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「ブランディングとマーケティングは、隣り合っているけど、違うもの」ー改めるブランディング vo.1ー

みなさん、はじめまして!田中デンデンというものです。

僕は普段、いくつかの企業や個人でブランドプロデューサーとして活動しています。
簡単にいうと、企業さんやサービス、商品のブランディングを起点として、0→1の立ち上げをお手伝いしながら、その未来と勝ち方を考える仕事をやってます。

現在関わっているものとして、NoMaDoSという会社では、全体のブランディング設計だけじゃなく、新規事業のプロデュースやそのブランディング設計などをやったり。

FireShot Capture 021 - NoMaDoS 一級建築士事務所 - www.nomados.co.jp


slowzというサステナブル領域のマップアプリサービスの全体プロデュースとブランディング設計をやったり。

そのほかにも、いろんな角度・ジャンルでのプロデュースを行っています。

個人実績


僕が生業として取り組んでいる「ブランディング」ですが、そこで活動しているからこそ感じる、「違和感」や「疑問」を改めて分解して、考えてみるコンテンツを作ってみようと思いました。

僕自身が思い込んでしまっていた、ブランディングのバイアスや勘違いに対して考え方を”改めていく”ことによって、新しい角度からブランディングのヒントやコツを見つけていけたらいいなっていうコンテンツを目指しています。

まず第一回として、僕自身もモヤモヤすることが多い「ブランディングとマーケティングの違い」について、少し考えてみようと思います。

それって、ブランディング?

昨今、ブランディングという言葉は、徐々に日本でも定着し始め、注目されるようになりました。
ブランド力を武器に成功している企業やサービスが評価され、様々な企業が自社でもブランド力を高めていくという方向性を打ち出し始めています。

本屋さんにいくと、「ブランド力で勝負する」や「ブランドで差がつく」といったコピーがつけられた本を目にすることも増えたのではないでしょうか?

まだまだブランドプロデューサーとして駆け出しである僕のところにも、ブランディングの相談をいただくことが増えたことからも、たくさんの企業がブランディングに力を入れていこうとしていることが分かります。

このように、ブランディングに積極的に取り組んでいこうとする潮流の中、いざ、色々な企業さんとお話をしてみると、その内容が僕の考えるブランディングとは異なるものであるケースが多いんです。

その大半が、マーケティングと呼ばれるものをブランディング対応として依頼されたり、相談されています。

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正直、ブランディングとマーケティングの違いとは?と聞かれたときに、なかなか答えられない人も多いのではないでしょうか?

僕も依頼をいただくようになった最初の頃は、ブランディングもマーケティングも一緒くたに考えていました。
ですが、真剣に「ブランドとは何か?」「ブランディングとは何をすることなのか?」ということに向き合っていく中で、少しづつその違いが明確になってきました。

実際のところ、ブランディングとは、「どうやって自社やサービス、商品を”目立たせるか”を考えること」と考えている人、けっこう多いんじゃないでしょうか?

でも、僕は明確に「違う」と線引きをしています。

この違いをはっきりさせていくことによって、ブランディングとマーケティングの違いも理解できるようになり、かつブランディングとマーケティングの効果を最大化させることができると、僕は考えています。

では、ブランディングとマーケティングとはどのように異なるのでしょうか?


ブランディングとは、「”個性と人格”の定義」だと思う

ブランディングとマーケティングの違いを理解していくために、まずは「ブランディングとはなんなのか?」について整理してみたいと思います。

そもそもブランディングとは、どのような意味を持っているものなのでしょうか?

ブランディングの語源は、「畜産家が育てている牛の区別をするために、焼印をつけたこと」であると言われています。
つまり、一つの個体をユニークなものとして定義することが、ブランディングの起源であるということ。

現在では、ブランディングの理解として、「他者サービスと自社サービスを差別化すること」や「自社に付加価値をつけるための戦略・施策」と考えられるシーンをよく目にします。

他社との差別化ができることで、自社の個性や価値を認識してもらいやすくなったり、自社に付加価値をつけることで、顧客が自社を選ぶ理由を作って売り上げを高めたり。
そんなふうにブランディングが考えられていることが多いんです。

しかし、僕の解釈は少し異なります。
僕は、ブランディングを「企業やサービス・商品の”個性と人格”の定義」だと考えているからです。(僕は、この個性と人格を「ユニークネス」と呼んでいるので、今回はこの言葉を使います。)

つまり、自社やサービスにとっての「核」となるものを定義し、それをもとに様々な戦略や施策が考えられる条件・環境を整理・形成することがブランディングの役割と機能であると、僕は思っています。

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つまり、ブランディングとは、まず「自社やサービスのユニークネスを定義する」ことであり、「差別化」や「付加価値」と言ったものは、ブランディングを行った後に生まれていくる次のフェーズでの話ではないか?ということです。

ブランディングを行うことによって、ユニークネスが定義され、その上で差別化や付加価値という効果が後からついてくると理解することが重要なのではないか、僕は考えています。


ブランディングとマーケティングは、リレーするから仲良しになれる?

