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エンプラCSのオンボーディング成功要素を考える

久しぶりのnote執筆です。
6月にアルダグラムというスタートアップに転職し、エンタープライズ企業向けカスタマーサクセス(以下エンプラCS)担当になりました。

アルダグラムはKANNAというノンデスクワーク業界向けDXサービスを提供しており、日本と海外70ヶ国でご利用いただいています。

私は前職で新規事業の立上げをしており、グロース過程でエンプラCSも関わっていたのですが、本格的なプレイヤーは初めてでしたので試行錯誤の半年強でした。
今回は試行錯誤の学びとして、解約に大きな影響を与えるオンボーディング、その中でもキックオフに焦点を当て、導入プロジェクトの成功=顧客の目標達成に必要な第一歩を言語化してみたいと思います。

書籍やネット記事に出てくる内容も多いかと思いますが、私なりに感じた新たな気づきも書いてみましたので、初めてエンプラCSに関わる方やエンプラ向けオンボーディングプログラムを作ろうと思っている方のご参考になれば幸いです。

本記事における定義:
・エンプラ企業=従業員1000名以上の企業で数百名の導入がある程度見えている企業。もちろん、それ以下の規模でも活かせる内容は多いですが、too muchな要素も多いはずです
・キックオフ=受注後の初回商談前後で顧客とのすり合わせが必要な情報をメインに扱います(受注段階でセールスが確認済みの情報も多く、セールス→CS間で引継ぎを行った上で顧客とのMTGに臨みます)


本記事の背景 成功事例の分析と汎用化

本記事のきっかけは、ある方にエンプラCS活動についてご相談したところ、「御社も導入成功事例が絶対あるはずだから、その要素を洗い出したほうが良い」とアドバイスをいただき、チームで喧々諤々の振り返り機会を設けたことでした。

そこで、オンボーディング成功事例の共通要素として最初に出てきたのが以下5つです。その後の議論を通じて変わっている部分もありますが、多くは今回の記事に通じています。これらをいかに深掘り、そして汎用化するかをテーマに私自身は取り組んできました。

・KANNAを標準ツールに据える意志が導入企業にあること
・横展開のスケジュールと移行基準が明確であること
・導入の旗振り役が明確であり、KANNA浸透が人事評価基準に入る等のコミットがあること
・主体的に推進(自走)でき、アルダグラム に頼りすぎないこと
・KANNAの利用・浸透状況を定期的に振り返る場が用意されていること

深掘りと汎用化と書いたのは、当社のエンプラCSオンボーディング活動も大枠は整理できていたものの、まだまだざっくりな部分も多く、担当CSMごとに属人化しやすいこと、そして顧客意向の影響を受けやすく、オンボーディングの長期化が見られたためです。

そのため、以降の内容は課題解決に向けた取組みでもあります。さっそく紹介していきます。

① 導入プロジェクトの各人役割の整理

導入プロジェクト(以下PJ)を始めるにあたり役割整理は重要であり、顧客側は主に以下の役割があるかと思います。
・PJ責任者(導入の旗振り役・PJ評価者)
・PJ推進リーダー(CSや各導入拠点の窓口・運用ルール整備や課題解決のプロマネ)
・導入拠点の推進担当(サービスを積極的に活用し拠点で推進できる人)

一方、サービス提供者であるCS側は窓口となるカスタマーサクセスマネージャーと操作質問に対応するカスタマーサポートがメインかと思います。

役割整理で大事だと思うのは、導入企業が「自走」できるようにCS側の位置付けをしっかり伝えることです。
と言うのも、ここがふわっとすれば、CS担当=何でもやってくれる人と認知されてしまう可能性があり、データ登録、操作説明会、あらゆるMTGのアジェンダ設計やファシリテーション等のあらゆる作業をCSに依頼されることになります。
もちろんプロダクトの成熟度や難易度によっては代行せざるを得ない場合もありますし、そもそも代行者で良いという位置付けもあるかもしれませんが、個人的にCSの位置付けは導入成功の伴奏者・相談相手であり作業の代行者ではないこと、導入作業は顧客主導であることを理解していただくことが重要かと思います。
(上記位置付けで作業代行部分を有償で提供する企業も多いかと思います)

