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「公共交通は生活インフラとして、みんなで支えるもの。そのために電脳交通がいま考えていること」代表取締役社長 近藤インタビュー

最近、社内の打ち合わせで代表の近藤が「電脳コネクト」という言葉を用いるのをよく見聞きします。タクシーにおける外部連携、集客への貢献、配車システムの価値向上・・・コロナ禍で劇的に変化した地域交通の状況を踏まえ、寄り添いながら、いま電脳交通が考え今後取り組んでいくことについて、代表近藤に聞きました。

電脳交通の創業前から「業界の内と外が連携しやすい仕組みが必要」と思っていた

―電脳交通創業前、吉野川タクシー時代に取り組んでいた新規事業や外部連携について教えて下さい。

当初は顧客層を拡げるようと妊婦送迎サービスや児童送迎サービスなど新しい取り組みを展開した際に、「社会的にも意義があるから」とテレビや新聞に取り上げられて、その結果吉野川タクシーを知ってもらったり顧客が増えるきっかけになった結果、業績が回復しました。

ほかにも集客や業務改善のためのコンテンツやトランザクション(決済)サービスを色々と調べたり試しました。一度2013年にある観光サービスのベンチャー企業と共同企画をやったんです。
その時、実際に徳島に観光客が企画を通じて来たんです。

この時「外部連携して弱みを消し合う座組みは良い」と思いました。
当時タクシー会社は「自発的な取り組み」が苦手だと考えていたのですが、タクシー業界の外と連携することでこんな成果に繋がるんだと。

―「弱みを消し合う」とは?

先ほど話したとおり、集客力を高める取り組みを独自で企画したり、社内DXを進め業務効率を高めることを内部リソースを使って取り組むことができる人材が不足しています。一方でタクシー業界の外から見ればこの業界は色々なルールや規制があり、「許認可ビジネスなので足を踏み入れづらい」と思われています。その苦手・わからないことを消し合うと感じました。

でも、平成元年頃のピークから縮小したとはいえ、未だに国内タクシー市場は1.6兆円規模で、国内のソーシャルゲーム市場とほぼ同じ規模です。この市場に事業企画やマーケティング企画できる人が入ってきたら、双方にとってとっても良いことだと思いました。

だから吉野川タクシー時代から「業界の内と外が連携しやすい仕組み」が必要だな、とずっと思っていました。

吉野川タクシー

(経営再建のために新しい施策を試行錯誤していた吉野川タクシー時代)

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集客・業務改善の両面に貢献する、タクシー業界の内と外を橋渡しする

―「タクシー業界の内と外が連携しやすく」で最近推進していることは?

最近、社内打ち合わせで”配車システムの価値向上を考える概念”としてよく使われるのが「電脳コネクト」という言葉です。
これは2つの特色があります。

1つ目の特色は「電脳交通が集客、業務改善の両方に貢献する」点です。
これまで電脳交通は配車システムの提供を通じて、業務改善や財務会計上のコストカットに貢献してきましたが、その間も国内のタクシー会社6,000社のほとんどが企画や新規事業、マーケティングにリソースを割り当てづらく「集客をどうしていいかわからない」という声を聞き続けていました。

そこで特に今年からは「タクシー配車デバイスとの連携(※1)」「事前確定運賃サービスの提供(※2)」「配車アプリ連携(※3)」といった配車システムの機能や連携で集客に貢献するぞ!と打ち出しています。

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(日本で初めて「電話口でタクシーの事前運賃確定サービス」を運行開始する広島で今年7月に共同記者発表を開催)

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2つめの特色は「タクシー会社と外部ベンチャー企業等との橋渡し」です。
タクシー業界は規制やルールがあるので外部から歩み寄りづらく見えますし、一方でタクシー会社側から歩み寄りたくてもそこに十分なリソースが充てられない。

電脳交通は配車システムの拡張性で両者を繋ぐことができるし、タクシー会社発祥だから業界の商習慣や規制についても詳しい。社内にも企画や事業開発が出来るメンバーがいるのは、両者を繋ぐ上で良い立ち位置・立場だと思います。

タクシー業界は、長年規制などによって守られた結果市場が成熟したので、様々な変動要因がある他のビジネスに比べて、合理化すべきポイントや課題が明確だと思います。

これは複雑な変動要因の中で、色々なビジネスに関わってきたBizDevやマーケティング職の人から見て魅力的だと思うし、業界にもそういう人が求められていると思います。

電脳交通のシステムと人が、双方を繋ぐハブになれると思います。

電脳コネクト図

(配車業務をコアに、社内外と連携して顧客接点や基盤をつなぐ)

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ータクシー業界自体、そういった外部連携を求めているタイミングだと思いますか?

そう思います。
電脳交通を創業以来、ひたすらタクシー事業者の声に耳を傾け続けて、社内にも大手IT企業やベンチャー企業出身のメンバーが増えて、実際に新規事業やシステム開発力が上がりました。

そして吉野川タクシー時代から思っていた「タクシー会社は企画や新規事業ができる人材が不足している」の仮説が現実化しました。正確に言えば「事業やマーケティング企画をやり続けるためのテクノロジーが進化しておらず、更にそれらを運用できる人材が不足しているということです。」

電脳交通への出資を通じて、第一交通さまやエムケイさま、他にも日本交通さまなど業界の雄と呼べる、大企業と対話し続けて気がついたのは、あれだけの企業でも同様の課題を抱えているということです。
昨年10月電脳交通に出資・提携して頂けたのも、彼らが実践したい社内DXに必要なテクノロジーと、導入後の運用面まで向き合うスタンスがあることで、相互補完関係になったものだと思います。

それと同時に、昨年の新型コロナ流行による業界全体の不況も「いまやらなければ」のきっかけになったはずです。これまで自前主義で考え・進めていた企業が「現実的に生き延びていかなければ」と考えている。その人達に向けて電脳コネクトを「タクシー会社の新たなマネジメントのやり方」と提示すべきタイミングになったと。

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(昨年10月の資金調達では、大手タクシー事業者だけでなく金融、商社、交通系CVCが新たに加わった)

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公共交通という生活インフラを支えるために、電脳交通が貢献できること

―タクシー業界側が欲している、外部の事業作りやマーケティング出来る人物像というのは?

