den

山の中の一軒家在住 電気屋の一人親方

den

山の中の一軒家在住 電気屋の一人親方

最近の記事

前川佐美雄 楠見朋彦 笠間書院

コレクション日本歌人選の中の1冊120Pほどの殆ど小冊子に近い薄い本に47首の短歌を選び、尚且つその歌人の人生を語ろうという無謀にも近い1冊。 各章ごとに1首の短歌、その解説から歌人の生活、動向、その後等々そんなの無理だろう?と思いっきり詰め込んである。 勢い、それを受け取った読者は目いっぱいの宿題を投げつけられて右往左往し、結果として何の本だったか忘れてしまう。 短歌を味わいたいご仁には超絶お勧めしない。 宿題が多すぎて頭が破裂するからだ。 ここから敵の無謀な機銃掃射を掻い

    • 山中智恵子歌集  国文社

      再読である。以前にも書いた覚えがあるので再掲となるかもしれない。 1977年版の現代歌人文庫中の1冊。 山中智恵子の前半とでも言っていいのか「紡錘」全編、自選歌集として「空間格子」抄「みずかありなむ」抄「虚空日月」抄「未刊歌集」抄、の他、歌論3篇、プライベートルーム4編。他に北川透、原田のぶ雄、高柳重信氏の評論がつく。短歌は皆さんで読んで頂きたいとして、今回書くのは歌論などについてだ。 先に読了した「ねむらない樹 vol9」で水原紫苑、川野里子、大森静佳女子が引き合いに出して

      • 山中智恵子 歌集 水原紫苑編 書肆侃侃房

        山中智恵子の歌集、1925年-2006年、「現代の巫女とも評され女流における前衛歌人の代表的存在である(Wikiから)。 この人の歌集をどれほどの人が待ち望んでいたか、かく言う私も実に実に待ち望んでいた。そして私が大変失礼ながら神と崇める水原紫苑様の編で読む日が来るとは夢のようである。 とかく難解、と言われる山中智恵子であるが、難解だけではなく来歴やその日常まで、知ろうとするだけで相当難渋する歌人であり、その姿を紹介頂くには短歌界のご仁でなければ無理と思う故、水原紫苑は全くも

        • ヴァージニアウルフ 短編集

          200P 程に17の短編が集められた1冊。 書かれた時期、長短もあり楽しめるのか散漫なのか良く分からない。 よく「意識の流れ」と言われるウルフの作風だが、このような過剰な自意識は現代人の殆どの人が日常的に持っているものなので、その言葉の意味も不明確ではある。 だが、この1冊の中ではウルフらしい良作もある。 「書かれなかった長編小説」がぴか一に面白い。細切れにした心理描写と錯綜し前後し否定と跳躍を繰り返す独白の連続はどこかで読んだことがある。日本で言えば吉松剛三の詩など、ちょう

          燈台へ バージニアウルフ新潮文庫

          何度か手にし、挫折した1冊。文字が小さく第1部から細かい描写が非常に煩雑に思えるからだが、この1冊を読もうと思えば第1部は斜め読みすることをお勧めする。そうでなければ挫折するだろう。 第2部の散文詩のような短い章からぐっと惹きつけられるはずだ。第3部はかなり読めるし素晴らしいとさえ思う。リリーが放り出していた絵を描こうと決心する場面は非常に感銘を受ける。 解説など読めば終段で全ての人に解決?の光が差すとまで言い切る人もいるが、私には中々そうは思えない。はっきり解決の光を見るの

          燈台へ バージニアウルフ新潮文庫

          神崎宣武  盛り場の民俗史

          神崎宣武  盛り場の民俗史 岩波新書93年出版。 第1章盛り場の昼 第2章盛り場の夜。 昼は香具師(やし)的屋(てきや)の歴史と世界が、夜は概ね上野界隈の花街の歴史が語られる。 夜の部は「成駒屋」を読まれた方には既読の場面も多いが歴史的には江戸時代や一部それ以前からの史的論考が含まれる。 この著で面白いのは的屋の世界だ。的屋の歴史的は成立やその推移、明治以降、昭和への波乱の歴史は非常に面白く一読の価値がある。今は消えてしまった芸の一覧なども記述があり大いに興味を惹かれる。食い

          神崎宣武  盛り場の民俗史

          聞書き 遊郭 成駒屋   神崎宣武

          初版は平成元年1989年の出版。文庫本として2017年、30年を経て「ちくま文庫」として出版された。 民俗学や神崎先生を知っいる方には名著の誉れ高い1冊。私も読みながら、大いに頷いたり、真剣に首を傾げたり、また自分の来し方を振り返りかなり落ち込んだりもしたが、それは書かないでおく。 この本に書かれているのは民俗学の研究や学問としての報告の類ではない。そこがこの1冊の凄いところだ。先ず中心舞台は名古屋の中村地区。嘗ては全国的に有名な赤線地帯(戦後的な言葉で言えば)だった所である

          聞書き 遊郭 成駒屋   神崎宣武

          源氏物語 桑原博史監修 三省堂

          また三省堂の古典学習本である。非常に優れている本で抜粋ではあるが、原文 訳文 解説 用語文法解説 歴史背景 物語の全体像 抜粋部の全体に占める位置的な解説まで初心者から原文で読みたいという愛好家まで幅広い層にお勧めできる内容盛りだくさんの1冊である。現存54帖のうち66章を抜粋してある。いづれも長い物語の中でも重要、或いは美しく印象に残る名場面の数々である。 原文で読みたいと思ったのは、所々に紛れている物の怪や異界のものへの描写がどの様なものであるかを知りたかったからであるが

