スーパーや量販店に行けば、いつも同じものが手ごろな価格で置いてあります。テレビやネットでよく見かけたり、有名メーカーのものがそこには並んでいて、それだから安心して買えるとか、できるだけ安くで買いたいという人は多いでしょう。でも、そこに並んでいない良いものは世の中にまだまだたくさんあります。

同じ地域で暮らす人のお店がセレクトする商品には、もしかしたら店主ならではの地元の人へのアプローチが隠されているかもしれません。

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