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アクシデント#3 離岸流に流された話

 いよいよアクシデントの最終回です。これは、私と父が海水浴に行った時の話です。

 井戸に落ちた体験から時間は前後しますが、私がまだ小学校に入る前だったと思います。夏の暑い日に、父が海水浴に連れって行ってくれました。私が住んでいた田舎は、山もありますが、海も近くにありました。小学校の春の遠足は、小学校から歩いて海まで行って、そこで潮干狩りをするのが慣例でした。ですので、1-2年生は割と真面目にアサリやハマグリを捕るのですが、5-6年生は潮干狩りはほとんどしません。

 この時は、父が通勤に使っていたスーパーカブ(原付)で、行ったような記憶が幽かに残っています。天気は快晴で、私はまだ浮き輪なしには泳げませんでしたが、浮き輪でプカプカ浮かびながら、ご機嫌に浜辺近くを泳いでいました。父は近くにいませんでしたから、浜辺でこの様子を眺めていたのかもしれません。

 しばらくすると、それまでの晴天が嘘だったかのように、黒々とした雲が出てきました。風も急に強くなりました。少しヒンヤリしてきたので、岸に上がろうと泳ぎましたが、一向に岸につきません。それどころか、段々と沖の方へ流されていきました。今なら、これが離岸流だということがわかりますが、当時は何が何だかわかりませんでした。泳いでも泳いでも前に進みません。段々と怖くなりました。

 このことにやっと気づいた父が、脱兎のごとく泳いで、私のところまで来てくれました。岸へ向かう方向は順方向ですから、ここまでは順調ですが、ここからが大変でした。父は浮き輪を抱えながら、岸に向かって必死の形相で泳いでいました。今でも、その時の逞しい父の姿は忘れられません。偶然だと思いますが、浮き輪と私を横に抱えながら泳いだため、斜めに進むことになりました。この偶然のおかげで、やっと離岸流から抜けることができました。岸に着いた父は、しばらく放心状態でした。こうして、私は3回の水難を切り抜けました。

 教訓です。離岸流に遭遇した時は、慌てずに斜めに泳ぎましょう

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