王様の耳は、どうしてロバの耳になったのか?
『王様の耳はロバの耳』は、イソップ寓話の1つで、ギリシア神話に登場するフリギア王ミダスの物語です。『王様の耳はロバの耳』は絵本にもなったりする、よく知られたお話ですが、そもそも”王様の耳がどうしてロバの耳”になったのかが、思い出せないので、調べてみました。
ロバ耳の発端は、ギリシャ神話の神様・アポロンとパンの演奏競べだそうです。アポロンはオリュンポス十二神に名を連ねるメジャーな神様で、主神ゼウスの子供です。ちなみに双子の姉がアルテミスです。アポロンは、牧畜と予言の神ですが、竪琴を手に執る音楽や芸能の神様でもありました。
パンは、オリュンポス十二神の一人であるヘルメスが人間の娘に産ませた半神です。なので、アポロンと比べるとちょっとマイナーな神様になります。パンは牧神であり、山羊の角と足を持ち、長いあごひげを生やしていました。パンの母親は、我が子の姿に驚き、悲鳴をあげて逃げてしまったとのことです。パンは、音楽が得意でパンフルート(パンの笛)と呼ばれる縦笛の名手でした。ドビュッシーは、『牧神の午後への前奏曲』で、牧神パンと妖精ニンフが戯れる様子を、フルートの演奏でイメージさせています。
ある時、笛の名手・パンは竪琴の名手・アポロンと音楽の技を競うことになりました。審査員長は、トモーロスという神様です。最初にパンが笛を吹きました。この時の旋律は、たまたま居合わせた追従者ミダス(その後のミダス王)を大変満足させました。次に、アポロンが竪琴を奏でると、トモーロスはアポロンに軍配を上げました。しかし、パンの演奏を気に入っていたミダスは、不公正じゃないかと異議を唱えました。これに怒ったアポロンは、音楽を理解できない耳にわずらわされないよう、ミダスの耳をロバの耳に変えてしまいました。
これが、ミダス王のロバ耳の経緯です。この後の話のあらすじは、こんな感じです。ミダス王は、この時のことを恥じて、人前に出るときは耳を王冠(頭巾?)などで隠していました。しかし、散髪係の床屋にだけは隠し通すことが出来ませんでした。この秘密を誰かに話したい衝動にかられた床屋は、地面に穴を掘り、「王様の耳はロバの耳!」と叫んでストレス解消をしました。しばらくすると、そこから葦が生えてきて、風でそよぐたびに「王様の耳はロバの耳」と囁くようになったので、王様の秘密は国中に広まってしまいました。
この辺りまでの記憶ははっきりしていますが、ここから先の記憶が曖昧です。調べてみると2つの異なる結末がありました。
結末①:ミダス王は、耳のことが皆にバレたことを知り、ただ一人ロバ耳のことを知っている床屋を殺そうとします。しかしミダス王は、アポロンも自分を殺す十分な理由があるのに許してくれたことを思い出し、床屋を許すことにしました。するとアポロンが現れ、「よく床屋を許してやった。お前の罪をといてやろう」 と、耳を元に戻してあげました。この結末だと、「王様の耳はロバの耳」の意味は、人に対する寛容さを説いた寓話だと考えることができます。
結末②:「王様の耳はロバの耳」の噂を聞いたミダス王は、床屋が言いふらしたと思って激怒します。しかし、床屋から事情を聞いて家来に調べさせた結果、風になびく葦が言っていることを知ることになります。ミダス王は恥ずかしくなって床屋を釈放し、ロバの耳を晒して生きるようになりました。この結末だと、「(知られたくない)真実を隠そうとしても、隠し通すことは困難である」という寓話になります。
結末については、さらにいくつかのバリエーションがありました。結末はどうなるにせよ、王様のロバ耳の原因がわかってスッキリしました。
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