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経験・知名度ゼロで始めた日用品と雑貨の店が2年を迎えられた話

現在のお店の様子

伝所鳩は、2022年11月でひっそりと2周年を迎えました。これまでお越しくださったたくさんの皆さま、ほんとうにありがとうございます。

周年イベントなどは行いませんが、少しだけお店のことを振り返りながら、今後考えていることを少し綴ってみようと思います。


誰も知らないお店の始まり

近くの知人が持って来てくれたお花

今から2年前。コロナ真っ只中の2020年11月に、伝所鳩はひっそりとオープンしました。コロナ渦ということもあり、盛大なオープニングイベントもなければ、宣伝も一切なし。ご近所の方への挨拶すらできず、むしろ人を呼んでいいものだろうか…と、お客さまとの距離感も難しいスタートでした。

僕らの小さな取り組みを知っていた、ごくわずかな友人や家族からのお祝いのお花とともに、ひっそりと始まったお店は、おそらく目の前に住んでいる人たちですら、お店が始まったことを知らなかったでしょうし、今お付き合いのあるご近所の方々、足しげく通ってくれている常連のお客さま、どなたも知らなかったと思います。まさに、知名度ゼロからのスタートでした。

2020年のオープン前の様子

伝所鳩は、自分たちが使ってみて本当に良いと思ったものを詰め込んだお店です。誰かに「こんなお店を作って欲しい」と求められて作ったものではありませんし、スーパーのように毎日の生活に無くてはならないお店かというと、そうでもありません。

今の時代、地方に住んでいても、ネットを使えば手に入らないものはほとんどありません。伝所鳩で買えるものもネットで手に入るものが多くあり、もし明日ここが無くなってしまっても困る人はいないはずです。

だから、お店はどうあるべきなのか、お店の価値はなんだろうか。そんなことをこの2年間で自問自答を繰り返しながら、営業を続けてきました。そして、今2つの結論が見えてきました。

お店の価値とは

ものとの出会いの場

繰り返しになりますが、地方で手に入らないものはほとんどなくなりました。しかしながら、欲しいものが明確になく、まだ見ぬものをネットで探すのは至難の業です。山ほどある商品の中から、写真や価格、レビューだけを見比べ、その中で本当にいいもの、自分に合うものを見つけるのは大変な作業ですし、見極める知識も必要かもしれません。

ものの選び方、探し方は、誰しもができることではなく、そこの間を取り持ち、「もの」と「お客さま」との出会いのきっかけを作ることができるのは、お店の一つの価値のように思います。伝所鳩のコンセプトである「いつもの毎日に、誰かのまいにちを届ける」には、そういう意味も込めています。

ごはん専用土鍋

例えば、炊飯器が壊れてしまったら、ほとんどの人は新しい炊飯器を探すことでしょう。しかし、少し目線を変えれば「土鍋でごはんを炊く」という選択もあります。炊飯器と同じくらいの短時間で炊け、メンテナンスは炊飯器よりも簡単。なにより美味しそうなイメージのある土鍋ごはんを簡単に自宅でできると聞けば、炊飯器じゃなくてもいいのかも?と思ってきませんか。

藍染めで染め直したシャツ

1万円近くするTシャツではどうでしょう。値段だけ見ると高く感じるかもしれませんが、1年でダメになってしまう安価なものよりも、ずっと長く着られる耐久性やデザイン性のものだったり、修理をすることもできたり、染め直して生まれ変わらせることができたりと、長い目で見ると決して高いものではないかもしれません。これは値段で簡単に見比べることができるインターネットでは分かりづらいことであり、そういうことを提案できるのが、お店の良いところだと思います。

ものの価値を知った上で買う

もう一つは、ものを買う際にどういうものなのか、ものの価値を理解して買えるということ。量販店やスーパーでお買い物をするとき、一つ一つ説明を聞きながら買うことはほとんどないですし、ポップに説明が書かれていることも少ないでしょう。大きなお店で、商品数もものすごいお店では、店員さん自身が全てを使った上で販売しているわけでもなく、どういうものなのか分からず販売しているケースもあるかもしれません。商品のことを聞きたくても、そもそもなかなか店員さんが捕まらなく諦めてしまったなんてことも経験のある方は多いのではないでしょうか。

福岡県で久留米絣を作る工場

伝所鳩は、できるだけ生産現場に足を運び、作り手と話し、どのようにものが作られているのか、どういう方がどのような場所で作っているのかを知った上でお取り扱いをしています。もちろん全ての生産者さんの元へ足を運べているわけではないですが、そういった商品でも、実際に自分たちの生活の中で使っているものがほとんどです。

どのように経年変化するのか、耐久性、お手入れ方法などはどうか。この場所でお客さまが出会っていただいたものと長くお付き合いしていただけるよう、自分たちの経験談も含めながら、メリットもデメリットもできる限りのことを伝えてものを選んでいただけるよう心がけています。ただものが売れればいいのではなく、長く使ってもらいたい。もし壊れてしまってもまた同じものを選んでもらいたいと思って販売しています。

