『ダッチ○○○』について考えた。
ソロキャンプなどのブームに乗って、キャンプ用品が注目されています。なかでもダッチオーブンは、キャンプ以外にも使える多目的な調理器具として人気です。ダッチオーブン(Dutch oven)は、タイトル画のような、分厚い金属製の蓋つき鍋のうち、蓋に炭火を載せられるようにしたものの名称です。元々は、アメリカの西部開拓時代などで使われていたものですが、最近はキャンプなどレジャーでの用途に使われることが多いようです。
オランダは、英語でthe NetherlandsまたはHollandといいますが、オランダ人・オランダ語・”オランダの”をあらわす英語はDutchです。実は、このダッチにはオランダ人への差別感が含まれています。例えは悪いのですが、日本人をジャップと呼ぶような感覚です。どうして、このような差別感情が含まれているかというと、それは歴史上、イギリス人がオランダ人を軽蔑したくなるぐらい敵視していた時代があったからです。
大航海時代、ヨーロッパでは富を目指して国が外国へ進出しはじめました。このときイギリスのライバルとなっていたのがオランダでした。日本の江戸時代は鎖国中ですが、オランダ、ポルトガルと中国は江戸幕府から唯一貿易を許されていました。東インド会社というのを世界史で習ったことがあると思いますが、これはオランダの会社です。このように、オランダはイギリスを差し置いて、世界中でうまく立ち回っていたのです。
先程のダッチオーブンも、直訳すれば”オランダ人のオーブン”ということですが、裏の意味があります。イギリス人はオランダ人を敵視していましたから、品質の悪いものに”〜もどき”という意味で”ダッチ〜”と呼びました。つまりダッチオーブンは、本物のオーブンではないがオーブンとして使える”オーブンもどき”の鍋なのです。
今はオランダとイギリスの間には敵対関係はありませんが、オランダの人には大変失礼な表現です。しかし、この失礼な表現は今でも結構残っています。例えば、ダッチワイフ(Dutch wife)です。これは”妻もどき”というような意味で使われています。ただし、最近はラブドールという直接的な表現に変わりつつあるようです。
次は日本航空の飛行機事故の時に盛んに使われたダッチロール(Dutch roll)です。ダッチロールとは、航空機がヨー方向とロール方向の振動を繰り返す現象です。航空機が変な振動を繰り返すので、ダッチという軽蔑的な言葉が付加されたようです。
ダッチは、”ケチ”というニュアンスでも使われます。”オランダ流でいく”(go Dutch)、というのは、いわゆる割り勘にするという意味です。また、ダッチデート(Dutch dating)は、”割り勘デート”になります。
最後の例は、ダブルダッチ(double Dutch)です。これは、直訳すれば”2倍のオランダ人”ですが、意味は”ちんぷんかんぶん(な言葉)”です。しかし、この言葉は二本の縄を使った縄跳びの技の名前として使われています。
このDutchを含んだ表現には、当時のイギリス人の嫉妬の感情が含まれた軽蔑的な表現になっています。なので、オランダの人にとっては失礼になる表現です。今回紹介した表現を使うときは、注意が必要ですね。特にオランダ人を前にした時は。
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