「なぜ助けない?」ショートショート
「見ていなさい。あの子供が死にますよ」
「あの子供が?」
「見ていて」
「どうしてそんなことが分かるのです」
「僕は見たのです。千代田の図書館の写真集のコーナーで、この子供の上半身と下半身が真っ二つに割れている写真を」
「な」
バァンと破裂音がした。敵の迫撃砲らしい。
「ほら!やっぱり死んだ!」
僕は驚き目を白黒させた。
「あなたが撮るんです」
「え?」
「そうか!あの写真を撮ったのはあなただったんだ!そうか‥」
僕は写真家魂から、その子供を撮影せずにはいられなかった。
「お会いできて光栄です」と彼は僕に握手を求めた。
「あなたはきっと世界的な写真家になりますよ」
そう言って彼は去っていった。
子供の前に、僕だけを残して。
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