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私的コンピュータ列伝#6 富士通 FM-8

 前回はゲームなどの遊びで使ったパソコンの話ですが、今回はガッツリ研究で使ったパソコンの話です。

 FM-8は、1981年に発売された富士通初の8ビットパソコンです。FM-8は、当時は大型機にしか搭載されていなかった64キロビットDRAMを搭載し、64KBのメモリを内蔵するという高いスペックを持っていました。今なら、こんなメモリで良く動くなぁと思う低スペックですが・・・。

 この高スペック(?)かつ、従来機種と比べて低価格となる驚きの218,000円だったため、当時は“高性能、超低価格”と評価されました。インターフェースも豊富で、CMTインタフェースやプリンタポート、RS-232Cポート、それから一般の人には全く無縁なアナログ入力ポートといった各種インタフェースが、最初から標準で装備されていました。

 研究では、このアナログポートにGPIB(ジーピーアイビー)と言うインターフェースを取り付け、自動計測のプログラムを作りました。ある時に、指導教員の先生から呼び出しがありました。詳しい内容は説明してくれませんでしたが、ある企業との共同研究で凄いことをするので、手伝って欲しいという内容でした。指導教員の先生に言われるまま、別の若手の先生にプログラムを教えて頂くことになりました。

 約束の時間にその先生の部屋に行くと、挨拶した後に、さっそくプログラム開発の打ち合わせになりました。最初に、GPIBの説明がありましたが、「マスタースレーブが・・・。トリガーが、どうたらこうたら・・・」と聞いたことのない専門用語のオンパレードで、全くのちんぷんかんぷんでした。とにかく、このパソコン(FM-8)を使って、プログラムを作ることまでは理解できました。それまで、多少のプログラミングの知識はありましたが、計測制御に頻繁に出てくる”割り込み処理”の概念を全く知りませんでした。

 「習うより慣れろだ。使いながら覚えよう。まずはパソコンを立ち上げてみて」と言われました。今でこそ、これがパソコンの電源を入れることだとわかりますが、その時は何のことを言っているのかわからず、固まっていました。それに気づいた先生が、「あぁ、ごめん。電源を入れてみて」と言い直してくれました。パソコン教室で「パソコンを立ち上げて」と言ったら、全員が起立したという笑い話が当時ありましたが、私は笑えませんでした。

 この時の経験が、この後の数十年にわたる仕事で、大いに役に立ちました。私に自動計測を教えてくれた先生、ありがとうございます。

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