「ブランディングとはなんなのか?」に関して、簡単に整理をしましたが、次はブランディングとマーケティングの違いに関して触れていきたいと思います。

そもそもマーケティングとは、どのような定義を持っているのでしょうか?
様々な定義がある中、コトラーの定義を見てみると。

マーケティングとは、個人や集団が、製品および価値の創造と交換を通じて、そのニーズやウォンツを満たす社会的・管理的プロセスである。(by フィリップ・コトラー)

ここで書かれているように、マーケティングとは製品・価値を交換することで、顧客を満足させるプロセスのことだとされています。
先ほど確認したブランディングの定義である「企業やサービスのユニークネスを定義する」とは、少し異なると思いませんか?

もちろん、ユニークネスを定義したことによって、それを個性や価値として見せ方を検討し、結果的に顧客を満足させる製品や価値の創出につなげていく・それによって収益を上げていくということは考えられますし、実際に行われていることだと思います。
しかし、前章でも触れたように、それはブランディングそのものの持つ機能ではなく、ブランディングを行った次のフェーズで考えられていくものです。

この部分の理解が曖昧になってしまっていることが、多くの人たちがブランディングとマーケティングの違いを説明できなかったり、一緒くたに考えてしまって、なかなか効果的な戦略や施策につなげることができない原因なのではないかと、僕は思っています。

簡単に図でまとめると、このような違いになります。

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僕が考えるブランディングとマーケティングの違いは、ブランディングとはマーケティングの中に内含されるものではなく、マーケティングとリレーされていくものだということです。

さらに、ブランディングとマーケティングの間には、「ブランドマーケティング」というものが存在すると僕は考えています。

ブランドマーケティングとは「ユニークネスの認知を広げていくための具体的な戦略と施策」と僕は定義しています。
これは、ブランドが明確になった状態をより多くの人に認知してもらい、顧客とブランドとの仲を深めるための活動と言い換えることもできます。
その上で、「具体的な戦略や施策」という点がポイントになってきます。

ブランディングは、あくまでユニークネスの定義を行うことであり、企業やサービスという個体の個性や人格を形成するものなので、それをいかに多くの顧客へ理解してもらうのかという点は含まれていません。
そこで、この定義されたユニークネスをどの顧客にどのようにして伝えるのか?
その上で、狙った効果や結果を生み出すために、どのような戦略や施策が考えられるのか?
このような問いや目標に関して取り組んでいくのが、ブランドマーケティングだと、僕は設定しています

例えば、そのブランドのスタンスや想いを反映したブランデッドムービーを作って、SNSで拡散させていったり。別業界の近しいビジョンを掲げているブランドとコラボレーションして、これまでリーチできていなかった顧客に自分たちのブランドの認知を広げたり。

これは、いわゆるコミュニケーションデザインやPRと近い働きを持っていると考えられることが多く、それらのカテゴリに内含されて実施されている場合も多いですが、定義したブランドをより意識・活用しながら行うコミュニケーション施策のことをブランドマーケティングと僕は位置付けています。

先ほどの図でいうと、このような感じになりますね。

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往々にして勘違いされやすいブランディングとマーケティングのですが、このような3段階のリレーが行われる状態が作れることで、ユニークネスを起点とした認知と収益の拡大戦略・施策が一貫性を持って考えられるようになるのではないでしょうか?

※僕の解釈は、コミュニケーション戦略寄りの要素を含んでいるので、違う切り口で定義される方もいらっしゃると思いますが、ブランディングとその他の収益マーケティングが本質的には異なるものという部分は共通しているのではないかなと思います


ブランディングの理解が曖昧なのって、なんでだろう?

