「入れ替わり」

焼夷弾が降ってきた。僕はそれをぼんやり眺めていた。ああ、痛い。ああ、辛い。いや、もはやそんなもの吹っ飛んじまった。ああ、あの爆撃機に乗っているであろう男と入れ替われたらなあと僕はぼんやり思った。すると実際、そうなった。僕はあの、僕と僕の家族を殺そうとしたパイロットになった。僕は祖国に残した妻と子を思った。妻は痩身で息子は1歳児だ。帰ったらこのゲームで僕がいかに活躍したか妻に教えてやろう。でもあいつは話を聞きながら、眉を少ししかめるんだろうなあ。それは嫌だけども、ここよりはマシだ。ああ、焼けてる焼けてる。壮観だ。しかしあの逃げ惑う奴ら。なんだか楽しそうだな。ただ操縦桿を握っているだけの僕に比べたら、彼らの人生の充実は素晴らしいものだな。もしかしたらあっちの方が幸せなのかもしれない。僕はそう思った。するとその通りになった。僕の家は焼け焦げてしまった。ああ、思い出が、破壊される。でも操縦桿を握るよりこのほうがましだな。ああ、川だ。人々がなだれ込んで、ああ、僕には妹がいたんだな。親友とくっつけたくて、いろいろ画策していたんだな。可愛い妹に、楽しいあいつ。あいつらはどうしたんだろうな。ああ、僕はここで溺れ死ぬのかな。僕は空をぼんやり見上げた。爆撃機は僕を見もせずに、悠々と去っていった。

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