そして、さきほどの1万円のTシャツのように、なぜその金額設定なのか。人気がありプレミア価格が付いてるわけではなく、たくさんの方が関わり、手間と時間をかけて作っているからこそその値段であり、その1万円がどのように作り手に還元されているのか。そんなことも含めて伝えていけるお店を目指しています。

2022年の様子

伝所鳩はこうした少し手間のかかるやり方を続けながらも、この2年間の間に少しずつ商品を増やし、今では所狭しとものが並ぶお店になりました。

お取り扱いのメーカーさんも倍以上に増え、商品点数はオープン時に比べると20倍ほど。在庫数も10倍以上で、ガランと広かったお店がずいぶんと狭く感じるようになりました。これだけの商品が揃った今、ようやくお店らしくなり、スタートラインに立てるようになってきたと感じます。

無理に宣伝しない

お店の前は人通りがなく、冬は雪に覆われる日も

お店をスタートした当初「こんな場所にお客さんが来るわけない」と、改修工事を手伝ってくれた大工さんに言われました。近所の方からも「もっと宣伝した方がいいんじゃないの?」と言われることもあります。確かに、扱っているものは自信を持っておすすめするものばかりだけど、本当にこんなところへお客さまに来てもらえるだろうかと、不安がなかったと言えば嘘になります。

しかし、2年間の営業でお客さまがゼロだった日はありません。雨の日も大雪の日も、台風の日も。もちろん1人、2人だけの日もあり、光熱費の方が高いんじゃないかと思うくらいの売り上げの日もありました。でも、お客さまがいらっしゃらなかった日は、幸いなことにありません。

新しくお店を始めるとどうやってお客さまに来ていただくのか、どうやって知ってもらうのか、集客はどのお店も苦戦することの一つだと思います。広告費を払って雑誌やフリーペーパーに載せてもらったり、新聞に取り上げてもらったり、チラシを作って配るのも一つの手です。方法はいろいろあると思いますが、伝所鳩でこの2年の間に広告費は使いませんでした。

住宅地にあるお店は、大勢のお客さまが一気に集中しても周りに迷惑をかけてしまいますし(そんなことはまずないですが)、来てくださったお客さまもゆっくりと選ぶことができません。なにより欲しいものがなく、見るだけで帰ってしまったり、写真だけを撮って帰ってしまうお客さまが増え、消費されるだけの場所にはしたくなかったので、自分たちでコントロールできない無理な宣伝はしないようにしました。

それでは、陸の孤島でもある田舎町のさらに人通りがほとんどない住宅地で、僕らがどのように集客してきたのかお話したいと思います。

宮田織物さんの企画展

1つ目は、ネットの発信。伝所鳩では、オープン当初から1日も欠かさず発信を続けています。1年目は毎日1回の365本、2年目は毎日2回の730本の投稿を繰り返したことで、投稿を見てお店を知っていただいた方も多いです。日々の営業とは別に自分たちで発信するというのは、大変なことでできないお店も多いと思います。しかし、発信もお店の大切な仕事の一つと捉え、来る日も来る日も続けてきました。決して優れた文章である必要はなく、必要なのはとにかく続けるという根気だけです。これの良いところは、ジワジワと広がっていくこと。そして、お金を払って宣伝したものではなく、自分たち自身の言葉で発信した内容を見てきてくださったお客さまは、お店とマッチする方が非常に高いということ。

2つ目は、イベント。伝所鳩では、毎月2~3個のイベントを自主企画しています。2022年に開催したイベント数は、32個にもなりました。毎月イベントを楽しみに来て下さる方や、イベントを目的に遠方からわざわざお越しいただける方まで、こちらも大きな集客の柱となっています。また、最近では作り手さんからもイベントを一緒に企画したいとありがたい声をいただけるようになり、来年はさらに趣向を凝らしたものにしたいと考えています。

このあたりの宣伝方法に関しては以下のnoteでも一度書かせてもらっているので、合わせてご覧になってみてください。

広告費を使わずに集客ができているお店は、一見すれば儲かっているように思われるかもしれません。しかしながら、ものの価値を知るために生産地を訪れたり、毎月いくつもイベントを企画するというのは、時間も体力も、そして「お金」もかかります。広告費を使っていないものの、そういう意味での資金はかなり投資しています。

お客さまの数も、この辺鄙な場所にしては来ていただいている方ではありますが、やはり人通りの多い場所に比べたらずっとずっと少ないのも事実です。利益の出ないイベントも多くあり、儲かっているかと言えばそんなことはないですし、もっと儲かるやり方があるのかもしれません。だからこそ、今のやり方が本当に正解なのかどうかは、これからも試行錯誤が続きます。

