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2023年夏 北海道利尻島&礼文島サイクリングと登山の旅(概要編)

 四国瀬戸内サイクリング旅と同様、2023年夏に実施したこのサイクリング旅も、記録を書きかけたまま時が過ぎてしまいました。遅ればせながら、従来同様、概要編とトピックス編に分けて投稿させていただきます。

 利尻富士は、日本百名山の最北の山であるばかりでなく、美しい姿と、海抜に近い場所を出発点とした山頂(1700メートルを超える)までの厳しい上りで知られ、山登りを愛する人間にとって、一度は登りたい憧れの山でもあります。北海道の山には、学生時代に北海道駒ヶ岳、大雪山旭岳、雌阿寒岳に登りましたが、それ以来、何十年もの月日が経っており、利尻富士は、長らく登りたい山の筆頭候補でもありました。そうした思いが弥(いや)増して、いざ実行しようと思っていた矢先にコロナ禍に襲われ、そのまま2−3年が過ぎてしまいました。やっと新型コロナが終息を見せた今年(2023年)こそと、登山にも適していて、高山植物の花々も楽しむことができる6月に礼文島を訪れる計画を立てたのでした。北海道は梅雨がなく、この時期は旅に向いていると聞いていたのです。

 一方、サイクリングによる利尻島一周と、礼文島の南北縦走も、旅の目的の半分以上を占めていました。サイクリングでは、2023年3月に、沖縄先島諸島の島々を巡り、日本のほぼ最南端(波照間島を訪れることができなかったので最南端に到達していない)に至りましたが、今回は、逆に、日本のほぼ最北端(宗谷岬を訪れることができなかったので最北端に到達していない)をめぐるサイクリング旅となりました。

 今回の旅には、もう一つ、初めての挑戦が含まれていました。それは、テント泊によるサイクリング旅です。登山とサイクリングを組み合わせた旅は、すでに何度か実行しています(八甲田山登山と岩木山登山をサイクリングで繋ぐ;山陰サイクリングの途中で大山登山;四国瀬戸内沿岸サイクリング途中で石鎚山登山)。しかし、テント泊での実行は、何度も検討していたもののハードルが高かったのです。テントを始めとしたテント泊用の荷物がサイクリング時に追加の重荷となるためです。今回、テント泊によるサイクリング旅を実行するために、思い切って、最軽量のテント(実際は「テント」の分類に入らず「ツェルト(緊急避難用テント)」だが、自立型なので見た目は小型テント)を購入しました。登山用の小型テント(1−2人用)は持っていて、通常の登山に使用してきましたが、テントに被せる雨風よけのフライシートや支柱などを含めると、2kgを越えてしまいます。一方、この最軽量自立型ツェルトは、0.7kg程度でかつコンパクト。背中のリュックにすべての荷物を詰め込んで走る私のツーリングスタイルでは、重さのみならず、嵩(かさ)を減らす事も、走行時のバランスを保つために重要な要素となります。今回、もう一つ、テント泊によるサイクリング旅のハードルを低くできたのは、「ベースキャンプスタイル」が取れるサイクリングルートと行程が組めたこと。利尻島では、集落に近い利尻山の麓にキャンプ場があり、そこに3泊して、利尻山登山と利尻島周回サイクリングができます。礼文島では、島を南北に繋ぐ東海岸沿いの一本道の途中にキャンプ場があり、ここをベースに、最北端まで往復する行程が立てられます。最終泊の稚内では、海に面した市街地を見下ろす背後の山の上にある森林公園キャンプ場を利用できたため、全行程5泊をすべてテント泊で完結することができたのでした。

 当初は6月下旬を予定していましたが、身辺の都合で7月初旬にずれ込んでしまいました。社会参加活動として大切にしている「学習支援」(中高生への数学指導)と、「日本語支援」(日本在住の外国人への日本語指導)に極力影響が出ないように、今回も日程を組みました。その結果、日曜日出発、金曜日午後帰着の5泊6日の日程になりました。

 せっかく実現する北海道への旅であり、近い将来再び訪れるのは難しいだろうとの思いがあり、旭川から富良野、さらには、札幌までのサイクリングも、一部でもいいから今回同時に実現できたらとの希望はありました。しかし、旭川から稚内の距離が、思っていたより大きく、移動に時間がかかること、また、いかに涼しい北海道とはいえ体力的にも厳しそうなこと、加えて、前述の社会活動を安易に犠牲にするのは気が引けるとの思いが強く、断念したのでした。

