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時代劇・大富豪同心 踊る同心

時代劇は、一応史実に則っているものもありますが、その場合でも大抵は大幅にデフォルメされていて、エンターテイメントを重視したストーリーになっています。『水戸黄門』の主人公である徳川光圀は諸国を漫遊していませんし、『暴れん坊将軍』の主人公である徳川吉宗が、江戸市中をブラブラしているはずはありません。

そんな時代劇の中でも、かなりエッジの効いた設定の時代劇が『大富豪同心』です。原作は幡大介さんによる長編時代小説シリーズで、双葉文庫から書き下ろしが22巻も出版されています。私は幡大介さんを存じ上げなかったのですが、本の巻数を見れば大人気なのが頷けます。しかし残念ながら、小説の方は未読です。

主人公の八巻 卯之吉やまき うのきちは、江戸一番の札差・三国屋の孫ですが、三国屋の主であるお爺様から同心株を買ってもらい定町廻同心となります。いやいやながら同心になった卯之吉ですが、これまでの放蕩三昧で得た知識と財力をもって難事件を次々に解決していきます。

この主人公を演じているのは、若手歌舞伎俳優の中村隼人さんです。中村隼人さんご本人は、スッキリしたイケメンですが、この役に併せたボケ~とした演技が秀逸です。主人公の卯之吉は蘭学を修めるくらい頭が良いのですが、体力はないし、剣術もからっきしダメです。ドラマ終盤のクライマックスである肝心の捕り物の最中にも、犯人たちの恐ろしさのあまり気絶してしまいます。

ふざけたコミカルな時代劇のように見えますが、ストーリーは意外としっかりしています。本格的な推理ドラマとまでは行きませんが、謎解き要素もあってミステリーとしても楽しめます。ドラマのタイトルには大富豪とありますが、お金だけで事件を解決するわけではありません。

私が最も素晴らしいと思ったのは、本編とは関係のないエンディングの歌の時の中村隼人さんの踊りです。滑らかな所作(体裁き)で、扇子をくるくる回す姿が本当にきれいで、様になっています。ドラマ本編を見なくても、エンディングは必見の価値があります。

このドラマシリーズは人気なようで、シーズン2までが既に放映されています。また今年の6月には、シーズン3の放映が予定されています。今年は卯年ですし、卯之助には最高の年になるでしょう。中村隼人さんのご活躍をお祈りしています。

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