第一に「論理を超えた話に付き合うことができる人」じゃないかな。
合理的に考えればこれが最善、がそのまま進まない。ウーバーが日本に上陸してからの展開を見ても、恐らく他の国への進出ほどうまく行っていないはず。

だから「最終的に理想的な形に変えられるなら、テクノロジーの浸透は漸次的に進んでも良い」と待てる人じゃないと難しい。
もちろん合理的な判断は大事、だけど同時に「明日・明後日にすぐ変わらないけど、徐々に変えるための対話を継続できることはもっと大事。

その人なりの知見や経験がある人でも、それを振りかざすのではなくて目の前の人や事象を丁寧に観察して「なぜこうなっているのか、こう言ってるのか」を踏まえて、最善のコミュニケーションが出来る人が理想じゃないかな。

―電脳コネクト、がタクシー業界以外にも今後広がる可能性は?

可能性はあると思います。そもそも「公共交通」は概念的に地域に関わるみんなで支えていくべきもの。ただ許認可が必要なビジネスだから参入しづらい印象を持たれています。

地域の公共交通を支えることを、タクシー業界「のみ」で考えても、資本力があるタクシー会社はほんの一握りだし、昨年からの新型コロナでどの会社も資産を減らしています。

「公共交通」という言葉通り、本来は生活インフラです。
例えばエネルギー企業はバランスシートを重視し、「何があっても会社を潰さない」ことを重視します。他の交通機関なら鉄道会社もファンド(投資会社)を持っています。タクシー会社の経営基盤はそこまで強くない。1社1社の努力にだけ任せるのではなく、インフラ維持の一環としてもっと多くの資本が参入したほうがいいと思います。

―参入する側のプレイヤーにとって、電脳コネクトはなにが魅力的だと思いますか

もし本当に交通インフラ存続のために経営参画や投資をする場合、会社の経営状態を知る必要があります。財務会計データはバランスシートを見ればある程度把握できます。
しかしこれまでアナログで管理していた営業状況とか配車やドライバーの特性などの情報は把握が難しい、ここについて電脳交通のシステムはデータベース上こうした情報を蓄積しているので、参入したいけどタクシー会社の経営や状況がわからない会社に提供することも出来ると思います。

タクシーは24時間・365日稼働するので、状況把握に時間はかけられません。タクシー会社が持つ資産や業務プロセスをデータで迅速に把握できたら、参入障壁や投資ハードルを下げてあげることが出来ると思います。

また、電脳交通を介してコミュニケーションすることで、把握すべきルールや進める手順などを社内メンバーがアドバイスできるのも、「すごい技術はあるけど、業界の作法がわからない」会社にとって価値があるはずです。

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(昨年から開始されたJR西日本のMaaSアプリ「setowa」とのシステム連携では、移動時のタクシー利用もアプリ内から行えるようにした。)

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インフラが生活の中に溶け込めば、「行く、乗る」で完結するはず

―最後に、電脳コネクトの取組みが拡がった先の未来像について

抽象度高いですが、「すべての移動体験がポケットに入る世界」です。
パソコンからスマホが登場して日々の体験性が変化したようなイメージ。

生活に溶け込んだインフラって、使う手順が自然で簡単じゃないですか。蛇口ひねれば水が出てスイッチ押したら電気がつく。

でも移動の場合、交通系ICカード等で自動改札通る以外は、電話をするとかきっぷを購入するとか予約するとか、アプリでタクシー呼ぶとか。小さいタスクが多い。「行く、乗る」で完結しない。

そこまでスムーズにするなら、交通ビジネスだけでなく異業種連携しないと難しい。タクシードライバー時代から、乗せたお客さんから「こうなってくれたら便利だけどねえ」と聞いていた世間話を、本当に実現させる鍵を握るのが電脳コネクトだと確信しています。

利用する側が便利になるだけでなく、ドライバー側の意見に耳を傾けて改善する機会も少ないですし、それらを反映してサービス改善に活かすこともしていきたいです。

タクシー業界は就労者の高齢化も問題になっています。
こうした取組みを推進すれば、ドアツードアのサービスがもっと活発にして向上させるために自分も貢献できるかも!と若い人が増えると思います。
それと同時に、ベテランの方も楽になると思います。人手不足で「俺がやらないと」が少なくなって任せることができる。

経営改善して、売上や利益率が上がれば経営が骨太になる。「これまで業界になかったエッセンス」が入ることで、むしろいまいる人たちは楽になると思います。

とはいえ、電脳交通の事業規模自体がまだまだこれからなので(笑)
コストダウンや経営効率化、業務効率化には寄与するだけじゃなく、集客側にも貢献して、外部と繋ぎやすくします。を体現する最初の一歩だと思っています。

電脳交通自体がもっと骨太になることで、信頼が増して安心される・頼られるようにならないといけないな、と思っています。

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