ここまで、ブランディングの定義、そしてブランディングとマーケティングの違いに関して、僕なりに説明させていただきました。

今回、なぜブランディングについて改めて整理してみたかったのかというと、現代においてブランディングを行うことが、ビジネスにおいて必須フローになってきていると、僕自身が考えているからです。

日本でブランディングという考えが普及する前は、どのように売るのかという、図でいうと「その他のマーケティング」が重視されていました。
商品や情報の選択肢が少なく、品質やデザイン性、機能性の訴求だけでも顧客に好きになってもらう手法が効果を発揮できていたからです。

しかし、インターネットの普及に伴い、ツールを使えば誰でも一定水準のデザインや制作ができるようになり、商品やサービスの品質は概ね高いものとなってしましました。
また、SNSの普及によって多くの情報が世の中に溢れ、多くの企業や個人がサービスや商品の情報を自ら発信できることになったことで、需要よりも供給の方が多くなってしまっています。
つまり、多くのサービスや商品、情報や企業自体もコモディティ化する状況になったのです。(少なくとも、違いが分かりにくい状態になってしまっている企業が増えてしまっている。)

そこで、ブランディングを積極的に採用することで、それぞれのユニークネスを改めてしっかりと把握・定義していこうということで、昨今ブランディングへの注目が集まっているという訳なんです。

ただ、日本では、ブランディングがそこまで重視されないまま、高度経済成長での成功体験とビジネス発展の歴史を作り上げてきたが故に、そもそもの企業・サービス・商品のユニークネス=個性を徹底的に磨くという経験が抜けてしまい、どう魅せるか・どうバズらせるか、その上でどう収益をあげるかなど、「HOW思考」のみに偏ってしまうことが多くなってしまっているのではないでしょうか。
それ以外にも、日本人の特性として「自身の個性を客観的に主張する」ということが苦手であり、どちらかというと他者との調和を重視する傾向など、様々な要因はあると個人的には思っています。

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「こんな細かいこと気にしなくても、結果的に差別化ができて、収益が上がるんだったらいいじゃないか!」と考えられる企業さんもいます。なんなら、ブランドプロデューサーやブランドデザイナーでもそのような考えをする人も少なくありません。

しかし、自社やサービスの核になるものが定義できていない状況で、どのように差別化や付加価値をつけることができるのでしょうか?

自分自身のユニークネスが定義できていない中では、差別化しようにもそもそも軸となる自身の個性が把握できておらず、他社や他サービスと比較することさえままなりません。
付加価値に関しても同様で、そもそも自社やサービスの姿が定義できていない中では、何に何を付加すれば価値になるのかを判断することさえできません。

このように、ブランディングの「企業やサービスの”個性と人格の定義”」=「ユニークネスの定義」という役割が軽視・無視されてしまうことで、多くの戦略や施策、それに基づいたデザインは、ブランドのユニークネスと齟齬があるものになってしまい、結果的に顧客から「ブレている会社・サービス」としてみられたり、エンゲージメントが高まりにくい状態につながっていくという悪循環が生まれてしまいます。


これからブランディングに取り組んでいくための心がけ

そのような状況を打破して、ユニークネスに基づいた収益や価値創出を行っていくためには、まず、ブランディングとマーケティングは違うものと理解することが重要だと思います。
その上で、ブランディング→ブランドマーケティング→その他のマーケティングという流れでとらえ、それぞれのフェーズで何を行うのかを戦略・施策ベースで考えていくことが大切ではないでしょうか。

つまり、「絶えず自問自答を繰り返し、そこで見えてきた答えを戦略や施策につなげることができるか」ということが重要だということになります。

何度も繰り返しますが、ブランディングとは、企業や商品、サービスの個性・人格を探してあげること、作ってあげること。本来、マーケティングとは役割や対応が異なるものだと、僕は考えています。

この理解が広がることで、ブランディングと隣り合う、マーケティングも本領を発揮できる状態になるのではないかな。

そして、これからのブランド担当者、ブランドプロデューサー、ブランドデザイナーと呼ばれる人たちは、このリレーを一貫して理解し、実行していくスキルが求められていくとも思います。

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全てのブランドにおいて、このリレーは一周で終わるものじゃなく、何度もぐるぐると繰り返し考えられていくべきものだと思います。

その度にブランドは磨かれ、社会変化や企業の方針変化などに影響されながら、常にアップデートを続けながら、利益へと繋がっていくものになる。
その際も、軸になるのは「ユニークネスの定義」を忘れないこと。これを忘れなければ、どのような変化・影響を受けても、ブレのない・信頼が持てるブランドであり続けることができるのではないでしょうか。

僕自身ももっと学んで、もっとチャレンジして、ブランディングとマーケティングをつなぐことができるようなブランドプロデューサーを目指していきたいと思います。

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『改めるブランディング』の第一回ということで、ブランディングとマーケティングの違いに関して、僕の考えを書いてみました。
次回は、ブランドを定義する際に僕がよく使っている「コクとキレでブランドを考えてみる」ことに関して書いてみたいと思います。

それでは、ここまで読んでくださった皆さま、ありがとうございました!