 羽田から稚内空港への定期便は、JALが飛んでおらず、ANAが1日2便出ています。数ヶ月前に購入すれば、片道1万円以下の航空券が購入可能なようですが、1ヶ月前購入で往復5万円程度かかります。それでも、地上の交通手段、すなわち鉄道(JR)を使った場合、14時間かかって(朝9時に出て夜23時着)、片道3万4千円(割引なし)の運賃なので、選択の余地はほとんどありませんでした。

 出発直前の天気予報で、旅を通して好天が期待できない状況でした。現地到着翌日と翌々日に、この旅のハイライトである「利尻島周回サイクリング」と「利尻山登山」を実行する計画を立てていたのですが、利尻山登山が最も天候に左右されるため、前日に、天気予報に従ってサイクリングと登山の実行の順番を決定するつもりで出かけました。結果的に、到着翌日は、午前中が雨模様でも徐々に天候が回復する予報であったため、利尻山登山を現地到着翌日に実行しました。これが功を奏して、山頂では、しばし雲が晴れて、360度の視界が開けたのでした。利尻登山は、標準行程上り6時間、下り4時間、合計10時間となっていて、ベテラン登山者でもかなり厳しい登山です。覚悟はしていたけれど、下山後は、両太腿を中心に下半身の筋肉疲労が激しく、普通に歩くのも苦労する状態になりました。翌日は、午前中雨。午後から雨はいったん止んだので、肌寒い雲天の中で利尻島を周回することにしました。筋肉痛で、サイクリングできるのか不安だったのですが、走り始めると不思議にあまり気にならずに夕刻までに走りきることができました。結局、今回のサイクリングを通して朝から終日天候に恵まれたのは、礼文島に渡った4日目だけでした。そのため、期待していた、北の果ての見慣れない星空を楽しむ機会は、わずかしか得られなかったのでした。

 出発前は、「北海道には梅雨がないので6−7月は旅行日和」という常識で好天を期待していました。しかし、現地に行くと、全く事情が異なっていました。現地でわかったのは、その前の週はずっと天気が悪く、次の週も天気は悪い見込みで、よく聞いてみると、北海道にも梅雨がしっかりあり、現地の人たちは「蝦夷梅雨」と呼んでいるのだという。「聞いていた」のと「行って見る」のとは大違いの典型例を体験しました。

利尻島観光マップ

 利尻島も礼文島も、サイクリングが楽しい場所というのも、事前の調べで強く刷り込まれていました。実際、それぞれ、周回できる利尻島は周回60km、周回できない南北に長い礼文島は南北縦走80km程度で、ちょうどサイクリングに適した距離であり、名峰があり、お花畑がありと、好ルートであると感じていたのですが、この時期に、サイクリストの姿が全くと言っていいほど見られなかったのはなぜだろう。ロードバイクは、利尻山登山口で、一台駐輪されていたのを見ただけで、走っている姿は、結局一度も見かけなかったのです。キャンプ場でも一台も見かけなかった。唯一、利尻島到着のフェリーで一緒になった、札幌から走ってきたという北大の二年生が、ロードバイクでなく、ガチガチのツーリングバイク(分解して輪行することはできないタイプ)でやってきていたのに出会っただけでした。

礼文島観光マップ

 北の果ての地は、一年で一番明るく光に満たされる時期のはずなのに、すっきりしない天候や、少ない観光客、それもシニアの団体が大半で、さらには、旅行者が入れるような食堂や商店がほとんどないことなどで、物侘しさと寄るべない旅の不安をそこはかとなく感じさせる場所でありました。

 一方で、利尻富士の、優美さと雄大さを兼ね備えた「美しさ」には感動させられました。今まで、おそらく200座以上の山に登ってきましたが、これほど美しいと感じた山はなかったように思います。さらに、礼文島では、高山植物の花々のピークは過ぎていたものの、最北部の岬、西海岸の海蝕断崖、その上部に広がるお花畑、これらが、なだらかに伸びる丘陵の風景に溶け込む姿は、息を呑む美しさでした。

 テント泊という初めてのスタイルでのツーリングは、不安が大きかっただけに、うまく行ったという達成感があります。一方で、地元の人々と触れ合う機会が減るということも、予想された通りでした。その代わり、キャンプ場などで、日本各地から来た人たちとの情報交換や触れ合いの機会は、いつものツーリングより多く得られました。いずれにしても、今回のこの体験によって、今後のサイクリング&登山旅のスタイルに幅ができたことは間違いないので、いくつかの失敗を含めて、「よし」としたいと思います。

おわり

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