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ウロボロスの遺伝子(34) 第6章 国立ワクチン研究所⑦

 ワクチン研究所での聞き取り調査を終えて、赤城と黒田は駐車場に止めてあった危機管理局の公用車に乗って、国立ワクチン研究所を後にした。二人は、ひとまず危機管理局に戻って鬼塚に報告するため、最寄りの高速道路への入り口を目指して進んでいた。

「福山所長の態度は、少し横柄でしたね」と黒田が言った。
「確かに、ちょっと権威主義的なところは鼻につくかもしれないわね。でも霞が関の国会議員たちと比べれば、たいしたことはないわ」経済産業省で国会議員と接した経験がある赤城が言った。
「そんなもんですかねぇ」と黒田が不満げに言った。

 高速の入り口手前で、危機管理局局長の鬼塚から緊急電話がかかってきた。助手席に乗っている赤城が、黒田にも聞こえるように情報端末を操作すると、鬼塚の低い声が聞こえてきた。
「これから、MADサイエンス研究所に向かってくれ。何か重要な手掛かりが掴(つか)めたそうだ」緊迫した鬼塚の様子が、車内にも伝わってきた。
「わかりました」二人が同時に応えた。
「大至急だ。赤色点滅灯を使っても構わん」鬼塚の許可が出た。
「了解(ラジャー)」と黒田が嬉しそうに応えて、車のアクセルをゆっくりと踏み込んだ。


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