②導入前課題と実現したいことの把握

導入前課題と実現したいこともキックオフで必ず確認するかと思いますが、個人的には経営層、管理職、現場作業者など細分化して確認・整理した方が良いと思います。

経営目線を入れることで会社としての覚悟を現場に伝えやすくなりますし、現場目線を入れることで、経営との温度差も把握できます。
その結果、各メンバー層で考えていることが全然違うケースは普通にあって(日々見ている世界が異なるため)、例えば経営層は顧客への提供価値向上を目指す一方、そのために導入するツールが現場には大きな負荷になることもあり得ます。CS Mとして各メンバー層への向き合い方も変わってくるため、細かく把握されることをオススメします。

③導入サービス運用ルールの整備

当社のような現場の業務フローを大きく変えるサービスの場合、導入拠点における運用ルールを整備することが有効です。ルールを作れば、現場が忙しくてやらないという状態を回避できる確率が上がり、かつ顧客が自走しやすくなるからです。
運用ルールは業務フローと各フローで誰がいつどの機能をどうやって使うかを整理します。

運用ルール整備のためには、顧客の業務フローも理解する必要があります。エンプラ企業の場合、顧客自身がすでに業務フロー図を作っているケースも多いかと思います。主に、業務フローとその業務概要、どんなツールや資料を誰がいつ使っているかを把握できれば、より中身の濃い運用ルールを作れるはずですし、顧客が業務のどこに負を感じているかが明確になります。とは言え、導入時点でここまで詳細に把握するのは難しいため、業務フローのイメージがつけば運用ルールの整備は十分可能かと思いますが、導入後のどこかのタイミングで業務フローを細かく理解する機会はマストだと思います。

また、顧客の自走支援で有効だったのが、当社サービスの初期設定と日常業務に最低限必要な機能をまとめたチェックリストを用意したことです。
FAQ記事や動画も当然ありますが、どうしてもボリュームが多いため、運用ルールが問題なく回る情報だけに絞り、かつ作業順序をタスクリスト的に明確にしたことで、お客様自身がチェックリストを見て勝手にオンボーディングを進めているケースも現れました。

④導入後目標の設計

PJ評価(成功か否かの判断)を行うため、導入拠点のオンボーディング、導入1年後(、導入数年後)の目標を合意することも大切です。前述の運用ルールを踏まえて、CS側から目標案を提示することが求められ、利用状況のデータや顧客向けアンケート回答など定量的に判断できる指標を用意します。例えば既存業務からの移行率やサービスログイン率、各機能の利用数等が挙げられます。

また、前述の運用ルールを整備した結果、誰がどれくらいの頻度でサービスを使うかも予想できるため、各ユーザーが想定通り利用しているか否かの判断もしやすく、導入PJ自体の評価もしやすいはずです。

ちなみに(当社はまだまだこれからですが)絵に描いた餅にならない目標案を提示する上で、導入サービスのライトサクセス(現場の成功実感)、ディープサクセス(経営層の成功実感)、そして顧客のROI指標の整理が重要かと思っています。そもそもの成功の定義決めですね。

以下の記事が大変参考になっています。

⑤今後のスケジュールの合意

オンボーディング期間のスケジュールも顧客の動きを加速させる上で大切ですが、いきなり全社導入とはならないため、アップセルを見越して次の拠点の導入時期、そして導入に必要な条件の合意が重要になります。PJ責任者に経営層を巻き込めた方が良いのはアップセル判断の根拠が明確になるからです。

また、PJ責任者と定期的に打ち合わせできる機会をスケジュール確認を通じて握っておくことで、PJ推進に対する経営評価や将来的な解約リスクを検知しやすくなるかと思います。そのため、最低1年間のスケジュールを用意すれば良いかと思います。

余談ですが、オンボーディングの期限を明確にすることも大切ですよね。期限を決めなければ支援コミットがずるずる続くからです。Product Market Fitやアップセル可能性の大きさ等でオンボーディングの長期化が止むを得ないケースもあるかと思いますが、個人的には期限を決めないメリットはあまり無いと感じています。

ということで、まだまだ道半ばではありますが、いかがでしたでしょうか?上記全てをやり切るのは大変ですが、仮に導入が始まっている企業においても、どこがボトルネックで導入が進まないかを考える上での拠り所にしています。
ぜひフィードバックをいただければ嬉しいです。

来年はSMBやカスタマーサポートなど他のCS関連トピックでも記事を書ければと思っています。

それでは、皆様良いお年を〜

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