          源氏物語 桑原博史監修 三省堂

          源氏物語(全1冊) 瀬戸内寂聴

          全54帖の長編を1冊に収めたもの。省略も多く帖ごと記載対象から外されているものもある。54帖のうち27帖からのダイジェストとなる。長い話が上手にまとめられ読みやすくストーリーも良く分かる。源氏を初めて手にする人をはじめ多くの人にお勧めしたい。 個人的には源氏物語はいけ好かない好色野郎の話としか思ってなかったので、自分が数日でこの500Pを超えるの本を読み上げてしまうとは実に意外であった。何が魅力なのかと言ってキーポイントはやはり「出家」であろうと思う。ご存知のように瀬戸内さん

          源氏物語(全1冊) 瀬戸内寂聴

          方丈記 全訳注 安良岡康作 講談社学術文庫

          「行く川の流れは絶えずして・・・」と言う有名な分で始まる冒頭以外殆ど読んだことがなかった作品で作者の人物像もさして知りもしなかった。恐らく国文研究者か、よほど惹かれる理由がある人でなければ同じようなものではないかと思われるが、有名なことには違いない。実は先行して原文のみの「岩波文庫版」を読んでいたのだが判然としない部分もあり同時に購入していた「全訳注」の学術文庫版を読むことにした。 岩波もさして難しい古語が出てくるわけではない。平安末期になると古文もい中々読みやすくなってくる

          方丈記 全訳注 安良岡康作 講談社学術文庫

          更級日記・和泉式部日記・紫式部日記 新明解 三省堂

          また同様のシリーズ本、読書メーターでは上がってこない学習参考書、若しくは教科書の類である。 非常によくできたシリーズで「原文・語句の解説・文法的な解説・原文からの質問・現代語訳・訳者の状況説明」が比較的細かい字で網羅されている。1ページ読むのに結構時間がかかる部分が出てくる。 それはあなたがよく理解しようと学習したということだ。時間がかかって大いに結構だと思う。 「更級日記」が私が古文を読むのに最初に好きになった作品だったと思う。今読んでも約千年前の文学少女に感動させられる稀

          更級日記・和泉式部日記・紫式部日記 新明解 三省堂

          今昔物語 宇治拾遺物語 三省堂 新明解古典

          読書メーターのリンクには上がってこないのだが、参考書あるいは教科書の扱いなので仕方がない。だが、内容的には非常のよくできており、このシリーズ関連本を数冊はアップしていこうと思っている。今昔物語集は非常に分厚く全31巻1059話。成立年代は1120年代と思われる。保安年間、鳥羽天皇崇徳天皇時代。宇治拾遺物語集はその後の1190年代の12世紀前半。全197話。一般的に世間に流布していた説話や伝承などを集めたのかと思われる。内容はどちらも非常に面白い。この三省堂の本には抜粋数話が掲

          今昔物語 宇治拾遺物語 三省堂 新明解古典

          伊勢物語 角川ソフィア

          元々は在原業平のことを知りたくて読もうと思ったのだが、物語本文にも解説にも業平のことはあまり書かれていない。仕方ない、業平自身のことは別の書物を探すとする。編者の坂口由美子女子はこのシリーズ中の数冊を編集しておられる。分かりやすい文章を書く適任者と思われる。最初に現代語訳が書かれているのは同じ形なのだと思う。軽く読みに入れるという意味ではその方が良いのかもしれない。「むかし、おとこ」という始まりが何故伊勢物語と言うのか不思議だったり、まぁ読まねば分からないことも氷解して中々面

          伊勢物語 角川ソフィア

          日本の旅人 菅江真澄  秋元松代

          戦後日本を代表する劇作家、秋元松代(1911-2001)が1973年に淡交社から出版した菅江真澄の評伝。秋元女史は劇作家として著名で今でも作品が舞台で上演されている。現在読むことができる菅江の評伝としては最高の出来ではないかと思われる。菅江の旅を辿るように春の天竜沿いから始める記述はまるで菅江本人と旅をしているような幸福な錯覚さえおこさせる。長野塩尻の洗馬から新潟へ抜け山形、秋田、青森、蝦夷と菅江自身が数十年かけた旅を共にできる幸いは他の本では中々味わえない。 青森津軽での天

          日本の旅人 菅江真澄  秋元松代

          辺境を歩いた人々  宮本常一

          江戸後期から明治にかけて日本の辺境、主に北方・南方の国土を歩き調査した近藤富蔵・松浦武四郎・菅江真澄・笹森儀助の評伝とその成果を、思うに中学生向けに編纂した人物伝。 八丈の調査を行った近藤富蔵は流刑者。松浦武四郎は三重の半農半武の郷士。菅江真澄は愛知生まれの終生の旅人。 笹森儀助は青森弘前出身の武士の子。夫々出生は違えど大した人たちだと知れる。 八丈の富蔵にP56、北海道調査の武四郎にP42、東北北海道の真澄にP64、沖縄台湾調査の儀介にP96を割いている。 人の生き方として

          辺境を歩いた人々  宮本常一

          枕草子 角川ビギナーズクラシックス

          学生の頃に「春はあけぼの」の名分を読み気に入っていました。物の本によると宮中での連想ゲームの如き語り合いのメモ書きのような内容だったのかもしれないとのこと。なるほど文中の各人の自由気ままさは、そのようなことだったのかもしれないと思いますが、後の方丈記・徒然草と並んで3散文集となるとしっかり読んでおいたほうが良さそうです。もっとも方丈記は内容が「住まい」などと偏っているため散文、随筆の類では枕草子と徒然草、2冊は別格的とも言えるのでしょうか?徒然草の注釈書「寿命院抄」では、わざ

          枕草子 角川ビギナーズクラシックス