衝動的青春のプロローグ
この春、大学生になった僕は、軽音楽部に入った。
楽器経験はベースを少しかじっただけ。
去年観た“ぼっち・ざ・ろっく!”の影響で、音楽への想いが再燃した。
入部のきっかけは4月中旬、
大学で開かれた新入生オリエンテーション。
午前は、1年生数人と先輩1人のグループでゲームをして盛り上がった。
午後のプログラムでは、サークル紹介が開かれた。大学の数ある公認サークルのうち27団体が登場した。
ブラスバンドから始まり、運動部やダンス、農業、ボードゲーム、就職活動など幅広いサークルが紹介された。
特に驚いた事で言えば、音楽系やダンス系のサークルもいくつか種類があった事。
音楽では軽音は勿論、ブラスバンドやジャズなどジャンル分けされていたし、
ダンスでは、完コピと創作という目標や方向性が違うダンスサークルが存在していた。
公認サークル27団体のトリを務めたのは
大学の花形である軽音楽部である。
生演奏もあるとの事で、その瞬間を心待ちにしていた。
26団体目が終わり、軽音楽部はステージ上で準備にかかる。
ボーカル、ギター、ベース、ドラムの4人編成のバンドだった。ボーカルは女性。
何を歌うのだろう考えながらメンバーのチューニング姿を眺めた。
各々のチューニングが終わり、
ボーカルが右手に持ったマイクを口元に近づけ、披露する曲のタイトルを発表した。
““青春コンプレックス””
直後、一拍子の楽器の重低音が体育館に響いた。
僕は、椅子から腰を浮かせ、食い入る様にバンドを見た。
僕が音楽に再燃するきっかけになったアニメの曲が目の前で披露されている感覚は、不思議で仕方なかった。
ピンスポに照らされ、僕を魅了した曲とバンドの輝く姿がカッコ良く、鳥肌が立った。
気が付くと演奏が終わり、体育館は拍手喝采に包まれた。
サークル紹介後、僕は軽音楽部のブースに駆け込み、入部を即決した。
軽音楽部の生演奏を見た時に感じたこの胸の高鳴りが青春なんだろうと確信した。
衝動的感情に突き動かされた青春は
まだ始まったばかりだ
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