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秘伝のノートと町工場 三陽電工株式会社 後編

電線アンバサダーが全国の会員社さんを取材するシリーズ、電線ノート。
今回は、埼玉県戸田市にある三陽電工株式会社さんへ行ってきました。


オフィスの中に新しい電線を開発するためのスペースを持つ牧野さんにお話を伺いました。

「私は回路や通信機器の開発に携わってきました。そこで培った知識をもとに、よく遊んでいるんです。当時の社長も形になったら製品にしよう、どんどんやろうと言ってくれて。電線だから端と端をつないでおしまいと言うのでなく、電線そのものに新しい機能を付けられないかと思って開発しました。」

それが2017年に開発されたサンサーモというケーブルです。
一見、何の変哲もないケーブルに見えます。

「こちらは、ケーブルの中に小さなセンサーがポイントごとに入っていて、置いた場所の温度が測れるようになっています。元々、まったく別の用途を予想していたのですが、作ってみたら土木工事で使われるお客さんがいるなど、思いも寄らない提案をもらいました。そこでも温度を測っていたんだと驚くことが色々ありますよ。」

ケーブルの一点にだけ触れてみると、そのポイントだけ温度が変わっているのがモニターで確認できます。ケーブル型の温度計ということですね。
これはおもしろい!
「地質調査で地面の中を計測する際に活用いただいたり、特殊な工法でトンネル工事をする際の地盤の温度管理に使われたりしています。土木関係では大手のお客様にもたくさんご利用いただいており、ありがたいことに好評をいただいています。」

金田さん
「普通のケーブルや電線にプラスαの提案ができるのが私たちの強みです。他にも当社ではビルの窓拭きロボット用のハイテンションケーブルも作っています。とても丈夫で、300キロの重さに耐えられるんですよ。当初の目的だけでなく、照明を吊り下げたり、船のブイを巻き上げるために使えたりしないかなど、相談は増えています。」

サンサーモを加工するのは、加工部の秋谷真由美加工部主任です。

「撚り合わされた導体から細い線を二本だけ引き出し、切ってからセンサーをはんだ付けしています。1日40箇所付けることもありますね。元々技術があったわけでなく、この会社に来てから学びました。はじめはとても苦労し、特にセンサーは最初の1つを取り付けるのにも一週間くらいかかりました。」

よどみない手つきによって一瞬で作業が終わり、びっくりです。
このすごさ、伝わるでしょうか?

さらにセンサーが付いた導体は、一般的な被覆と同じようにするだけでは表面に凹凸ができてしまいます。そこを滑らかにするのにも、すごい技術が必要なんです。

井川「ものづくりの業界に飛び込むまでは、恥ずかしながらボタンひとつでものが出来上がってくるのかと思っていたのですが、決してそうではないんです。一つのアイデアを牧野さんが形にして、技術のある社員さんが製品にしていく。できないこともまず会話で考えてみることが大切なんです。
わかりやすく注目を浴びる場所でなくとも、一番いいと思える素材、技術を集め、自信のあるものづくりをしています。なかなか見えないからこそ、そこを評価していただけると、とても嬉しいです。」

大先輩と若手のつながり、社内から社外まで伸びるつながり。
技術力に支えられた好奇心が、ここにしかない電線を作るのです。
今回ご協力いただきました三陽電工株式会社の皆さま、ありがとうございました!

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