見出し画像

辺境を歩いた人々  宮本常一

江戸後期から明治にかけて日本の辺境、主に北方・南方の国土を歩き調査した近藤富蔵・松浦武四郎・菅江真澄・笹森儀助の評伝とその成果を、思うに中学生向けに編纂した人物伝。
八丈の調査を行った近藤富蔵は流刑者。松浦武四郎は三重の半農半武の郷士。菅江真澄は愛知生まれの終生の旅人。
笹森儀助は青森弘前出身の武士の子。夫々出生は違えど大した人たちだと知れる。
八丈の富蔵にP56、北海道調査の武四郎にP42、東北北海道の真澄にP64、沖縄台湾調査の儀介にP96を割いている。
人の生き方として非常に勉強になった。中でも、流罪となっても八丈の人々と接し地誌録を残した近藤富蔵。そしてこの著の白眉とも言うべき最も長いページ数を充てがわれた笹森儀介は面白くて一気に読めてしまう。
天明の浅間の噴火と大飢饉の中まさに信州と東北を旅をした菅江真澄の著には驚くほどの飢饉の実情が口伝としても残っている。馬を殺して食うのに「耳から熱湯を注ぎ込む」等は初めて知ったことだ。子殺し人食いの記述もある。沖縄を旅して調査した笹森儀介の著には沖縄を占領地とした薩摩の暴虐とそれへの憤慨が残されている。
凡そ、日本を知るうえでこのような記録はつぶさに読まれるべきであり、後世に残すべきものだ。

この記事が参加している募集

#読書感想文

189,023件