3年目で変わること

お店の周りは住宅地が並びます

とにかくがむしゃらで走り続け、変化し続けてきたこの2年間。3年目も守りに入らず、また少しお店は変化をしていきます。

まず一つ目は、営業日を変更する予定です。

伝所鳩のある地域は、お店がとても少ないエリアです。だから、オープン当初、お店がいつも開いていることが重要だと考え、土日も祝日も年末年始もGWも開けて、ほとんど休みを取らない形で最初の年はスタートしました。

しかし、商品数が増えて在庫管理が大変になってきたり、イベントの数も増え切り替え作業が間に合わなくなってきたりと、他の仕事にも影響が出てくるようになりました。そして、営業してみて分かったのは、営業時間が長くても短くても、お客さまの数はあまり変わらないということ。そこで2022年は、月・火・水の3日間を定休日という形にしました。

この形で1年やってみて、営業日もようやく周知され始めてきたのですが、次なる一歩を踏み出すため、3年目である2023年は、さらに木曜もお休みにし、定休日を1日増やす方向で考えています。前述したようにイベントを、さらに濃いものにするため、インプットとアウトプットをする準備の時間をしっかりと取りたいという考えからです。

また、この地域でお店をやってみて地域の課題も見えてきました。市街地から少し離れた日高町という町は、お店が少なくいわゆるベッドタウンのような場所。住宅は次々に建つ一方で、商売を始める人はほとんどいません。休日になると多くの人たちは、市街地や別の町へと遠出してしまい、自分たちが暮らす町で過ごす人は少ない場所です。

もっとこの町をおもしろくしたいし、地域内で消費が起こってほしい。そんな考えのもと、次なる場所を作っていきたいとも考えています。お店を3日間でしっかりと回しつつ、地域に場所や仲間を増やしていくことを来年は計画しています。

新しい場所「キッチンスタジオ」

伝所鳩のある日高町

ここ1年ほど、意識的に外へ出る機会を減らし、日高町で過ごす時間を増やしました。さらに、思いっきり地域内でお金を消費するよう心掛けてみました。普段のお買い物、外食、お歳暮・お中元といった贈り物まで、少しくらい値段が高いとしても、可能な限り地域内で賄うようにしてみたところ、何にもない町だと思っていた日高町という町のことを僕ら自身がだんだんと好きになっていきました。

この町をもっと魅力的で、パワフルな町にするため、飲食店をはじめたい方、お菓子などのスイーツを小さく販売してみたい方、そんな小さく挑戦をしてみたい方たちの発信をお手伝いする場所として、2023年に伝所鳩の中に小さなキッチンスタジオ「だしフォトスタジオ」を作ろうと、再び建物の一部の改修工事を始めました。

できたてを撮影することができます

キッチンスタジオでは、その場で調理を行っていただくことができ、まだ湯気が出ているくらい熱々の状態でプロが撮影できる環境をご用意します。そこで撮影した写真を使って発信を行っていくことで、集客や認知度の向上に繋げ、ゆくゆくは町内で起業していく方が増えればいいなと考えています。

もちろん既にあるお店のメニュー写真などの撮影のお手伝いも可能です。伝所鳩で扱っている食器などを使ったコーディネートもできるので、お店にキッチンが併設されたスタジオだからこその写真を撮影させていただきます。(※基本的に日高町内の事業者様、もしくは日高町内で起業を目指す方に限らせていただきます)

変化し続けるお店

手づくりの看板

伝所鳩は、僕ら夫婦が好き勝手に始めたお店です。勝手にはじめて、勝手に来て下さるお客さまがいる。そんなちょうど良い関係性ではありますが、2年間この場所でお店を続けることができたのは、間違いなく足を運んでくださるお客さまがいたからこそです。そして、いつも遠くから協力してくださっている生産者さんの皆さまもそうです。

見よう見まねの素人が工事をして作った不格好なお店に、こんなにもお客さまが足を運んでくれるというのは、今でも信じられない気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございます。

3年目も激しく変化を続けていくと思いますが、ワクワクすることをこの場所でたくさんやっていきます。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

最後に

左:暖々はんてん/右:脈々はんてん

伝所鳩では、1周年から周年を記念して、福岡県のわた入れはんてんの老舗「宮田織物」さんと一緒に、オリジナルのはんてんを作らせていただいています。

1周年は、豊岡のどこまでも続く山々をイメージした「脈々はんてん」を、そして2周年は、その山が紅葉していく様子を表した「暖々はんてん」をリリースしました。

特別な周年イベントはできませんが、よかったら伝所鳩オリジナルはんてんで2周年を記念したいと思います。暖かいのは言うまでもありませんが、どちらも伝所鳩らしさが出たものに仕上げていただいています。今年の冬は、このはんてんで暖かくお過ごしください。

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